第36話 ぱんぱかぱーん!

 半ば呆然としながら驚いてたら、不意にファンファーレが聞こえた。


〈〈ワールドミッション『商人を喰らう怪物の討伐』がプレイヤーによって達成されました。これより第二の街オースが開放されます〉〉


 な、なんだと……!?

 もしかしなくても、これ、イグニスさんがやったことなのでは? どうしてプレイヤーが達成したことになってるの。


 ……異世界の住人NPCと一緒にミッションをクリアしたら、プレイヤーの功績になるってこと?


「これが、棚からぼた餅……? 絶対正規の攻略ルートじゃないでしょ。本来ならどうクリアするものだったのか気になる……」


 プレイヤーでも、レベリングすれば勝てるモンスターだったのかな。一戦もしてないから、全然わからないや。


〈ワールドミッション達成報酬として、称号【開放せし者】、スキル【転移】、アイテム【岩犀ロックライノの杖】【打出の小槌】【初級魔力回復薬】が送られます〉


 多い! そして、すっごく気になるのがある。スキル【転移】ってなに?

 ……よし、一つずつ確認しよう。


 まずは称号から。

 これは文字通り、次の街を開放するためのミッションをクリアしたプレイヤー全員に贈られる称号らしい。

 効果は、種族レベルが上がりやすくなること。——めっちゃ良いじゃん! レベリングが捗る!


 次に確認するのは、一番気になってた【転移】スキルについて。


 効果は、ピンをさした場所に転移すること。ピンをさすには、さしたいところで【転移ピン】って唱えてないといけないみたい。そうしたらマップ上にピンが表示されるようになるらしい。消すのはマップ上でできるっぽいね。


 一つの街にさせるピンの数は三つ。バトルフィールドには一つだけで、現実時間で一日(ゲーム内時間で四日)使用しなかったら、消失しちゃうんだって。


 正直、使ってみないとどんな感じなのかよくわからないなー。

 ランドさんの薬店とか、レストさんの酔いどれ酒場、レナードさんの錬金術工房にピンをさしてたら、依頼の納品とかしやすくなるかも?


 便利なのは間違いなさそうだね。現時点で転移スキルを覚えられる機会は、このワールドミッションクリアだけだっただろうから、すごくラッキー!


 最後はアイテムの確認。


 一個目【岩犀ロックライノの杖】は魔術士用の武器。魔力攻撃力が+15、風・土属性のモンスターへの攻撃力が30%上昇っていう、攻撃特化な効果。


 取り出してみたら……大きいし、ゴツい! これ、サイの角を削って作られてない?

 僕が使うなら、錬金術でサイズ調整してからじゃないと、動きにくくなりそうだなぁ。


 アイテムボックスにしまって、次のアイテムを確認。

 謎な【打出の小槌】とは——ゲーム内時間で一日に一回使用可能で、使用すると、ランダムでお金を入手できるアイテムらしい。


 ……不労所得ゲット?

 ものは試しに、早速使ってみよう!


 見た目は金色の小槌。軽く振ってみたら、目の前で円形のルーレットが回った。……どういうこと?

 表示されてる数字は、一番小さいのが【100】で、一番大きいのが【1万】。八割くらい【100】が占めてる。


 止まった時に上部の三角形が指したのは【100】。……ですよねー。


「ま、毎日してたら、いつか1万が当たるかも……?」


 正直、地道に薬草を売った方が効率がいい気がするけど。不労所得だし、こんなもんか。


「最後のアイテムは魔力回復薬かー。やっと出てきたって感じ。これまで自然回復かスキルでの回復しかなかったもんね」


 説明を見るまでもなく、これまで密かに望んでたアイテムだとわかった。

 第二の街では、魔力回復薬が作れるようになるのかな? はじまりの街では、作るための素材自体が存在してなかったんだよねぇ。


「確認はこんな感じか。——それにしても、僕の行動が、第二の街開放に繋がるなんて……。あ、果物屋さんの依頼、達成できてるかも?」


 ミッションリストを確認。

 ……んん? まだ達成できてないみたい。これ、障害になってるモンスターを倒すだけじゃだめなのかな。流通を回復させることが必要なんだもんね。


 第二の街に行って、なんらかのアクションを起こさないといけないのか、それとも時間経過で達成になるのかな?

 ちょっと様子見しよう。


 というわけで、確認は終わったんだけど、これからどうするべき?


 ちょっと首を傾げてたら、チャットが届いてることに気づいた。ルトだ。


——————

ルト『おっす。お前、やったな?』

——————


 なにをだよ。

 僕はリリじゃないので、短すぎる質問をされても理解できませーん。


——————

モモ『やったって、なに? リリに【ランダムボム】を渡したのは僕だよ』

ルト『それじゃねぇけど、それもお前かよ。そんなことだろうと思った。あれ、バトルでいきなり使われて、地面からお前の石像生えてきて爆笑した』

——————


 なにそれ。僕も見たかった。きっとプリティーだったんだろうな!


