第44話 お久しぶりです
仕組みはよくわからないけど、【
時間制限なく、太鼓みたいな効果があるのかな?
……見た目はちょっと嫌だけど、誰に見られるわけでもないんだから効率重視! この谷間を抜ける頃には外せばいいかなー。
そんなことを考えつつ、
ひまわりみたいにひょろっとした背の高い大きな花が、根っこを足みたいに使って近づいてくる姿が踊ってるみたいだった。葉っぱをリズミカルに動かしてたし。
そんな愉快な姿の
葉っぱがカッターの刃みたいに飛んでくるのは結構凶悪だったけど、それより笑い粉がひどい。
笑いながらリーフカッターを回避するのは、今までのバトルの中で一番死を感じた状況だったかもしれない……。
「――でも、そんな苦労はもう終わり。【笑撃耐性】スキルをゲットしたからね!」
これほど嬉しいスキル獲得アナウンスが今まであっただろうか。
爆笑しながら倒した
ここまでに何度笑い死にそうになったかは、考えないことにする。
笑撃耐性スキル、これからは頼んだよ。
「というわけで、今度こそサクサク進もう」
「え、なに……? ――あっ!?」
「……見たことがあると思ったら」
あっという間によく見える距離に来て、カミラがパチリと目を瞬かせる。
まさかここで出会うなんて思わなかったよ。
「カミラだー! 久しぶり!」
「ん。モモ、元気そう」
「元気だよ! カミラはなんでここにいるの?」
近くの岩場に着地。
カミラからすっごく視線を感じて、
……そそくさとしまって、気を取り直してカミラとおしゃべり。僕が変なお面をつけてたことは、忘れてください。
「……私は元々第二の街オースが本拠地。冒険者ギルドから帰還指令が来たから、戻る途中」
「あ、そうなんだ!」
「ついでに、なぜか溶けてた街道をちょっと整備しておいた。これで、小規模の商隊は通れるようになるはず」
イグニスさんの後始末をしてくれたんだね。ありがとう。
「じゃあ、街道整備はもう必要なさそう?」
「まだ。はじまりの街の冒険者に、現地までの資材運びの依頼が出るって聞いた。異世界冒険者が資材を運んだら、高ランクの冒険者が代わりに街道を塞いでるモンスターを倒すってことになってるらしい。今はこの近くで、作業員と冒険者が街道整備拠点を作ってる」
指南役だった
「そっかー。僕は資材運んでないから、代わりに倒してもらうのはダメだね……」
しょんぼり。依頼が出るのははじまりの街みたいだし、どの道僕はそのルートでボスモンスターの障害を突破できない。
「モモはあのモンスターを倒してこっちに来たんじゃないの?」
カミラがきょとんと目を瞬かせて首を傾げた。
「僕が倒したっていうか、倒れたのを見たモンスターは
「……なるほど。
新たに現れたモンスターは
どんなモンスターなのかなー?
「――それなら、私が一緒に行く?」
「え、いいの!?」
思わず食い気味に反応しちゃった。カミラがちょっと驚いてる。
「……ん、いい。モモはもう第二の街に行けるわけだし。資材運びの依頼を受けられないのは、不公平だから」
「ありがとー!」
カミラ大好き!
万歳をしながらお礼を言ったら、ちょっと微笑んでくれた。この微笑みのレア感も久々〜。
特に準備することもないので、カミラと一緒に飛んでボスモンスターのところへ向かう。
カミラは風魔術
「――詠唱破棄スキル、あるんだ!?」
「ある。私は魔術学院で習得した」
「なぁに、それ?」
カミラ曰く。
魔術学院は王都にある魔術士育成のための教育機関。素質がある人は誰でも入れるし、そこで学べは色んな魔術やスキルを習得できるんだって。詠唱破棄スキルはその一つ。
「――王都は遠いなぁ……」
早く詠唱破棄スキル、ほしいんだけど。
むむ、と僕が唸ってたら、カミラは「スキル屋で交換すればいい」と言った。
「スキル屋ってなに?」
「各街にあるスキルを交換できる店。不要なスキルを、カタログに載ってるスキルに交換してくれる」
「え、そんな店があったんだ!?」
「はじまりの街にはない」
第二の街以降に実装されてるってことね。
不要なスキルをほしいやつに交換かー。たぶん一対一の交換じゃないよね。いくつ必要かわからないから、ちょっと調べてみないとな。不要なスキルっていうのが、今のところあんまりないし。
「……スキル取得のために、もっと行動してみようかな」
スキルの入手難易度は、人それぞれらしい。
体術士は【ダッシュ】とか【キック】とか、体を動かす系のスキルを入手しやすいって情報を見たことがある。魔術士だとなんだろう?
