第30話3-10 商業ギルドの御用達

3ー10 商業ギルドの御用達


翌日、朝、ストレージから店へと出てくると、店の前に人だかりができていた。

何事だ?

僕は、店の扉を少し開くと先頭に並んでいた中年の大柄な男の人にきいた。

「なんですか?」

「あんたが店主か?」

男の人は言った。

「あんたのとこの店が騎士団に卸してるぽーしょん、とかいうものを買いにきたんだよ」

マジで?

僕は、一旦扉を閉めると店の奥へと入っていってストレージからオルガとカヅキ兄さんを呼び出した。

「「なんだ?ユヅキ」」

「頼むよ、手伝って、二人とも!」

その日は、一日、客足が途絶えることはなかった。

僕の用意していたポーションは、完売してしまった。

騎士団の宣伝効果半端ない。

夕方、店を閉めると、僕は、戸締まりしてから兄さんとオルガとストレージの中の村へと戻った。

「うぅっ・・疲れた・・」

カヅキ兄さんが家のリビングのソファに崩れるように座り込んだ。オルガもさすがに口数が少なくなって、椅子に座り込んでいた。

僕は、二人に試作品の疲れのとれるハチミツ飴を食べてもらった。

「んっ、甘い」

「おいしい!なんか、力が沸いてくる」

2人がいうのに、僕は、頷いた。

「だろう?少しポーションの成分を混ぜて作ったんだ。これなら安いし、食べやすいし、明日からこれも売り出そうと思うんだけど」

「「マジか!?」」

僕は、 2人には、当分、バイトとして働いてもらいたいことを伝えた。

時給は、銀貨1枚だ。

「金が貰えるのか?」

オルガが僕が銀貨を8枚渡すと、驚いて言った。

「ただ、店を手伝っただけなのに?」

「それが働くということなんだよ、オルガ」

僕は、にっこりと笑った。

「これで、今度、王都見物に出たときに、なんでもオルガの好きなものを買えるよ」

「本当に?」

オルガが瞳を輝かせた。

この国には、薬草以外に、今まで薬らしきものはなかったようだ。

僕は、ハーブを調合したハンドクリームやリップクリーム、それに化粧水などのちょっとした化粧品も売り出すことにした。

村では、今では、当たり前になっているものばかりだったが、この国の人たちにとっては、初めて見るものばかりだったようで、みな、こぞって買っていってくれた。

アゼリアさんも来店してくれて、店の盛況ぶりを喜んでくれた。

「どうだ、ユヅキ。看板に商業ギルドの御用達と入れては?」

アゼリアさんが言った。

「滅多にないことだが、この『カンパニュラ』になら許可しよう」

こうして、僕の店は、商業ギルド御用達の店になった。


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