第50話 美味しいご飯とヤバいブツ
ルトとの会話を楽しんでたら、リリがお寿司を見ながら口を開いた。
「ねぇ、もう食べていい?」
「あ、いいよ。食べよう。食後にパンケーキ作るね」
僕も着席。三人で「いただきまーす」と声を合わせて、いざ実食だ。
まずはお寿司。
「……
「
「シャリが回転寿司っぽいな」
ルトに分析された。
僕、回転寿司以外のにぎり寿司は、スーパーのしか食べたことないんだよねー。つまりほぼ機械で作られたシャリ。そのイメージが反映されてるのかも。
高いお寿司を作ってる動画とか見たら、もっと美味しくなるかな?
「――トンカツの揚げ加減は最高にいい」
「サクッとしてるよね〜。我ながら、良い出来! こっちも脂が甘〜い」
「白ご飯食べ過ぎちゃうね。食べても太らないのは、ほんと嬉しい」
トンカツはソース派だったけど、
お寿司用にわさびを買ったから、挑戦してみる?
「トンカツにわさび醬油つけんのか?」
「うん。お試し。――意外とイケる。でも、ご飯と食べるならソースかなぁ」
ピリッとさっぱりな感じのわさび醬油は、やっぱり大人の味だった。美味しいのは間違いないんだけど。お酒と一緒に食べるのかな。
トンカツの次はトマトの食べ比べ。
「市場で買ったトマトは果汁少なめ? これ、加熱した方が美味しいかも。農地で収穫したミニトマトはやっぱりジューシーで甘い! サラダに使うのはこっちがいいな」
「確かにそうだね。というか、モモが作ったトマト、想像以上に甘いよ。フルーツみたい!」
「だよな。農地補正がある気がする」
ヘルプに説明はされてないけど、プレイヤーメイドの作物や料理に、補正がある気がするのは僕も同意。店で買うより美味しく感じるんだよねぇ。
農地で次はなにを育てよう? いずれは自給自足したい。
「チキンステーキもぷりっぷりジューシーで美味しいよ。トマトソースもいい感じ」
「おい、それ、俺がもらったやつ……」
「あ、ルトも食べる?」
ルトは文句を軽く受け流されてたけど、リリに「はい、あーん」ってされたら黙って食べてた。……僕の前でいちゃつかなくても良くない?
ちょっぴり頬を膨らませてたら、リリが僕にも切り分けたチキンステーキを向けた。
「モモも」
「……あーん」
なんだか割増で美味しい気がします。ルトは僕がリリと絡んでても睨まなくなったな。友だち認定のおかげ?
「モモが作った飯って全部美味いよな。普段市場で安く買える飯食ってるから、さらに美味く感じるのかもしれねぇけど」
「毎回買ってるの?」
「ああ。はじまりの街だと、基本りんごだったけどな。一番安いし、空腹度回復率がいいし」
「こっちの街だと、野菜の串焼きが一番安いよね」
この二人、お金の節約のために食費を切り詰めてる気がする。
「前にモモに飯食わせてもらってから、市場でちゃんとした飯食っても、そこまで美味しく感じないし、空腹度回復目的ならりんごとか野菜の串焼きとかで十分なんだよな」
僕のせいだったのか……!
ちょっと責任を感じちゃうぞ。
「……僕が作った食料アイテム、持ってく?」
「もらう」
「正直すっごくほしい」
二人に真剣な顔で言われた。そこまで望まれると嬉しいな〜。
幸い、食材はたくさんあるし、しばらく食料アイテムに困らないくらいあげちゃおう。
「たくさん作っとくね!」
「頼む。代金は払うからな」
「それはあんまり気にしないでいいけど。くれるならもらうね」
引け目を感じさせないように受け入れる。
食後にパンケーキを用意する前に、製作していたものを思い出した。
「おっと、忘れてた。――こちら、僕が作ったヤバいブツです!」
じゃーん、とコップを掲げる。オレンジ色のスムージーだ。
「言い方がひでぇな」
「えっと、ルトが言ってたけど、羽が生えるニンジン?」
「言い方がなんか違う気がするけど、完全に間違ってるわけではない?」
リリの説明の仕方だと、ニンジンに羽が生えるみたいに聞こえる。それはそれでファンタジー感強くてありだと思うけど。
「食べたらアバターに羽が生えて、三十分間
説明し直してくれたルトに頷く。
僕が製作したヤバいブツ――もとい、ニンジンスムージーの鑑定結果はこちらです。ちなみに、【アイテム名・説明文変更】システムで、僕独自のアイテム名に変更してみたよ。
――――――
【うさぎ印のニンジンスムージー】レア度☆☆☆
空腹度を十回復する。食後三十分間、背中に羽が生えて、
レシピ:【
――――――
「……付加効果を重ねがけするとは、やるな」
「でしょー! やってみたら、できたんだ。これぞ、一石二鳥!」
説明をしたら、ルトに褒められた。嬉しい。どっちかの効果しか出ないかもって思ったけど、無事完成してホッとした。
「すごーい!
