第27話 ノース街道二回目だよ
リリから連絡が来たので、北門に向かう。
アイテムボックスにたくさんの食料が入ってるからか、気分はなんだかピクニック。ノース街道ではバトル必須なんだけどね。
食料は魚系モンスター同様、まとめて保存できる【食料ボックス】っていうアイテムがあった。五種類の空腹度回復アイテム・食材を、各種五十個までまとめて保存できるんだって。
食料ボックスとしてアイテムボックスの一枠に収納されるから、収納領域の節約になるんだ。
ガットさんが使ってない食料ボックスを売ってくれたから、料理を全部しまえた。作り過ぎちゃってどうしようって思ってたんだよねぇ。
「——あ、モモ、こっちこっち!」
辿り着いた北門は、前回と違って結構にぎわってる。プレイヤーが続々とノース街道に進んでるみたい。
「リリとルト、おひさー」
「言うほど久しぶりじゃないだろ」
ルトはクールな返答である。感覚的には久しぶりな気がするんだけど、僕だけ?
リリは「モモは相変わらずもふもふだねー。かわいいー」とにこにこ笑ってた。ゲームの仕様が変わらない限り、僕はずっともふもふです。
「挨拶はともかく、人多いし、さっさと進もうぜ」
「おけ。でも、なんで急にこんなに増えたんだろ?」
ルトからのパーティー申請を受けて入れて、ノース街道に進む。
東の草原の混雑具合よりはだいぶマシだけど、ガラガラな頃を知ってるからなんだか違和感がある。
初期装備の人が多いってことは、まだレベルが10になってないってことだよね。初期装備は、使えるのがレベル10までだから。
「
「マジか。確かに、次々仲間を呼ばれて死に戻るから大変だったんだもんねぇ」
ルトは掲示板での情報収集を怠っていないらしい。僕もした方がいいんだろうなぁって思うけど、遊ぶのに夢中になって忘れちゃうんだよ。
それにしても、運営さんは東の草原での混雑に即座に対応するとか、仕事が早いね。それくらい苦情が来てたのかもしれない。……お疲れさまです。
「——あ、そういえば、二人とも装備変えたんだね」
前回までほぼ初期装備だった二人が、しっかりとした装いになってる。
リリは治癒士らしい、白を基調とした服にゴールド系のブレスレット、白い杖を持ってる。
ルトは対照的な黒を貴重とした服にシルバー系のブレスレット、緑の鞘付き剣を佩いてた。
「前回のバトルで入手したアイテム売ったら所持金が増えたからな。ちょうど制限レベルになってて、装備変えないといけなかったし」
「これ可愛いでしょ? 街で売ってたんだー。ほんとは自分で作りたかったけど、まだ材料が集まらないからねー」
くるっと回って装備を見せてくれるリリに拍手して「似合ってるー」と返す。
ルトが「女子会かよ」とぼそりと呟いた。
確かに女性同士って、見た目を褒め合う印象あるよね。ルトには馴染みのない感覚なのかな。
でも、褒め言葉って、気軽に言えて関係を良好にする素晴らしいものじゃない? ルトも照れずに言ってこうよ!
「装備整えたなら、どんどんレベリングできるね」
「おう。でも、今日の目的は採掘な」
その通りです。ノース街道でのバトルには慣れたし、さくさく進んで採掘ポイントを目指そう。
というわけで、モンスターと戦ってるプレイヤーたちを横目に、駆け足で進んでいく。
みんなが敵意を集めてくれるから、バトルなしで進めるよ。……これはラッキーと言っていいのかな?
