第18話2-8 朝御飯だよ!

2ー8 朝御飯だよ!


僕は、石鹸クリームの入ったカップを風呂場に置くと、すぐに、台所へ向かった。

僕の家では、朝食作りは、当番制だった。

けれど、たいていは、僕かハヅキ兄さんが作っていた。

ナツキ兄さんとカヅキ兄さんは、朝が弱くて早起きができないからだった。

その代わり、2人は、夕食を作ってくれることが多かった。

僕が台所に行くと、僕の手作りのエプロンを身につけたハヅキ兄さんが流しの横の台に置かれた魔道具の上にフライパンを置いてツチドリという魔鳥の卵の目玉焼きを作っているところだった。

大きなフライパンの隅にはポルクの肉で作ったベーコンも炒められている。

もう1つの魔道具の上では、ポットに湯が沸いていた。

おいしそうな匂いに僕のお腹がきゅうっと鳴った。

「ユヅキ、みんなを起こしてきてくれ」

ハヅキ兄さんが言ったので、僕は、頷いた。

兄さんたちとフランシスがそれぞれテーブルにつく頃には、ハヅキ兄さんは、木製の皿に目玉焼きとベーコン、それにフレンチトーストをのせてテーブルに置いた。

僕は、みんなにハチミツ茶の入ったカップを配った。

「いただきまぁす!」

僕とハヅキ兄さんがテーブルにつくと同時に、みんなで朝食を食べ始める。

フランシスは、僕らの勢いに驚いて戸惑っていたが、すぐに、自分も負けずに参戦した。

彼女は、ハヅキ兄さんの作ったフレンチトーストを一口食べると、感極まった様子で言った。

「すごく、おいしいですぅっ!」

「そうか」

ハヅキ兄さんが眼鏡越しにフランシスを優しく見つめた。

「たくさん食べて。おかわりもある」

「はい」

フランシスは、笑顔でハヅキ兄さんに答えた。

僕らは、ハヅキ兄さんが作ってくれたおいしい朝食を食べると、しばらく、テーブルについてハチミツ茶を飲みながら話した。

主に、フランシスに兄さんたちが質問していた。

カスケード王国のこと。

魔王との戦いのこと。

そして、彼女自身のこと。

フランシスは、最初、おどおどとしていたが、徐々に、明るくハキハキと答える様になった。

僕は、彼女の笑顔を見て、ホッとしていた。



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る