第48話 初収穫だー
暇だと言うルトと一緒に、農地へレッツゴー! そろそろ収穫できると思うんだ。一緒に採れたて野菜を食べたいな。
「早速農地使ってんのか……」
「まだ借りてる段階だけどね。ホームも借りたよ。そこで料理作ってごちそうするね!」
「……楽しそうで良かったよ」
なんか呆れられてる気がするけど、ふふふ〜んと笑って躱す。友達をホームに招くの楽しみだなー。
辿り着いた農地で、早速作物の状態を見ようと歩いてたら、ルトがついてきてないことに気づいた。
「なにしてるの?」
農地の手前の小道で、ルトは見えない壁があるようなパントマイムをしてる。
「遊んでるわけじゃなくて、マジで壁があるんだよ。たぶんこれ、個人の土地だから他人は入れない。許可出してくれ」
〈フレンド・ルトから『農地立ち入り』の許可を申請されました。許可しますか?〉
「なんと、そんな仕組みがあったとは……。どうぞ、入って!」
「おっ……急に入れるようになったな」
ちょっと崩れた体勢を立て直しながら、ルトがぐるっと農地を眺める。
「――外からじゃ、ただの土しか見えなかったけど、随分ともう作物育ててんだな。建物もあるし……」
「見え方も違うの?」
調べてみたら、農地はデフォルトで『他者の立ち入り〈許可制〉』『他者からの目視〈隠蔽〉』が設定されてた。プライバシー配慮ってことかな。
目立ちたくないけど、ルトたちから中が見えないっていうのもどうかと思うので、『他者からの目視』の項目の〈隠蔽〉を〈フレンドのみに公開〉に変更しておく。立ち入り許可は……申請が来たら許可すればいいか。
「――設定変更したから、フレンドなら外から見えるようになるよ」
「助かる。それならリリも合流できるだろ」
「あ、もう来るの?」
「ログインしたって連絡きた。こっちに向かってるって」
「なるほどー。じゃあ、一緒にご飯食べれるね!」
そうとなれば、さっさと収穫しとこう。大根もレタスもトマトも収穫可能みたいだし。
トマトは野菜屋さんでも買ったから、食べ比べしてみたいな。
農地システムメニューから【収穫】を選んで、収穫先を倉庫に設定。これで一気に倉庫にしまわれるはず。
「【収穫】だー!」
「お?」
立派に育ってたレタスと大根とトマトの大半が一気に消える。残りは種ができるまで待っとくんだ。
倉庫を見に行ったら、山積みの収穫物。ストレージと同じで、ちょっとイラストチックだけど、一つ手に取ろうって考えたら、ポンッと手の中に現れるからおもしろい。
「へぇ、結構便利なんだな」
「たぶん自分の手でも収穫できるよ。やってみる?」
「……やってみる」
では一緒に。僕も初体験だ。
まずはトマトを。これはトマトを一個ずつ手作業で採ればいいのかな。
「プチッとな」
「ハサミ使わねぇんだな」
手で簡単に採れるトマトはミニサイズ。僕の手にちょうどいい大きさとも言う。赤くてツヤツヤしてて美味しそう。
「……採れたては農家の特権!」
カプッと食べた瞬間に溢れる果汁が甘い。皮の食感も良くて、食べてて楽しいし。うまうま。
「うまっ。フルーツトマトって感じだな」
「確かにフルーツっぽいね」
美味しそうに食べるルトの感想に頷いてから、ちょっと首を傾げる。
僕、たぶん果物に特化してレアアイテムにする特性があると思うんだけど、トマトはどうなんだろう? もしかして野菜にも効果あるのかな?
もう一つ収穫して、半分食べて鑑定。
――――――
【食べかけのミニトマト】レア度☆
野菜。空腹度を一回復する。放置すると十分後に消滅する。
――――――
「――消滅!?」
驚きの鑑定結果だった。今までもこの説明あったかな? ……気にしてなかっただけかも?
目をパチパチと瞬かせる僕に、ルトが何気ない口調で「ああ。食べ残した食料って、時間経過で消えるよな」と言う。
「そうなんだ……」
「常識だろ?」
不思議そうなルトの顔を見て、気づいた。食べかけ果物のレアアイテム化の話、し忘れてるのでは?
