第17話2-7 いい香りのする石鹸

2ー7 いい香りのする石鹸


僕は、早朝に目覚めると、1人、村の中を横切って歩いていた。

村の外にある畑を見に行くつもりだった。

昨日、植えたハーブの苗が気になっていた。

ミントのような爽やかな香りがするミントモドキと、白い小さな花の咲いている、カモミールによく似たモニール。それに、ラベンダーとよく似た紫の花が咲いていたランダー。

みな、僕が作り出した新種の草花だった。

うまく育ってくれたら、これで、いい香りのする石鹸やら、ハンドクリームやらを作れるのだが。

ポルクの油に、木の灰汁を混ぜた石鹸を、今は、村では、使っている。

これは、僕の新しいスキルである『異世界生活辞典』の中にあった石鹸の作り方を見て作ったものだ。

だけど、このままだと、かなりポルクの臭いがきついので、ハーブの香りを混ぜようと思ってハーブを育て始めたのだ。

畑に行くと、昨日、ハーブを植えた辺り一面がグリーンと白と紫に染められていた。

とてもいい香りが辺りに漂っている。

僕は、ミントモドキとモニールとランダーをそれぞれ分けて刈り取るとそれをストレージへと収納した。

そして、それぞれのエキスを小さな木の瓶へと入れてストレージから取り出した。

僕は、小さな瓶の口に顔を近づけて香りを嗅いでみた。

うん。

いい匂いがする。

これを石鹸に混ぜてみよう。

僕は、家へ帰ると裏庭に作った竈にかけていた鍋の中に入っている石鹸クリームを三等分してそれぞれに香りのオイルを加えて練り、それを木のカップへと入れた。

辺りにいい香りが立ち込めている。

僕は、それを毎朝風呂に入る習慣のあるカヅキ兄さんに試しに使ってもらおうと風呂場へと持っていった。

途中で人化したハヅキ兄さんと出くわしたので、僕は、石鹸クリームの入ったカップを1つ台所へ持っていってもらうことにした。

ハヅキ兄さんは、石鹸クリームの入ったカップをクンクン嗅いでいたが、やがてにっこりと微笑んだ。

「いい香りがするな」

よし!

フェンリルのハヅキ兄さんがそう言ってくれるなら、大成功だ。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る