第26話 モモのちゃちゃっとクッキング
本日もログインです。
リリとルトは——お、ログインしてるみたい。連絡してみよう。
フレンド欄からリリを選んで、チャットを開く。
——————
モモ『こんにちは』
リリ『あ、ログインしてたんだ! 私とルト、今から休憩するつもりなの』
モモ『うわー、タイミングずれた……』
リリ『二時間くらいで戻ってくるけど、どうする? それからノース街道行く?』
モモ『行きたい!』
リリ『わかったー。ルトにも言っとくね。待たせてごめーん』
モモ『気にしないでいいよー。僕もすることあるし。ログインしたら連絡してね』
——————
ということで、ノース街道攻略はおあずけ。前回で結構たくさん鉄のツルハシが集まったし、採掘楽しみなんだけど。まぁ、二時間くらい待てる。
「これは、魚料理を作って振る舞えっていう啓示では……?」
友だちに食べてもらうって考えたら、やる気が増す。では、予定通り料理を習いに行こう。ガットさんの時間あるかな?
宿の隣の店、酔いどれ酒場はガランとしていた。鍵は開いてるから人はいるっぽい。まだ昼前だから、酒場の営業はしてないのかも。
「こんにちはー」
「おや、モモ。どうしたんだい?」
「ガットさんいますか? お料理習いたい!」
穏やかな笑みで歓迎してくれたレストさんに聞いてみる。ガットさんは調理場にいるらしい。今は時間があるから、料理を教えてもらえるはずって言ってくれた。ラッキー。
調理場に移動したら、作業をしていたガットさんが顔を上げた。
「お、肉の納品か?」
「違うよ。料理を教えてもらいたいんだ」
調理台の傍の椅子に飛び乗って、作業を観察。ガットさんは野菜の下ごしらえをしてたみたい。熊みたいな大柄で豪快な感じなのに、作業は丁寧だ。
「なるほど。もちろん、いいぞ。だが、何を作るか……」
「魚料理って教えてもらえる?」
「魚? 今日は仕入れてないな」
「僕が釣ってきた!」
ふふん、と胸を張って、調理台の上に獲物を取り出して自慢。大漁だったのです。
「お、すごいな。
「やっぱ、それってレア物?」
「ほどほどに穫れねぇ」
どっちだよ。まぁ、美味しいらしいのでそれでよし。
「——お前、錬金術士だったか?」
「うん、それがなに?」
「料理の下ごしらえは錬金術でできるはずだ。錬金術のスキルを上げるついでに、料理スキルまで手に入れられるかもしれん。やってみたらどうだ?」
錬金術のオールマイティー設定は料理にも及んでるらしい。専門スキルも得られる可能性があるとか最高じゃん。やらないわけないよね。
「あれ、でも、レナードさんは、専門外の錬金は難しいからって、まだ教えてもらえなかったんだけどな……」
そのせいで、自力で回復薬作れなかったんだもん。料理には関係ないのかな?
「下ごしらえは、各職業で共通した技能だからな。裁縫士の皮鞣しとか、薬士の薬草粉砕とか。だから錬金術でやっても品質への影響は出ないはずだぞ」
なるほど。生産技能の基礎だから、どの職業でも関係なくできるってことか。安心して錬金術使えるね。
錬金玉と錬金布を取り出して、いざ錬金。
レナードさんがいないとこで錬金するのは初めてだなー。これからは、釣りの待ち時間とかに釣れた魚の処理をしようっと。
「錬金布にお魚載せて——お、【
錬金成功率100%だって。
お魚は錬金布に載せようとした瞬間に、人間の手の平くらいの大きさのフィギュアみたいになってた。
大きなお魚は錬金布に載せきれるのかなって、ちょっと心配だったんだけど、問題なかったね。他の素材も大きなものはこうなるんだろうな。
「へぇ、錬金術士って、そうやって作業すんのか」
「そうなのです。——では、【錬金スタート】」
あっという間に、三枚おろしされた切り身ができた。楽! でも、まるごと使いたいときはどうするんです……?
