第16話2-6 マチカ

2ー6 マチカ


それから、しばらくの間、フランシスは、僕の家で暮らすことになった。

僕は、フェンリルのハヅキ兄さんとレッドドラゴンのナツキ兄さん、それにプーティのカヅキ兄さんを紹介した。

まあ、カヅキ兄さんは、会ったことがある訳だけど、人化してるときは、これが初めてだしな。

「フェンリルとドラゴンが兄弟だなんて、すごいな、ユヅキ」

フランシスは、驚愕を隠せなかった。

「しかも、聖獣プーティまでとは」

あっ。

僕は、思わず笑ってしまった。

やっぱ、カヅキ兄さん、珍獣なんだ?

僕は、フランシスを客間に案内した。

部屋へと入っていくフランシスに僕は、声をかけた。

「おやすみ、フランシス」

フランシスは、振り返ると僕に内気そうな微笑みを見せた。

「おやすみなさい、ユヅキ」

僕は、ドアが閉まって、フランシスの足音が聞こえなくなるまでの間、部屋の外に立っていた。

辺りが静まり返って夜が支配していくのがわかる。

僕は、そっと囁いた。

「おやすみ、フランシス。よい夢を」

自分の部屋へと戻って、ベッドに入った僕に奇妙な夢が訪れた。

「会いに行きます」

その少女は、僕に告げた。

「今度こそ、私を抱き締めて、そして、離さないで」

わかっているよ。

僕は、頷いた。

もう、僕は、君を2度とは離さない。

「マチカ・・」

「約束だよ、佑月くん・・ユヅキ・・」

少女の声が遠退いて、途切れていく。

「待って!」

僕は、天に向かって手を伸ばして叫んだ。

行かないで、僕のマチカ。

目を開くと、そこには、見慣れた天井があった。

「マチカ・・」

僕は、1人呟いた。

君は、まだ、僕を捕らえて離してはくれないんだな。

僕は、早朝というにもまだ早い時間に目覚めて起き出した。

さあ、一日が始まる。

僕は、君のことを忘れることはできないけど、いつまでもそれに捕らえられているわけにもいかないんだ。

僕は、自分に言い聞かせていた。

まだ、だ。

まだ、僕が呪いに捕らえられるには、速すぎる。

まだ、僕には、時間がある。

あの頃。

まだ、僕が君と生きていた頃に、欲してやまなかった時間が、今、僕には、与えられている。


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