3 冒険者になれなくたって、大丈夫!

第21話3-1 軍隊が攻めてきた!

3ー1 軍隊が攻めて来た!


フランシスが外の世界に戻っていってしばらくたった頃のことだった。

いつものように見回りに行っていたナツキ兄さんが不意に村の中央に舞い降りたらしい。

慌ててオルガが僕を呼びに来た。

「ナツキがユヅキを呼んでこいって!」

「兄さんが?」

僕は、急いで家から出て村の中央の広場へと走った。

「兄さん!」

「ユヅキ!大変だ」

レッドドラゴンの姿のままナツキ兄さんが言った。

「軍隊がこっちに向かっている!」

えっ?

僕は、一瞬、訳がわからなくってキョトンとしてしまった。

軍隊?

「なんで?」

僕は、ナツキ兄さんにきいた。兄さんは、答えた。

「知るか!」

「やっぱり来たか」

ハヅキ兄さんがフェンリルの姿のまま静かに僕の側へと近づいてきて言った。

「魔族と戦っている奴等が、この村のことを見逃すわけがない」

マジで?

僕は、突然のことにうろたえていた。

ハヅキ兄さんが低い声で僕に訊ねた。

「どうする?ユヅキ。もし、お前が望むなら、我々は、いつでも戦うぞ」

はい?

僕は、兄さんの言葉に我にかえった。

「望まないよ!そんなこと」

「カスケード王国の軍隊がここに攻め込んでくるのか?」

ラック爺が僕たちのもとにやってきて、きいた。

僕たちは、みんなで村の広場に集まって話し合うことにした。

「俺たちは、このまま、ここに住んでいたい」

オークのみなさんが言った。

「この魔の森の村が、俺たちの故郷だ」

「俺たちだって」

ホブゴブがゴブリンを代表して言った。

「ここで暮らしたい」

「だが」

ラック爺が言った。

「奴等は、この村を魔の森ごと殲滅する気だ」

みんなが黙り込んだ。

「あの・・」

僕は、みんなに向かって話した。

「魔の森ごと逃げればいいんじゃないか?」

みんなが一斉に僕の方を見た。

「そんなことができるわけがないじゃないか!」

オークのみなさんが口々に言うのをきいて、僕は、言った。

「いや、可能かもしれない」

それから数時間後。

カスケード王国の軍隊が森のあった場所にたどり着いたときには、そこには、何も存在しなかった。

「奴等、驚いてるぞ」

カヅキ兄さんが上空から下を見て言った。

そりゃそうだ。

今までそこにあったはずの森がなくなったんだからな。

僕らは、遥か上空からナツキ兄さんの背にのってそれを見ていた。

「一応、奴等を攻撃しとくか?ユヅキ」

ナツキ兄さんが言ったので、僕は、頭を振った。

「いや。もう、行こう」

僕たちは、そこから去った。

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