第23話 美味しいごはんは幸せ
ルトの体力と僕の魔力が限界になってきたところで、【ノース街道】でのバトルは一旦終了。
種族レベルは10、魔術士レベルは5になった。ステータスは魔力攻撃力と器用さ、素早さを上げてみたよ。次に行くときは、今日より楽にバトルできるかな。
「んー、にぎやかで良い街だよねー」
街中のざわめきが聞こえると、ノース街道から戻ってきたって実感して安らぐ。
ぽてぽてと歩いて市場を巡りながら、目を細めた。
リリとルトは現実の方で用があるらしくて、慌ただしくログアウトしていった。ということで、今は僕一人。
友だちといるのは楽しいけど、一人でこの世界を満喫するのものんびりしてて好きだな。
「今日はお金いっぱい稼げたし、奮発しちゃおうかな」
ランドさんにはもう薬草を納品してきた。たくさんお金もらって、懐あったかーい! 回復薬の取り置きもお願いしたし、次ログインした時もらいに行かないと。
ノース街道でのドロップ品も、すぐに使わなそうな物は冒険者ギルドに納品したんだ。お金とギルドポイントを稼げたよ。
「
屋台を物色しながら思い出す。
ノース街道では
その中でも一番防御力が高くて倒しにくかったのが
意外とこれぞゴーレムという感じのモンスターは出てこなかったんだよなぁ。
ノース街道の奥の方とか、サクノ山の鉱石採れるエリアで現れそうな予感がする。どうか、その時には簡単に倒せるくらい成長していますよーに!
「——あ、これなに?」
屋台のおじさんに話しかける。炭火焼きされてるのは魚かな? においが蒲焼きなんだけど! 僕、うなぎの蒲焼きが大好物だよ。
「お、ちっこいのに、めざといな!」
「小さいのは関係なくない?」
「そりゃ失礼、ガハハッ」
豪快に笑うおじさんである。ひどい。
ムスッとしてたら、「これ詫びだ」って切れ端もらえたから許そう。
「……美味しい!」
たぶんうなぎじゃないけど、蒲焼きの味。白身魚かな? 魚自体が淡白だから、タレの味が際立つね。ご飯ほしいよ……!
「だろ? この街の港で揚がった
「ご飯がほしくなる味付けだよ……」
「ご飯って米か? そりゃ、オースとの流通が回復しねぇと無理だ。あの街の米農家ども、モンスターに食われるからこっちに運びたくねぇってゴネてるらしいからなぁ」
お米は案外近場にあったらしい。この街の料理の味付けにしょう油とかの日本の調味料が使われてるから、街の雰囲気に反して西洋ものばっかりじゃないっていうのは気づいてたけど。
お米ほしいー。オースって第二の街だよね? 誰か、早くミッションクリアしてくれないかなぁ。一応、果物屋さんからミッションを受けてるとはいえ、解決法はみつけられてないし。
「そっかぁ。……とりあえず、それ五個ください!」
買い溜めです。いつかお米手に入れたら、蒲焼き丼にするんだ……!
どうせならうなぎもほしいけど。本物のうな丼食べたい! うな重は高いので、正直馴染みがないのです。
「お、ありがとな」
「この辺、うなぎはとれないの?」
「うなぎ……
「おお! 釣れるんだね。僕、それをこのタレで焼いて食べたいなぁ」
おっと、想像しただけでよだれが出そう。
おじさんはおもしろそうに笑って「釣れたら持ってこいよ。調理してやる」と言ってくれた。
これは、釣りしろということですね? やってやろうじゃん。僕は釣りマスターになってやる……!
——いや、そこまでがんばんないかもだけど。
「わかった。釣れたら持ってくるねー」
手を振ってお別れ。したいことが増えてく。今のとこ、リリとルトがいない時はフィールドに出ないつもりだし、いろいろやってみるか。
「んー……釣りして、料理もしてみたいなー。ガットさんのとこ行くかな」
たぶん生産施設でも料理できるんだろうけど、あそこお金かかるし。どうせならスキルもらえそうなガットさんのとこがいい。
釣りの成果を持って訪ねてみようかな。いきなり魚料理って難しい?