 リリにあげた【ランダムボム】っていうのは、錬金術で作ったアイテムだ。ビー玉くらいの大きさで、投げるとランダムな魔術で攻撃できるんだって。

 詠唱時間が必要ないから、敵に接近された時とかに便利かと思って、あげたんだ。


 レシピは【石炭】と【魔石】。レベリング中にゴーレムを倒してたら、結構たくさん土魔石をゲットしたから、つい作っちゃった。


——————

モモ『僕の石像を見れてラッキーだったね!』

ルト『笑ってたせいで、敵から攻撃受けた。この恨み、次会った時に晴らすからな』

——————


 こわっ。しばらく、ルトには会わないでおこう。

 チャット閉じようかな?


——————

ルト『そんなことより、お前だろ、ワールドミッションクリアしたやつ』

——————


 なぜバレた?

 普通、攻略組だと思うでしょ。


——————

ルト『一応説明すると、掲示板の攻略スレが大騒ぎ。誰がクリアしたかって、探されてる。攻略組を自称してる連中じゃないことは、それぞれが証言してて確定されてる』

モモ『それ、僕がクリアしたってバレたらどうなる感じなの?』

ルト『知らね。攻略方法尋問されるだけじゃね? つーか、俺も聞きたい』

——————


 うーん、みつかりたくないなぁ。

 友だちと交流するのは楽しいけど、見ず知らずの人に詰問されるのは普通にヤダ!


——————

モモ『ルトとリリになら、今後会ったときに話すよ。それ以外の人には気づかれないようにして!』

ルト『俺がどうにかできるもんじゃないと思うけど。一応、掲示板の動向を気にしとく。それより、お前どうせ、正規ルートじゃない攻略だろ? 聞くの楽しみにしてる』

モモ『ご明察! 楽しいかどうかはわからないけど、聖なる地の謎も含めて教えるよー』

ルト『やっぱ、そこの流れか。さすがマイペースに生きてるやつだな』

モモ『それ、褒めてる?』

——————


 微妙な評価に、「んん?」と首を傾げてたら、上空から地面を震わせるような声が響いた。


『ふむ……こんなものか』


 岩犀ロックライノがいたところを観察して、イグニスさんが頷いてる。

 なんか、存在を忘れてた感じになって申し訳ない。いろいろと確認することがあってね……。


 下を見たら、赤々としたマグマみたいになってたところは少しずつ冷えて、黒くなってきてた。……そこに降りる気は全然しないけど。だって、まだ空気が熱い!


「イグニスさん——って、ええ!? 待って!」


 なぜかイグニスさんが方向転換してる。慌てて呼びかけるけど、反応してくれない。僕の声、聞こえてますかー?


「うわっ!?」


 ビュン、と突風が吹いてきて、転がっちゃう。岩山からの落下は免れたけど、ヒヤヒヤした。

 なんとか近くの岩場に身を潜めて、風が止むのを待っていたら、嫌な予感がふつふつと……。


「——って、イグニスさん、いなくなってんじゃん!」


 どういうこと? 僕をここに連れてきた張本人が、なんも言わずに去っちゃうとかありなの?


 岩場にピューッと風が吹く。

 ここ、高い岩山だけあって、結構風が強いんだなー、あははー……。


「ほんとに、僕、どうしたらいいの……?」


 ひとりぼっちで馴染みのない場所に放置されて、ちょっぴり心細い。


「——……リリ、ルト、助けてーっ!」


 高い岩山は、声がめちゃくちゃよく響きました。



******


◯NEW称号

【開放せし者】

 街を開放するワールドミッションをクリアした者に贈られる称号。

 種族レベルが上がりやすくなる効果がある。


◯NEWスキル

【転移】

 ピンをさした場所に転移する。ピンをさすには、さしたいところで【転移ピン】と唱える。さしたピンはマップ上に表示される。ピンを消すのはマップ上で可能。

 させるピンの数はそれぞれの街には三つ、バトルフィールドには一つ。バトルフィールドにさしたピンは、現実時間で一日(ゲーム内時間で四日)不使用の場合、消失する。


◯NEWアイテム

岩犀ロックライノの杖】レア度☆☆☆

 魔術士用の武器。魔力攻撃力が+15、風・土属性のモンスターへの攻撃力が30%上昇する。


【打出の小槌】レア度☆☆☆

 ゲーム内時間で一日に一回使用可能。使用すると、ランダムでお金を入手できる。


【初級魔力回復薬】レア度☆

 魔力を5回復する。


【ランダムボム】レア度☆

 投げるとランダムな魔術で攻撃できる。与えるダメージは、発動した魔術によって変動する。

 錬金術で製作可能(レシピ:【石炭】+【魔石】)


******


 次回、運営サイドの番外編でこの章は終わりです。


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 次章も引き続きお楽しみいだたけるよう、更新がんばります。


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