しっかり検索してみたら、処理方法も色々選べるんだってわかった。鱗を取るだけっていうのもできるみたい。料理の可能性が広がるね。
下ごしらえした魚をまな板に移す。——すると、実物大に変わった。錬金布の上だけが特殊空間なのかな。
「三枚おろしなら、そのまま刺し身にしてみるといいな」
ガットさんが包丁を渡してくる。僕が使うには大きいな。剣みたい。
両手で握って、ガットさんが教えてくれる通りに魚の切り身に包丁を当てる。——すると、一瞬で見慣れた刺し身状態になった。皿まであるんだけど。
「ふえっ!? どういうこと?」
「そういうもんだ。頭の中でのイメージが大切だぞ」
「錬金術と似てるね」
イメージで検索する錬金術と、イメージで調理する料理。このゲーム、脳内で繋がってるだけあって、そういうところの読み取りが上手いみたい。
「初料理だろ? 食ってみろ」
「お腹が空いてたし、ちょうどいいかも」
しょうゆを出してもらって、いざ一口……と食べる前に、鑑定しなくちゃ。
——————
【
錬金術を駆使して作られた生魚の切り身。ぷりぷりで美味しい。空腹度を10回復する。
——————
美味しい保証いただきました。ということで、実食。
「——うまっ!」
しょうゆにつけたときからわかってたけど、すごい脂のりだ。身が引き締まっててぷりっぷりだし。味は新鮮なアジそのもの。……ダジャレじゃないよ。
「料理って結構簡単だろ?」
「でも、その包丁がなくちゃいけないんでしょ?」
気になったので包丁を鑑定してみた結果がこちら。
——————
【優れた料理人の包丁】
料理スキルのレベルを1つ上げる包丁。スキルがない者でも料理人同様の料理を作れる。これであなたもなんちゃって料理人!
——————
「それはそうだが。使ってたら、料理スキルも覚えられるはずだぞ。この包丁はやれねぇが、スキルを得られるように、とにかく切りまくれ。スキルを覚えたら、他の調理方法もしやすくなるからな」
「マジか。それはがんばる」
ここで料理スキルを覚えるしかないよね。
どうも、僕はモンスターの種族だからか、人の姿の種族みたいに料理はできないらしい。普通の人だったら、現実同様に料理してたらスキルが得られるらしいんだけど。僕、包丁を握るのも両手だからなぁ。
初めて、この種族でのデメリットがみつかった。でも、それを上回るくらいメリットがたくさんあるから落ち込まないよ。包丁使って料理スキルを覚えさえすれば問題ないみたいだし。
「——続いては
魚を次々と取り出して、錬金術で下ごしらえをしては包丁を使って捌く。もはや流れ作業だ。こういう地道なのも結構好き。無心になれるんだよね。
結果、錬金術士レベルが2になって、錬金術基礎のスキルが錬金術初級に変わったし、料理スキルをゲットしたぞ! 魚全部捌き終わったところで、ギリギリだった。
「やっぱ、異世界からきたやつらって、技術の上達早いんだな」
「そうらしいね。それで、次はどうしたらいいの?」
料理スキルの使い方、教えてください。
「んー……刺し身ばっかりじゃ飽きるし、色んな調理法をしてみるか。料理の基礎スキルに【焼く】【煮る】【揚げる】ってあるだろ?」
「うん。でも、スキルを魚に使おうとしても発動しないよ」
「当たり前だろ。焼くにはフライパンとか網とかがいるし、それは煮たり揚げたりするときも一緒だ。料理用の道具を揃えなきゃならん」
なるほど。そういうのを買わない場合は生産施設で借りろってことなんだろうな。ここならガットさんに無料で借りられるみたいだけど。
フライパンの上に
「これ、味付けはどうなってるの?」
「基本、塩味が自動的につく。味を変えたい場合は、調味料を振ってからスキルを使うんだ。材料がたくさんある場合も同じ。全部調理道具に入れてからスキルを使う」
「わかりやすいねー。調味料揃えなきゃ」
なんか調理道具も揃えて、いろいろ作ってみたい気分。魚が焼けるにおいでテンション上がってるからかな?
「ほら、こっちには鍋があるから、煮るのと揚げるのも試してみろ。今回はここにある調味料を使っていいぞ」
「はーい、がんばります!」
たくさん料理ができる予感。リリとルトにも喜んでもらえるといいな!
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(24.05.02:〈8話〉テイマーと非テイマーの違いを明確にするため、召喚スキルの説明文を足しました。内容に大きな変更はありません)
◯NEWアイテム
【
錬金術を駆使して作られた生魚の切り身。ぷりぷりで美味しい。空腹度を10回復する。
◯NEWスキル
【料理】レベル1
料理の品質が向上する。【焼く】【煮る】【揚げる】
◯スキル変化
【錬金術基礎】→【錬金術初級】
錬金術士以外の職業分野のアイテムも錬金可能。
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