第21話 パーティーっていいね
リリとルトと会話しながら街を歩き、北門にやって来ました。ここまで来るの初めてだなー。
市場で買った
塩こしょうが効いててうまうま。リリとルトに「共食い……?」と引かれたのは絶許。僕は
「……通行証をご提示ください。パーティーにつき一枚必要です」
門番さんがなんともいえない表情で僕を見てから言った。ご飯食べながら通ろうとするのはダメなんです? もうすぐ食べ終わるから待ってね。
「これでいいか」
「はい、確かに。どうぞお通りください」
ルトが動いてくれたから、すんなり通れた。いざ、新たな冒険の地へ! って感じだね。
「モモ、食べ終わった?」
「うん。いつでもバトルできるよー」
にこにこしながら聞いてくれるリリは優しいなぁ。ルトは呆れた感じで僕を見てるよ? まぁ、僕の緊張感のなさが原因だろうけど。
ということで、ここからは張り切っていこう。天の杖もしっかり手に装備して、バトルの準備は万端だよ。
前衛はルト、後衛に僕。リリは僕たちの間にいる。
僕の防御力が高いことを話したけど、ルトは剣術スキル高めたいって、前衛をしたがったんだ。僕は最後尾から不意打ちを警戒する感じ。背後から襲われるのも困るもんね。
〈新しいフィールド【ノース街道】に入りました〉
ここの名前、【ノース街道】なんだ。そのまんまだなー。
北門から緩やかにカーブする感じで道が続いてる。両端には大きな岩が無秩序に並んでる草原。草原の先は、西側は海で、東側はサクノ山。
この道、サクノ山の裾野をぐるっと回る感じで続いてるんだろうな。北門と南門、どっちから出ても第二の街【オース】に着くってカミラが言ってたし。
「あ、全体回復使っとく? 五分間持続効果があるらしいよ」
「モモはもうそんな魔術を覚えたの? 治癒士の私がまだなのに」
「種族固有スキルってやつらしいよ」
「ああ、レベル7で覚えるやつか」
種族固有スキルはレベル7で覚えるらしい。僕、一気に2レベル上がったから、どっちかなぁって思ってたんだよ。
「人間の固有スキルは【回避】だったよ」
「羨ま。僕、そのスキルほしい」
「逃げ回ってりゃ手に入れられんじゃないか? お前の方が良いスキルだろ。ってことで、使ってくれ」
「りょ」
ルトが言ってた返事を真似てみた。短いと楽でいいね。
すぐさまスキルを使う。これ初めてなんだけど、どんな感じかな?
「——【
ふわっとした柔らかな白い光が僕たちを取り巻いた。一瞬で消えたけど、なんだか体が軽くなった気がする。キラキラって効果音がついてそうな演出だ。
「これいい! もしかして私いらないんじゃない?」
「効果は微回復だよ。リリの回復は重要!」
リリがちょっとむくれてる。でも、バトルをそんなに甘く見ちゃいけないよ。
ここのモンスターってなんだろう?
土属性というと……ゴーレムとかかな。そっち系のイメージある。防御力高いっていうのもさ。
「おしゃべりはいいけど、警戒してろよ」
油断なく剣を構えてるルトの一言。確かにその通りです。
僕も周囲のモンスターを探そう。それだけじゃなくて、薬草も——。
「あった!」
「なにが」
「薬草だよ」
「……そうかよ」
ルトの気が抜けたみたい。モンスターじゃなくてごめんね?
「モモ、採集する?」
「リリも欲しいんだよね?」
「うん、ここたくさんあるみたいだから、手分けしようね」
「だから、警戒を忘れるなって」
ルトに呆れられつつも、リリと一緒に採集の時間。
いやー、まだ北門からあんまり離れてないのに、薬草たくさんで嬉しいね。ここのフィールドに来れるプレイヤーは少ないのかな。
……少なそうだな。今も視界に他のプレイヤーが入ってこないし。
「攻略組って薬草採らないのかな?」
「採ってもすぐ生えるんじゃないか? 東の草原だって、あそこまでプレイヤーがいなかったら、普通に薬草の採集もできるだろ」
攻略組っていうのは、強敵とのバトルを楽しむために、いち早く新しいフィールドを目指してるプレイヤーのこと。課金ガチ勢とも言う。
このゲーム、ステータスに課金できないから、あまりリアルマネーは関係ないけど。装備とかは買えるのかな? 今のところ、はじまりの街で買えるものしか手に入れられないらしいけどね。
「なんにしても、薬草たくさんでうまうま」
「でも、冒険者ギルドの薬草採集依頼って、一日の納品上限数あるからあんまりお金にならないよね。塵も積もれば山となるってことで受けてるけど」
え? 嘘やん。
自分で確認してみたら、確かに冒険者ギルドから出されてる依頼は、『薬草の束の納品(一日十個まで)』ってなってた。
納品制限されてても、東の草原の薬草は枯渇してるのか……。プレイヤーが多すぎるんだよ。運営側の採算を考えたら、これくらいたくさんのプレイヤーは必要なんだろうけど。
「……僕は独自ルートで無制限で納品できるよ」
ランドさん、納品した分は全部買い取りしてくれるはず。これって、薬草が採れるフィールドまで来れる能力あったらラッキーな状況だよね。
「アリスちゃん経由で直接薬士さんから依頼受けてるんだっけ? やっぱりシークレットミッション探してみるべきかも……」
「そうだな。思ったより有用そうだ」
リリとルトが考え込んでる。
その間に僕はちゃちゃっと採集しちゃいますね。称号効果とスキルレベル2の影響か、高品質のもたまに採れるからラッキー。
リリはしばらく納品できる分を採集したから、もういいって。残りは全部僕がいただきます。
「——あ、来たぞ!」
「おお……あれは……」
ルトの声かけに、急いで戦闘態勢をとる。岩陰から大きな土人形みたいなのが出てきてた。ここまで近づかれるまで気づかなかったよ。岩の裏で息を潜めてたのかな?
というか、あの姿って——。
「——はにわ?」
「埴輪だよね」
「間抜けな顔してるな……」
気が抜けます。
ぽっかり口が開いた感じの、ぬぼーっとした顔の土人形。どう見てもはにわです。
近づいてくる速度は遅いみたいなんで、落ち着いて鑑定しましょ。そうしましょ。
——————
【
土属性モンスター。古き神聖なる地を守る番人。防御力、物理耐性が高い。貫通攻撃は効果抜群。得意属性【風】苦手属性【水】。
『水に濡れたら力がでないよ……』
——————
「一言コメント、それでいいんか」
思わずツッコミを入れた。もっと別に説明することあるよね? わかりやすいけどさ。
「なに?」
「鑑定の結果だよー。こいつは、防御力と物理耐性が高いけど、貫通攻撃と水魔術が効果抜群だぁ!」
鑑定ってみんなが持ってるスキルじゃなかったね。ということで教えてあげたら、ルトとリリがなるほど、と頷いた。役に立ちそうでなによりです。
「貫通攻撃は持ってないな。剣突き刺したらいいのか?」
「西洋剣って殴るイメージじゃないの」
現実知識がどこまで反映されるかわかんないけど。剣は殴って、刀は切るイメージ。
ルトがしょっぱい顔で睨んできたので、僕の予想は外れてないっぽい。
「……とりあえず、アイツ遅いみたいだから先制する」
「援護は任せろー」
「がんばってね」
剣を構えて地面を蹴るルトの背中を見守りつつ、水魔術の準備。僕はまだ
「回復はまだ続きそう?」
「あ、かけ直す」
ちょうど
ルトの剣はしっかり
「
リリは治癒士の役割に専念した方が良さそうだ。僕は魔術で攻撃しまーす。
「ちゃぷちゃぷばっしゃーん——
この詠唱、どうにかしてよ。パーティーでいると、余計に恥ずかしい……。
でも、効果は抜群だったみたいで嬉しい。
「うげっ、泥跳ねた……」
「実際に汚れるわけじゃないんだし、気にしないでがんばってー」
ルトって潔癖症? 剣で殴った途端、跳ね返ってきた泥に顔を顰めてる。リリは気にせず応援してるけど。
あ、
******
(24.04.27:【北街道】を【ノース街道】に変更いたしました)
◯NEWエリア
【ノース街道】推奨種族レベル10以上
はじまりの街の北側から延びる街道。サクノ山の裾野の北側にある。
岩がある草原が主なフィールド。土属性で防御力が高いモンスターが現れることが多い。
◯NEWモンスター
【
土属性モンスター。古き神聖なる地を守る番人。防御力、物理耐性が高い。貫通攻撃は効果抜群。得意属性【風】苦手属性【水】。
『水に濡れたら力がでないよ……』
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