第29話3-9 騎士団と契約しました。

3ー9 騎士団と契約しました。


僕は、店を閉めると2階の自宅でフランシスをハチミツ茶でもてなした。

フランシスは、お茶を飲むとホッコリと笑った。

「ああ、やっぱりいいな。このお茶は」

フランシスは、あの後、騎士団に戻ったらしい。

「今日は、商業ギルドのアゼリア殿の紹介できた。なんでも、新しい薬草の店ができたとかいうことで」

「そうか。アゼリアさんの紹介だったんだ」

僕は、クッキーをすすめながら言った。

「なんでまた、薬草なんかに興味が?」

「いや、私じゃない。騎士団のものだ」

フランシスがクッキーを摘まんでカリカリッと齧った。

「おいしいな、これ」

「そうだろ」

僕は、にっこりと笑った。

「ハチミツがたっぷり入ってるからな」

「これ、売ってくれないか?」

フランシスがきいた。

「騎士団の常備食にしたいんだが。今の常備食は、干し肉しかなくって食欲がわかなくってな」

うん。

僕は、考えた。

「騎士団に納めるぐらいならなんとかなるかな」

「じゃあ、頼むよ」

フランシスが微笑んだ。

「それから、戦場で傷の手当てをするための薬草をもらいたい」

「傷の手当てなら、ポーションとかもあるけど?」

僕が言うと、フランシスがキョトンとしてきいた。

「ぽーしょん?それは、なんだ?」

はい?

今度は、僕がキョトンとなった。

もしかして、この世界、ポーションがないの?

僕は、フランシスにポーションの入った小瓶を見せて説明した。

「これがポーション。液体状の疲労回復薬だよ。こっちのは、それの強力版。傷や病気も治せるんだ」

「そんな便利なものが?」

フランシスは、小瓶を手に取り栓をとると中を覗き込むと、一気に飲み干した。

「うん・・おいしい・・」

「それは、疲労回復薬の方。味は、飲みやすくしてあるから」

僕が言うと、フランシスが頷いた。

「確かに、これはいい。体に力がみなぎってくる。それに薬草を煎じたものに比べるとずっと飲みやすい。これと、傷や病気も治せるものを騎士団でまとめて購入したい」

マジか?

僕は、きいた。

「数は、どのくらい?」

「そうだな。1週間に20本ほど。こっちの傷や病気にもきくものは、5本でいい」

僕は、頷いた。

「わかった」

「じゃあ、正式な契約の書類は、次に来るときに用意する。今日は、とりあえず試しということで契約とは別に購入したい」

フランシスは、普通のポーションを20本、強力版を5本、買ってくれた。

「いくらだ?」

「合計で銀貨30枚になるな」

普通のポーションが1本銀貨1枚。強力版が銀貨2枚、だ。

ちなみに銀貨1枚は、銅貨で10枚分。だいたい1000円ぐらいの感覚かな。

「わかった」

フランシスは、腰の鞄から革袋を出すと、そこから銀貨を30枚出して支払った。

僕は、木の皮で編んだ籠にポーションを入れてフランシスに渡した。

「ありがとう、フランシス」

「こちらこそ」

フランシスは、少し頬を赤らめた。

「また、来る」

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