「ん。予想しなかった行動でスキルを入手できることがある。いろいろ試してみるといい」
「そうする! 教えてくれてありがとー」
そんな話をしている内に、ボスモンスターが見えてきた。
……
「あれは音波で範囲攻撃してくる。私が倒すにしても、防御と回復は自分でしっかりやって」
「りょうかい! でも、僕もちょっと攻撃してみたい。どの属性が効く?」
「鑑定してみるといい」
カミラに勧められて、全鑑定スキルを使用。
――――――
【
土・木属性モンスター。頭の上で花を大切に育てている。花を傷つけられると、怒り狂って手がつけられなくなる。主な攻撃方法は『音波』『地揺らし』『踏みつけ』『吹き飛ばし』。得意属性【風】苦手属性【火】
――――――
「火属性が効くのかー。……でも、花を傷つけたらヤバくない?」
「それに気づいたの偉い。あいつを倒す時、極力花を傷つけない方が楽。足元狙うのがベスト」
「なるほど。じゃあ、僕は
「ん、適度に攻撃避けて」
カミラを見て、ちょっと怯んでるのは、一回バトルしたことあるからかな。僕がいるから、このままバトルに進むみたいだけど。
とりあえず
――パオーン!
「ぎゃっ!?」
ぐわっと視界が揺れた。これ、音波攻撃かな? 耳が良い僕には効果覿面……体力が削れてるよー……。
「
体力回復のためにスキル使用。
「これ、私にも効果ある。ありがと」
そう呟いたカミラが
――パオッ……!
カミラを補助するため
カミラが火属性の魔術を繰り出し続けるのを眺めながら、僕もちまちまと攻撃したり、回避したりと忙しい。
鼻から息を吐き出す『吹き飛ばし』攻撃で、うっかりボスエリアから追い出されそうになってヒヤヒヤした。敵のモンスターから離れすぎると、バトル棄権扱いになるらしいから。
「――……これで、最後。
特大の炎が
〈〈ノース・サウス街道エリアボスが、プレイヤーによって初めて討伐されました〉〉
あ、またワールドミッション達成しちゃった感じ……?
〈初討伐報酬として称号【初物好き】、スキル【
おお!
称号は初めてバトルするモンスターに対して、攻撃力が五%上がる効果があるんだって。いいね。
スキル【
花びらが舞うって、なんか雅? 使うの楽しみだな~。
〈
〈種族レベルが17になりました。魔術士レベルが8になりました〉
「レベルが上がったー!」
「おめでとう。回復サポートありがとう」
涼しい顔で近づいてきたカミラに「いえいえー」と返す。僕がしたことは、本来カミラには必要なかっただろうけど。喜んでくれたなら僕も嬉しい。
「ふー……これで、はじまりの街に帰れる確率が上がったよ。カミラ、ありがとう!」
改めてお礼を伝えたら、カミラが小さく首を振る。
「感謝されるほどのことじゃない。ここからの帰り道は一人でがんばって。私は第二の街に戻らないと」
「そっか。カミラも気をつけてね。今日はほんとに助かったよ。また会ったらおしゃべりしようね!」
「ん。またね」
カミラは第二の街と太陽の位置を確認して、ちょっと急ぐ雰囲気だ。引き止めたらダメだろうと、笑顔で手を振って別れる。
きっと、また会えるよね。
「……よし。ここから先は自力でがんばるぞ!」
気合いを入れ直して、いざ前進だー!
******
◯NEWモンスター
【
木属性モンスター。根っこを使って、葉っぱを振りながら踊るように移動する。主な攻撃方法は『リーフカッター』『笑い粉』。笑われると凶暴さが増す。笑われるのが自分の花粉のせいだとは気づいていない。得意属性【土】苦手属性【火】
【
土・木属性モンスター。頭の上で花を大切に育てている。花を傷つけられると、怒り狂って手がつけられなくなる。主な攻撃方法は『音波』『地揺らし』『踏みつけ』『吹き飛ばし』。得意属性【風】苦手属性【火】
◯NEWスキル
【笑撃耐性】
オートスキル。笑いの衝動に耐えやすくなる。
◯NEWシステム
【魔術学院】
王都にある魔術士を育成する教育機関。素質があれば、だれでも入ることができる。
講義や訓練を規定数受けると、スキルを習得可能。
【スキル屋】
はじまりの街以外の各街に存在する。所持スキルとカタログ内スキルを交換できる。交換に必要な所持スキルの数は、希望するスキルによって異なる。
◯NEW称号
【初物好き】
効果:初めてバトルするモンスターに対して、攻撃力が五%上がる。
エリアボスを初めて討伐した者に与えられる称号。
◯NEWスキル
【
魔力で生み出した大量の花びらを乱舞させて攻撃する。デバフ:暗闇の追加効果がある。
◯NEWアイテム
【
二メートルほどの長さの牙。生産活動の素材になる。
【
二メートル四方ほどの大きさの皮。鞣すと生産活動の素材になる。
【木魔石】レア度☆
木属性の魔石。
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