「採掘ポイントはサクノ山の方って言ってたよね? この辺で曲がってみる?」
道なりに進んで、プレイヤー数が減ってきた頃にリリが右手側を指す。
岩がごろごろしてる草原のさらに奥には、木が生えた岩場の多いエリアが続いてる。サクノ山って、この島全体がそうとも言えるから、採掘ポイントを絞りにくい。
「行ってみるか」
「とりあえず、
どんなモンスターが現れるかわからないので、体力継続回復は重要です。死に戻りは避けたい。
「ありがと。じゃあ、行こう!」
ルトを先頭にして駆ける。僕は時々
……今さら気づいたけど、
「お、初めて見るモンスターだぞ」
木々さえ減って、斜面に岩だらけのエリアまで来たところで、前方に石が組み合わさったようなモンスターをみつけた。これはまさしく——。
「ゴーレムだー!」
いると思ってました。こいつにも水魔術が効くらしい。でも物理耐性が高いから、ルトには不利な状況だろうなー。
「剣折れそうだな……」
ぼやいたルトが、地面を蹴ってジャンプした次の瞬間には、脚でゴーレムを横薙ぎにしてた。ゴーレムがちょっと揺れる。
「うわっ。なにそれ?」
「【キック】だよ。体術のスキルも鍛えたいって言って、覚えたみたい」
リリが解説してくれた。なるほど、ゴーレムにはいまいちな効果っぽいけど、戦い方に幅を持たせるのは良い考え方かもしれない。
「僕は変わらず水魔術——」
「回復は必要なさそうだし、私も攻撃!」
リリは
「こいつ、でかいだけの的だな」
「防御力も高いよ」
ゴーレムは動くのが遅いからどんどん攻撃が当たる。それでも体力を削り切るには時間がかかりそうだ。スキルを鍛えるにはいいんだろう。
そんなことを考えながら攻撃を繰り返してたら、ゴーレムが光を放って消えていった。
一番ダメージを与えたのは僕だ。効果抜群な水魔術使ってるんだから当然だけど。
ルトが敵意を引きつけてくれてたから、ほとんど動くことなく砲台のように魔術を放ち続けられたんだもん。
「経験値いいな、ゴーレム」
「うまうま。でも、レベル10を超えると上がりにくくなるね」
レベルアップに必要な経験値が多いです。しょんぼり。
ゴーレム討伐報酬は【硬い石】【土魔石】だった。魔石もらえたのはラッキー! もしかして、ゴーレムを倒したら魔石をもらえやすい?
「——これは、ゴーレム狩りの意欲が高まる」
「後で魔石はモモにあげるね」
「ありがとー。でも、裁縫士でも使えるんじゃない?」
「んー、調べてみたけど、魔石を使うレシピって、まだ成功率低いんだよねぇ」
なるほど。それならありがたくもらいます。
錬金術士は魔石を使うレシピでも、成功率高いのが多いんだ。土魔石なら【自動採掘機】とか。
自動採掘機を使うとツルハシがなくても採掘できるし、採掘中にモンスターが襲ってきても、即バトルに集中できるんだって。
「それじゃ、サクサク進むぞ。どうもあの辺りが怪しい。採掘できそうだ」
ルトが前方を指差す。そこには岩でゴツゴツした山肌にぽっかりと開いた穴があった。採掘場跡って感じ?
ゴーレムを倒しつつ、洞窟の前まで来て気づいた。この中、すごく暗い。入り口は掘れないみたいだし、中に入るしかないのに。
「私、明かり持ってないよ?」
「おっと……忘れてたね」
三人で顔を見合わせる。
問題が発生した状況だけど、それより気になるのが空腹度だ。食べかけのりんごを食べ忘れたから、いつもより減りが早い……!
「——錬金術で松明作るから、ちょっと探索休憩にしよう。あと、お腹空いた!」
提案したら、リリとルトが感心した感じの表情を浮かべた。
「対策あったのか。街に戻らないといけねぇかと思った」
「モモ、頼りになるー。じゃあ、休憩しよ。ここ、岩場のゴーレムが近づいてこないエリアみたいだし」
リリに言われて気づいた。エリア表記が【セーフティエリア】ってなってる。ここにいる間はモンスターが襲ってこないんだって。こっちから攻撃したらやってきちゃうらしいけど。
「ふふふ……頼りになるのは錬金術だけじゃないんだよ! 僕、美味しい料理も作ってきたからね!」
落ち着いていられるとなれば、僕の成果を披露するタイミングでしょ。
胸を張って言ったら、リリとルトはきょとんとしてる。その顔が美味で笑み崩れるのを見るのが楽しみだな!
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◯NEWアイテム
【食料ボックス】レア度☆
五種類の空腹度回復アイテム・食材を、各種五十個までまとめて保存できる。
【硬い石】レア度☆
花崗岩のかけら。生産用の素材として使用できる。
【土魔石】レア度☆☆
土属性の魔石。
◯NEWモンスター
【ゴーレム】
土属性モンスター。硬い石でできた人のような姿。聖なる地を守護する者。防御力は高いが、素早さは低い。パンチと、まれに
◯NEWシステム
【セーフティエリア】
モンスターの索敵から除外されるエリア。バトルフィールド内に点在している。内部から攻撃すると、モンスターからの攻撃も受けるようになる。
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