「あ、そもそも、海で釣り上げたモンスターとバトルってするものなのかな?」
おじさんの言ってた感じ、うなぎもモンスターっぽかったんだよね。あれって、釣り上げた時点でバトル勝利扱い? ミニゲームみたいな感じで釣りするのかな。
ヘルプには、釣りは海や川などの水場でできるとしか書いてないし。
魚を釣るついでに、水魔石もゲットできたらラッキーだ。
ノース街道では
むむー、と考え込みながら歩いてたら、港のとこまで来てた。最初に目にした看板がすでに懐かしいなぁ。
プレイヤーの多くは東の草原に行ってるか、ログアウトしてるみたいで、このあたりにはひと気がない。
「釣りするには、釣り竿いるじゃん……」
試しに釣りをしてみようかなって思ったところで、重大なことに気がついた。僕ってバカ。素潜りでもするつもりだったのかな?
しょうがない。今日は海沿いを散歩してからログアウトしよう。
ちょうど海に夕日が沈みかけてて綺麗。なんかデートに良さそう? 今は僕一人だけどね!
「こっちは砂浜になってるのかー」
どんどん港から南の方に進んだら、砂浜があった。そこでおじいさんが流木に座って海を眺めてる。なにやってんだろう?
「こんにちはー」
「……お? お前さんは——」
「冒険者のモモだよ。おじいさんはここでなにしてるの?」
「あー……海眺めとる」
見たまんまだった。
よく見たら、砂浜に釣り竿とバケツが置いてある。バケツの中身はたぶん海水。魚が釣れなかったのかな?
「おじいさん、お腹空いてない?」
「腹……減ったような……」
この人、大丈夫かな。とりあえず、お腹満たそうか。
ということで、さっき買ったばかりの
「うまうま」
「……懐かしい。昔はよく
「おじいさん、
実は釣り名人? すごい人と会っちゃったかも。
「そうさ。ただなぁ、あいつを釣るにはもう体力がなくてなぁ……」
なんか悲しそう。
「僕も釣ってみたいんだけど、釣るときってモンスターと戦うの?」
「お? そんなわけないだろう。陸に上がってくるモンスターじゃあるまいし。海に潜るんなら、戦うことになろうがな」
陸に上がってくる海のモンスターとは戦う可能性があるわけか。でも、釣りにバトル必須じゃなくて良かったー。
「水魔石を採れるモンスターはいる?」
「あー……この辺りで釣れるもんだと、
おじいさんは渋い顔をしてる。水魔石とるのは大変なんだねぇ。でも、とってみたいし、釣る方法聞いてみようかな。さすがに海潜るのは今無理。いつか泳ぐスキル手に入ったらがんばるかもしれないけど。
「——お前さん、随分興味津々だなぁ。釣り、好きなのか?」
「したことないけど、好きになりたい」
のんびり釣りして過ごすのも楽しそうだ。それで釣れたのを美味しく料理すれば、お腹も満たされる!
「そうかそうか。そりゃいいことだ」
おじいさんはなんだか嬉しそう。頷いた後、にやりと笑った。
「——それなら、わしが釣りを教えてやろうか?」
「え、いいの!?」
正直そう言ってもらえるのを狙ってました。てへぺろ。
「おうよ。わしの使い古しだがこれをやる。釣りしたいときは、釣り餌を買ってきて声をかけてくれ。わしは大体いつもここにいるからな。釣り餌は港傍の【釣具屋】で買えるぞ」
おじいさんに釣り竿と釣り糸をもらった。見た目古くてボロいけど、買わなくて済んだからラッキー!
〈ミッション『釣り名人への道』が開始しました。事前報酬として【ボロい釣り竿】と【細い釣り糸】を入手しました〉
ミッション発生! 確認してみよう。
——モンスターを釣ったら、
今の僕は【釣り初心者】ってなってる。釣り名人、なりたいなー!
「わかったよ、ありがとー! 僕、がんばるね!」
やる気いっぱい。アリスちゃんへのプレゼント作りと並行して釣りもがんばろう。
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◯NEWモンスター
【
土属性モンスター。毛皮の外側に土塊でできた歪な鎧を纏った犬のような姿。聖なる地を守る番犬。体当たりと強力な噛みつき攻撃をしてくる。得意属性【風】苦手属性【水】
【
土属性モンスター。土でできた馬のような姿。聖なる地を守る者。蹴り技と
◯NEWアイテム
【
港でとれる
◯モンスター情報
【
海でまれに釣れる。美味しく高価な白身魚系モンスター。
【
海で釣れるモンスター。中に水魔石が存在している場合がある。釣るときに10%の確率で糸が噛み切られるほど凶暴。
◯NEWシステム
【釣り名人への道】
モンスターを釣ると、
最初のランクは釣り初心者。最高ランクは釣り名人。
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