第8話 目指せおニューな部活の設立を!

 

『部活?』

『エル、そんなの作って何になるのよ?』


 

「そうよ、エル、それにまず作るのも簡単じゃないでしょ?」


 

「まあまあ、聞いてくだされ、お二方」

「まず、新たな部活動を作ることで、部活動という名目で学校側に特別な書類出せば学生でも外に自由に活動出来るんだよ、平日でも」

「それで、次に部活を新しく作るための条件は、目的がしっかり確立していること、そしてメンバーが五人以上であること、顧問の先生を立てること」

「この三つだけなんだ」

「だから、そこまで難しくもないよ」



 うきうきで話始めた俺を二人は不審に思っているらしい。

 申し訳ないが、こんな状況であるのに、俺は少し楽しく感じているのだ。

 

 ただ、勘違いしてほしくないが、テトラが危険な目に遭っているのが嬉しいとか、決してそんな類のものでわない。

 俺は入学前から自分で新しい部活を作るという目標を持っており、理由が何であれ、それに取り組むのだから、楽しみになるのもしょうがないだろう。


 

「というわけで、早速取り掛かろうか」

「まずは新しく作る部の名前を考えよう、それから、協力してくれる人を探して、最後に顧問の先生を捕まえようか」



 そう言って、俺は魔法で一枚の髪とペンを作り出した。


 

「じゃあ、二人とも、まず新しく作る部活の名前を決めよっか」

「まあ、部の活動の内容は…………テトラ護衛部?」



 すると呆れた、といった感じでユーリが突っ込んできた。


 

『エル、バカじゃないの』

『誰がそのまま書くのよ、正直に書いたら教員に止められるわよ』



「…………エル君」

「教員が止めるかどうかは置いておいて、私も辞めてほしいな……それは」

「……私が恥ずかしい……」


 

「…………うん、そうだね…………ごめん」

「…………じゃあ、どうする?」

「何か、他にいい案ないかな?」



「そうだな、直接的な表現は避けて、ここはもっとオブラートに包んで……」

「聖遺物回収としてみたらどうだろうか?」



『聖遺物…………か、それなら問題ないと思うけど』

『聖遺物、よりアーティファクトの方が、可愛くない?』

『それで、頭文字を取って、AF回収部とか?』



「いいじゃんいいじゃん…………ただ、ユーリもちゃんと女の子なんだね」



 『――おいこら、エル』

 『それはどう意味かじっくり教えてくれないかしら??』



 「いや、だってユーリって、見た目は女の子だけど、中身は400年――――」

 「――――ふがぁっ」


 その瞬間ユーリがすごい勢いで俺の方に振り返って、口を塞いできた。



 『エ〜〜ル〜〜』

 『面白いこと言うじゃん……』

 『私は正真正銘学生ユーリちゃんだよ?』



 ユーリがテトラには見えないような立ち位置で、殺意のある眼光で俺を睨んできた。


 俺は蛇に睨まれたカエルのように縮こまってしまった。


 

「…………?」

「どうしたんだ、ユーリ?眉間に皺ができてるぞ」



 何事かと、俺の後ろからテトラが顔を覗かせてきた



『うんん〜〜』

『何でもないよ、テトラ』

『気にしないで……』



 そう言って、ユーリは俺の口を塞いでいた手を離して、笑顔に戻った。


 しかし、その笑顔の奥に「喋ったら潰す」と言う意思を俺は感じ、急いで話題を変えた。



 「じゃ、じゃあ〜〜」

 「名前はAF回収部にして、次はあと三人部員を集めよっか」

 「……テトラ、誰か入ってくれそうな人、知らない?」



「ああ、そうだな」

「エルはまだ三日前にこの学校に来たばっかだったな」

「部員集めは私に任せてくれ!」

「……ただ、なぜ後三人必要なんだ?」

「私とエルとユーリですでに三人いるではないか?」

「あと二人で条件は達成するんじゃないのか?」



「――――う〜〜ん、それはどうかな」

「ユーリを部員の一人として認めてもらえるかな…………」


 

 ユーリは俺の契約した精霊として、この学校に来ているだけなのだ。

 それを学生と同じように扱うのだろうか?

 

 

「でも、まあ部員は多い分には問題ないから」

「何人でもいいから、部員探しをお願い、テトラ」

「僕は顧問になってくれる先生と、ユーリが部員になれるかを聞いておくよ」



「わかったぞ、エル」

「放課後までに大量に捕まえてくるからな!」

「期待しておいてくれ!」



 そう言って、彼女は勢いよく教室を飛び出して言った。

 微かに遠くから「聖遺物に興味ないかい?」と言う、新手の詐欺に勧誘するような声が聞こえた


 …………大丈夫か?

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