他の果物っぽい野菜はどうなのかと検証するのも兼ねてイチゴを取り出しながら、説明する。ルトに見せる例として出すのはりんごだ。ちゃんとレアアイテム化してある。
「なんだ、この、歯型が残ったりんご……」
「【
「すげぇな?!」
ルトが驚いてる。そのりんごは差し上げますよー。僕の食べかけでよければ。
「――レアアイテム製造種族か……」
「そんなに見られたら恥ずかしーい」
「うざ」
ひどい。あんまりにも見つめてくるから、照れた感じでもじもじしてみただけなのに。
ちょっぴり傷つきながら、イチゴをかじる。
……甘い! 微かに酸味もあるけど、むしろそのおかげでいくらでも食べられそうな爽やかな甘さに感じる。
――――――
【
空腹度を二回復する。一時間、空腹になりにくくなる。
――――――
「レアアイテム化できたー!」
「イチゴって、果実的野菜って分類だったか。世間一般の印象で決めてるのかもな」
正式な分類がどうだろうと、普通にイチゴは果物だよね。納得。
「
「本物のウサギ扱いしてない? ウサギ系でも、モンスターだよ? それに、この世界のウサギ系モンスター、結構肉食に見えるけど」
はじまりの街近く、東の草原にいた
ルトの言葉に不満をこぼしたけど、正直僕も気になってきた。
ウサギと言えばニンジンだよね。実際は、言うほどニンジン食べないっていうか、栄養的に食べ過ぎちゃいけないらしいけど。
「――なんとここに、買ったばかりのニンジンが!」
てってれー!
アイテムボックスから取り出したニンジンを掲げたら、ルトに呆れた顔をされた。
効果音つけると、ニンジンが輝いて見えて美味しそうじゃない? 生でかじるのはちょっと抵抗あったけど、いける気がしてきたよ。
じぃっと見つめてから、気合いを入れて噛みつく。……果物の時より一口が小さいのは仕方ない。僕、ニンジンは煮たり焼いたりしたのが好きです。
う~む……現実で食べるより、甘みが強いような? でも、お高いニンジンだったら、現実でもこれくらい甘いかもしれない。
――――――
【
空腹度を二回復する。食後三十分間、背中に羽が生えて、
――――――
「ふぁっ!?」
とんでもない鑑定結果だった。ルトに教えたら、目を見開いてぽかんとしてる。
食べたら羽が生えて飛べるようになるニンジンかぁ——。
「――このニンジンでスムージーを作ったら、リアル『翼を授けるドリンク』になる……!?」
「エナドリ化させるな」
僕のボケにすかさず冷静にツッコミを入れてくれる、そんなルトが結構好きです。
でも、このキャッチコピーよく知ってたね? スルーされそうだなって思ってた。
「実際、エナドリみたいなものだよね?」
「……そうだな。とんでもないアイテムだ。売ったら高値になるんじゃね?」
「そんな騒動の元になりそうなものを生み出したくないよ」
答えながらふと思う。
元から羽がある僕が食べたらどうなるの? もう一口食べたら変化があるかな。
カプッと食べてみる。美味しくはない。せめてドレッシングがほしい感じ。
体は変わった感じがしないけど。
「あ、羽がちょっとデカくなってるぞ」
「ほんと?」
自分ではよくわからないけど、そうらしい。
ルトたちにプレゼントするにはちょうどいいかな。きっとバトルで活用できるはず。
「――にいさん、うまい話があるんだが、乗るかい?」
「急に怪しい商人風になんの、なんでだよ。詐欺師っぽいぞ」
「レアアイテム化ニンジン=ヤバいブツって考えたら、こうしないといけないと思った!」
キリッとした感じで答える。もはや義務感。
ヤバいブツを製造する計画を練るなら、ふざけたくなるものでしょ?
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◯NEWアイテム
【
空腹度を二回復する。一時間、空腹になりにくくなる。
【
空腹度を二回復する。食後三十分間、背中に羽が生えて、
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