第43話 駆けて飛んで戦うのだ
ログインしたら、まだ慣れない部屋だった。
ホームの寝室にはベッドだけが置いてある。ホーム全体をもっと飾って遊びたいなー。今回ははじまりの街に行くのが優先だけどね。
「失くしたくないものはストレージに入れたし、準備オッケーかな?」
持ち物を確認して頷く。
装備品は天の杖と耐衝撃用アンクレット。杖の大きさを錬金術で調整したから、片手で扱いやすくなったんだ。
アイテムボックスに入ってるのは、体力回復薬と魔力回復薬、りんごだけ。
「よっし、行くか〜」
気合いを入れたけど、まずは農地に寄り道。
前回ログアウトする前は、ちょっぴり芽が生えてただけだった。今は――。
「おー、わさわさしてるー!」
農地の一部が緑色になってた。
レタスと大根は葉っぱが増えてるし、トマトは茎が伸びて、花が咲きそうな感じ。次のログインの時には収穫できそうだな。
何を作るか考えたら、わくわくする。そろそろお肉も必要かな。街で買うより、モンスターとバトルする?
はじまりの街なら
はじまりの街に転移で行けるようにした後は、第二の街周辺のバトルフィールドも確認しようっと。
追加で水やりと肥料は必要なさそうなので、今回は観察するだけで出発。
街中を飛んでたらご近所さんに会った。
「るんるんるん〜」
「お散歩?」
「違うよ〜。西の門に向かってるんだ」
「あら、そう。お気をつけて」
心配そうに手を振って見送られた。死に戻り前提とは言えない。
にこにこと笑って誤魔化して進む。
市場のにぎやかさに心惹かれながら、今日はグッと堪えて西門へ――って、果樹園でフルーオさんと目が合った。
「お? バイトしてくか?」
「今、朝だったね。うーん、どうしようかなー」
西門の方と果物の木を交互に見る。
……果物の魅力に負けそう。僕って意思が弱い!
「今日はもうたくさん収穫したから、また今度でもいいぞ。とりあえず、これ食ってけ」
「さくらんぼだー! ありがとう」
気遣ってもらっちゃった。
ありがたくさくらんぼを口に入れたら、爽やかな甘酸っぱさ。小粒だけど、美味しい! 一気にやる気が回復したよ。
「なんか知らんが、がんばれよ」
「うん! はじまりの街に行けたら、美味しいお魚プレゼントするからね!」
「お、そりゃ嬉しいな」
嬉しそうに表情を綻ばせるフルーオさんに約束して、先に進む。
バトルフィールドはすぐそこだ。
◇◆◇
西門から出たら【岩山の谷間】っていうフィールド名が出てきた。ここって、そんな名前だったのか。
前回は両脇の岩山を進んだ。でも、今回は谷間を行く。
……高い岩山を登るのが面倒ってわけじゃないよ? 確かに
「モンスター発見! だけど、ゴーレムじゃないのかー」
早速現れたモンスターは、岩のような鎧を纏った猿みたいな感じ。
見た目以上に素早いモンスターを、回避スキルを駆使して躱しながら、鑑定スキルを発動。
――――――
【
土属性のモンスター。絶壁岩山の下層域をテリトリーにしている。岩でできた鎧を身に纏っているが、重さを感じないかのように素早く動く。主な攻撃は『ひっかく』『キック』『トリックチェンジ』。得意属性【風】苦手属性【木】
――――――
色々気になる。子分ってことは、親分がいるのかな、とか。トリックチェンジってなに、とか。
ダメージくらうのは嫌だけど、どんな攻撃なのか見てみたい。
そんなことを思っていたからか、
「うん? その手に持ってるのはなに……?」
あれ、体力回復薬だと思う。なんで持ってるの?
嫌な予感と共にアイテムボックスを確認したら、十個あったはずの体力回復薬が九個になってる。そして見知らぬアイテム――【
どう考えても、トイレで出てくるあれをイラスト化したやつに見えるんだけど……?
「トリックチェンジってそういうことかー! アイテムボックスのアイテムを、お前のフンに変えるって、最低!」
それで喜ぶのは幼稚園児だよ! お下品!
アイテムボックスから【捨てる】を選択。手で触りたくもないからね。
「キキッ!」
「ムッカー……調子に乗ったことを後悔するんだな!」
挑発するように笑う
蔦に絡みつかれて焦った様子の
〈
太鼓?
子分らしく太鼓持ちでもしてたの?
アイテムを詳しく鑑定してみたら、使用すると
「……使おう」
奪われた体力回復薬は返ってこなかったし、今後
アイテムボックスから取り出した
「ちょっとうるさいけど、仕方ないか」
視界の端に太鼓が居続けるのも気になる。
でも、効果に時間制限があるから、さっさと進むのを優先した。
ここは苔むした岩ゴーレムのテリトリーじゃないのか、襲ってくる気配がない。それはラッキーだけど、たまに【
身に纏ってる岩で岸壁に擬態してて、出現の予測ができないんだよねぇ。
「――ゴーレムほどじゃないけど、硬いし……」
何発も魔術を当てないと倒せないから、時間がかかる。僕はボスを見たいのに〜。
嘆いてたら、岩山から大きな影が跳び下りてきた。地面がズシンッと振動した気がする。
「あ、猿……だけど、
太鼓の効果が切れると
だから、見た目は
――――――
【
土属性のモンスター。絶壁岩山の下層域をテリトリーにしている。
――――――
鑑定結果を見て、目を眇める。
おのれ……お前も、トリックチェンジを使うのか……! 絶対にくらいたくない。
「というか、ボスじゃなくてオヤビンって……そこで可愛さを出しても、見た目は可愛くないよ?」
「ギキキッ!」
「なんか怒った。可愛さはそもそも求めてなかったってこと?」
体当たりを飛んで躱して、うーんと考える。
たぶんトリックチェンジは体に触れないと使えないんだと思う。だから、魔術で仕留められたら問題ない。
ただ気になるのが、集団で襲うって説明されてるわりに、
「もしかして、見放されちゃった……? え、可哀想……」
「ギキッ!」
さらに怒られた気がする。憐れまれるの嫌だったのかな。
というか、
謎が解明した感じですっきりして、木魔術を使う。
〈
「
〈種族レベルが16になりました。魔術士レベルが7になりました〉
〈木魔術のレベルが3になりました。魔術【
レベルが上がったのは素直に嬉しいな!
******
◯NEWモンスター
【
土属性モンスター。絶壁岩山の下層域をテリトリーにしている。岩でできた鎧を身に纏っているが、重さを感じないかのように素早く動く。主な攻撃は『ひっかく』『キック』『トリックチェンジ』。得意属性【風】苦手属性【木】
【
土属性モンスター。絶壁岩山の下層域をテリトリーにしている。複数の
【
土属性モンスター。岩に擬態して身を潜めているが、敵を察知すると飛び出してくる。岩のような鎧を纏っている。主な攻撃は『頭突き』『岩の槍』。得意属性【風】苦手属性【木】
◯NEWアイテム
【
【
赤茶色の毛皮。鞣すと生産の素材になる。柔軟性がある。
【
赤茶色の太鼓、バチ付き。使用すると
【
焦げ茶色の毛皮。鞣すと生産の素材になる。柔軟性・耐久性が高い。
【
これであなたも
◯スキル変化
木魔術レベル2→3
【
蔦でできた鞭で最大五回連続攻撃する。当たる度にダメージ量が増大する。
******
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます