第22話 協力プレイ最高

 ルトが地を蹴って跳ぶ。気迫のこもった眼差しが、埴輪人形ハニワーレムを射竦めた。


「——これで、終わりだーっ!」


 埴輪人形ハニワーレムの頭上に振り下ろされた剣によって、泥が四方八方に飛び散る。それと同時に、光が放たれた。


埴輪人形ハニワーレムを倒しました。経験値と【粘土】を入手しました〉

〈種族レベルが8になりました。水魔術がレベル2になりました。水の槍ウォーターランスを覚えました〉


「ルト、お疲れー。はい、回復ヒール

「やっと終わったね。りんご食べる?」


 肩で荒い息をしてるルトに近づく。りんごは断られた。美味しいのに。


 最後の一撃はルトにとられちゃったけど、僕も水魔術を頑張ったんだよ。おかげでレベルが上がったみたい。


 新たに覚えた水の槍ウォーターランスは、水の玉ウォーターボールより攻撃力大きいみたいだし、ノース街道で大活躍しそう。


「はぁはぁ……種族レベルが上がったみたいだ。攻撃力にSP振っとこう」

「私も上がったよ。うーん……私も攻撃力かな」


 二人はステータス操作中。僕も魔力攻撃力にSPを振っとこうかな。


 埴輪人形ハニワーレムは、間抜けな見た目に反して、倒すのがほんと大変だった。魔術何発当てたっけ?


 動きが遅いから必ず当たるんだけど、防御力の高さがひどすぎる。

 体力バーが危険水域(赤表示)になったところで、周囲から土を集めて盾にしだしたから、さらに倒すのが大変になった。


 というわけで、攻撃力上げて、もっとスピーディーに倒せるようになりたいんだよ。


「ルト、体力はどんな感じ?」

「リリの回復あったから、問題はねぇな」

「そっか。僕も魔力は自動回復あるから余裕あるし、バトル続ける感じでいいよね?」


 二人から頷きが返ってきた。

 ノース街道は推奨される種族レベルが高いせいか、経験値がおいしいみたいなんだ。これはここでレベリングするしかない。パーティー組んでる間に、なんとかソロで行けるように成長しときたいし。


「それじゃ、行くか」


 息が整わせたルトが、再び歩き始める。

 さてさて、お次のモンスターはどんなのかな? できたら魔石もドロップすると良いんだけど。


 さほど歩かない内に、気配察知に何かが引っかかった。


「お——新モンスター発見!」

「ゴーレム系じゃないのか……」


 ルトが意外そうにするのも当然。現れたのは、モグラみたいなモンスターだった。土と関わりがある生き物ではあるけど。


「——うおっ!?」

「はうあっ」

「きゃっ」


 さっきの埴輪人形ハニワーレムが遅かったから油断してたら、モンスターが突進してきた。

 咄嗟にリリを庇って攻撃を受けたけど、ちょっと後退しちゃう。リリにぶつかって申し訳ない。


回復ヒール!」

「くっそ、こいつ、ちょこまかと動きやがって!」


 しっかりダメージを食らってたルトをリリが即座に回復させる。ルトはモンスターを追って剣を振りまくってた。なんかこういうゲームあったよね。モグラ叩き?


 ルトがモンスターの注意を引きつけてくれてる間に鑑定しよう。


——————

突進土竜ラッシュモール

 土属性モンスター。聖なる地に踏み込むものをどこまでも追いかけ葬る。素早い動きが特徴。土でできた槍を用いて攻撃する。得意属性【風】苦手属性【水】

『地の果まで追ってやる……!』

——————


「あ、これ、土の槍を使ってくるみたいだよ!」


 教えながら水の槍ウォーターランスの準備。そして、突進土竜ラッシュモールの進行方向に放つ。


 ——避けられたぁ! これ、一発の範囲が広い水の玉ウォーターボールの方が当たりやすいかも。


「うおっ、と、了解! リリ、足止めできねぇか!?」


 地面からいきなり飛び出してきた土の槍をかろうじて避けたルトが叫ぶ。足止めってなんだろう?


「はーい。——木の罠ウッドトラップ!」


 リリが杖を横に一閃。次の瞬間には、突進土竜ラッシュモールを絡めとるように地面から蔦が生えた。


「すごーい! それ木魔術?」

「そうなの。ルトのサポートのために木魔術を育ててるんだよ」


 誇らしげに教えてもらった。木魔術がレベル2になると覚えられるスキルらしい。いいね、僕も木魔術をもっと育てようかな。


「これでいける!」


 暴れてる突進土竜ラッシュモールは今にも蔦から抜け出しそうだけど、その頭上からルトの剣が振り下ろされたら、体力バーが半分くらい減った。埴輪人形ハニワーレムと違って、防御力は高くなさそうだ。


「じゃあ、僕も一発」


 今度こそ水の槍ウォーターランスを当てる。一気に体力バーが弾けとんだ。

 突進土竜ラッシュモールへの最後の一撃はもらったぞー。やったね。


突進土竜ラッシュモールを倒しました。経験値と【鉄のツルハシ】【突進土竜ラッシュモールの皮】を入手しました〉


 ……ツルハシ? このモグラ、採掘でもしてたんです?


「ツルハシってなんだよ……」

「採掘の時に使えるとかかなぁ?」


 ルトとリリも戸惑ってる。

 採掘といえば、たしかレナードさんが、ノース街道のサクノ山の方でシルバーと石炭が採れるって言ってたな。

 つまり、突進土竜ラッシュモールを倒して、もらったツルハシで採掘しろってこと?


 僕がその情報を教えたら、ルトとリリは納得した表情になった。


「採掘できる場所があるって話は初耳だけど、ツルハシがもらえる理由は納得できた。これ、耐久性が10って示されてるから消耗品だろ。採掘するときには、たくさん必要なのかもしれねぇな」

「私、採掘のスキルとってないなぁ。でも鉱石は惹かれる。宝石とかあるのかな。服の装飾に使える?」


 リリは裁縫士らしい興味を示してる。服に宝石を飾りたいって、女の子だなぁ。


金剛石ダイヤモンドなら錬金術で作れるよ」

「欲しい!」


 キラキラした目でねだられた。正直悪い気はしないけど、ルトに睨まれてるからニヤけちゃダメだね。


「石炭か木炭が必要なんだよー」

「つまり掘れってことか」


 全員でサクノ山の方を眺める。

 掘りにいっちゃう? 僕的にはすごくありがたいけど。


「さすがに今日は無理じゃない? あまり街から離れ過ぎたら、死に戻りしちゃうかも」


 リリに言われてルトを見る。体力バーが完全回復してない。

 回復ヒールを重ねがけしてると、ちょっとずつ効きにくくなっちゃうんだって。だから、時々回復薬を使う必要があるらしいんだけど、それが今は希少だからねぇ。


「……じゃあ、今回はレベリングして、今後回復薬を手に入れられたら、採掘を目指してみるか」

「そうしよう!」


 なるほど。安全第一だね。そうなると、僕は一緒に行けない? でも、この二人と行った方が、絶対安全だよなぁ……。


「ねぇ。僕が回復薬買ってくるから、次回もパーティー組んで、一緒に採掘に行きたいな!」


 ランドさんに薬草を渡したら、優先的に回復薬買えることになってるし、僕は役に立つと思うんだけど。


 ドキドキしながら二人を見上げたら、一瞬きょとんとされた。そのあと二人が笑い出す。


「もちろん! というか、最初からそのつもりだったんだけど。そういえばこのパーティー、臨時だったね」

「俺も三人で行くつもりで話してた。回復薬買ってきてくれんのは、正直すげぇありがたい。金はきちんと払うからな」


 なんだぁ、僕が変なとこで遠慮しちゃった感じ? 気恥ずかしいけど、嬉しいな。この三人でバトルするの楽しいし。


「りょ! たくさん買ってくるよ」


 手を上げて答えたら、ルトが「よろしく」とクールな感じで笑ってくれた。僕たち、仲良くなってきた気がするね。


「——さて、それじゃ、レベリング再開するか。ついでにツルハシ集めるぞ」

「はーい。魔石もドロップするといいね」

「がんばるー。魔石ドロップしたら買い取るよ。錬金術で魔石を使うレシピ、多いんだ」

「そうなんだ! それなら、お金の代わりに金剛石ダイヤモンド作ってくれたらいいよ」

「それ、採掘できないと支払えないじゃん」

「後払いオッケーってこと!」


 おしゃべりしながらモンスター探し——するまでもなく現れた。そのぼーっとした顔は、埴輪人形ハニワーレムだな!


「最初より早く倒すぞ!」


 気合いを入れて駆け出すルトを追うように魔術を放つ。水魔術が結構育ちそうだな!



******


(24.04.27:前回【北街道】だった名称を【ノース街道】に変更しております)


◯NEWアイテム

【粘土】レア度☆

 生産用アイテム。粘性のある土の塊。


【鉄のツルハシ】レア度☆

 モンスターからドロップするツルハシ。採掘の際に使うと、速度・量・品質が少し上がりやすくなる。


突進土竜ラッシュモールの皮】☆

 茶色の皮。鞣して革にすると、生産用アイテムとして使用可能。耐久性が優れている。


◯スキル変化

【水魔術】レベル2——水の槍ウォーターランス

 敵一体に中程度の攻撃を与える。貫通力が高い。


◯NEWモンスター

突進土竜ラッシュモール

 土属性モンスター。聖なる地に踏み込むものをどこまでも追いかけ葬る。素早い動きが特徴。土の槍を用いて攻撃する。得意属性【風】苦手属性【水】

『地の果まで追ってやる……!』


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