「そうだな。試してみる価値はある」
目を輝かせてる二人を見て悟った。
僕、このスムージーを量産しないとダメだね。ニンジンの在庫があんまりないし、それに一口齧らないといけないのが、地味につらい……。
「――……無理は、しなくていいぞ?」
気遣われた。ルト、優しいね。
でも、僕、友だちのためなら生のニンジンを齧るくらいがんばれるよ。
「ニンジン、たくさん買ってくる……!」
「あ、それは俺がしてくるから。さすがに全部頼むのは駄目だろ」
「そうそう。他にも、ほしいものあったら言って。私たちで買ってくるから」
二人が真剣な顔で言ってくる。それならそうしてもらおうかな。あ、でも、どうせなら、ニンジンを育てちゃおう。
「ニンジンの種を買ってきてくれたらいいよ。その方が安くなるはずだし」
スキル屋で、ルトは所持金に余裕ないって言ってたよね。
「……お金は気にしないで大丈夫だよ? バトルして、ドロップアイテム売ったらどうにかなるはずだから」
「まぁ、装備とか食料とか生産用の材料とかを買うと、どうしても金が足りなくなるけどな……」
懐事情は厳しそう。僕と違って、装備も結構揃えないと、バトルしにくいみたいだし。
僕は魚で大儲けしたけど、転移スキルが使えない二人だとこの方法でお金を稼ぐのは無理かな。
「……食料アイテムの分も、出世払いでいいよ! というか、バトルフィールドに行くとき、たまにパーティー組んでくれるだけでも助かるし」
「そうか? それくらいなら、予定合わせたら全然問題ねぇけど」
「後からちゃんとお金は渡すからね。あ、服作る? ほしいって言ってたよね?」
「ほしい!」
リリの提案に飛びついた。
僕は服系の装備は効果が発揮されないけど、見た目だけは飾れるのだ。でも、街では絶対に売ってないし、リリが裁縫士ってことを知った時に頼んでたんだよね。
「わかった。じゃあ、製作開始するね!」
なんだか、リリはすごくウキウキしてる感じに見える。
ちょっと首を傾げてたら、ルトが耳元で囁いてきた。
「リリが金欠なのは、裁縫用の材料を買い漁ってるからだ。作るのが楽しいんだと」
「なるほど……。それなら、ちょっと援助しとこうかな」
頷いてからリリにタッチ。ちゃりーんと千リョウをお支払い。
「えっ、いらないよ! 食料アイテムの代金として、服を用意するって話でしょ?」
「技術料だよー。その代わり、バッチリ可愛くなる感じでお願いね!」
グッと拳を向けたら、リリはちょっと戸惑った感じで目を瞬かせた後、控えめに拳を合わせてくれた。
「……もちろん、モモの魅力を引き立てる感じの服を作るから、楽しみにしてて!」
「うん。すっごく楽しみにしてる。服はいくつあってもいいよー。状況ごとに着替えるの楽しそうだし」
僕がそう言うと、リリは早速って感じで紙にデザインを書き始めた。
「モモの行動っていうと……釣り、料理、農業、街探索、バトル……それぞれをイメージするなら……」
なんかたくさんできそうだね?
ルトと顔を見合わせて、同時に肩をすくめた。もっとリリへの資金提供しないと、またすぐに金欠になっちゃうかも。
僕も、着飾るためにさらにお金稼ごうかなー。
******
◯NEWアイテム
【うさぎ印のニンジンスムージー】レア度☆☆☆
空腹度を十回復する。食後三十分間、背中に羽が生えて、
レシピ:【
◯NEWシステム
【アイテム名・説明文変更】
自作の料理やオリジナルレシピで作った生産品のアイテム名・説明文を変更できる。虚偽説明は自動で不可判定となり、反映されない。
******
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます