第22話3-2 冒険者には、なれません。
3ー2 冒険者には、なれません。
僕は、カスケード王国の王都の近くの街 グリニッジに来ていた。
初めて見る街は、賑やかで、華やかな場所のように思われた。
僕は、いい匂いの漂ってきている屋台に引き寄せられた。
「お兄さん、グリニッジ名物、クッカの肉の串焼き食べていきな!」
見知らぬおじさんに言われて、僕は、思わずその熱々の焼き串を受け取った。
一口食べてみる。
じわっと肉汁が染み出てきて、肉に甘味があって、すごくおいしい。
「お兄さん、銅貨3枚」
はい?
店のおじさんに言われて、僕は、はっと気づいた。
お金、払わなきゃ!
僕は、腰につけていた革袋から銅貨を3枚取り出しておじさんに支払った。
僕は、人混みを離れた場所で、革袋の中に残った現金を取り出して数を数えた。
「あと、銅貨3枚と銀貨1枚、か」
僕は、このお金を渡してくれるときにラック爺が言った言葉を思い出していた。
「この金は、村の者の全財産だ。大事に使うんだぞ、ユヅキ」
僕は、うっかりとしていたんだ。
この世界って、当たり前だけど普通にお金がいるんだよね。
僕は、ずっと魔の森の中で暮らしていたから、今までお金なんてほとんど持たなかった。
まあ。
前世では、普通に、暮らしてたけどな。
でも、このままじゃ、宿屋にも泊まれそうにない。
僕は、とにかく当座の生活費を稼ぐためにグリニッジにある冒険者ギルドに行った。
村にあった魔石を売るために。
村には、魔石が革袋に一杯あったけど、全部売っても金貨3枚にしかならなかった。
「これでどれぐらい宿屋に泊まることができますか?」
僕は、ギルドの親切そうな長いきれいな金髪のお姉さんに訊ねた。
職員のお姉さんは、笑顔を浮かべた。
「これだと、一日2食つきで1ヶ月ぐらいかしらね。いい宿、紹介しましょうか?」
「是非、お願いします」
僕は、お姉さんに頼んだ。
うん。
とりあえず、当分の間は、なんとかなりそうだな。
僕は、ついでに冒険者登録をすることにした。
そして、がんばってクエストをこなしてお金を稼ぐぞ!
だが。
「申し訳ありませんが、あなたは、冒険者には、なれません」
はい?
僕は、信じられないものを見るようにお姉さんのひきつった笑顔を見つめた。
「なんで?」
僕の問いに、お姉さんは、すまなさそうに答えた。
「無職ですと、登録が出来ないのです」
なんですと?
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