第14話 キミに決めた!

 薬店を出たところで、今からすることを整理。


①装備屋さんで武器や防具を探す。

②錬金術士に弟子入りする。

➂【酔いどれ酒場】に肉の納品をする。


 大まかにはこの三つだよね。

 納品依頼を受けてるから、また薬草採集に行きたいし、ステータス向上の効果を見るためにもバトルしたいなって気持ちもあるけど。


「錬金術士への弟子入りは時間がかかりそうだし、後回しかな」


 一回ログアウトした後にしよう。行ったら、チェーンミッションが始まる可能性あるし。


 ——というわけで、まず行くのは装備屋さんです!

 ランドさんにもらった地図は即座にマップに反映されてた。てくてく歩いて向かう。途中飛翔フライを使って楽してみたけど。スキルのレベル上げも兼ねてるんだよ。


「お、ここかー」


 見つけたのは大通りからだいぶ裏に入ったところにあるお店。地元の人しか来ないんだろうなーって場所だ。


 シークレットエリアを進む最大のメリットは、たくさんのプレイヤーたちに煩わされないってことだよね。

 フレンドを作りたい気持ちもあるけど、今は面倒くささが勝ってます。冒険者ギルドで蹴られたのがトラウマになってるかも。


「こんにちは」

「なんじゃ。面妖なやつだな」

「面妖とか言われたの初めてだ……」


 僕の今の見た目はモンスターだから、間違ってはない評価だけどね。可愛いのに……。

 店内にいたのはドワーフっぽい人だった。低身長で筋骨隆々。見るからに強そうだけど、生産特化なのかな?


「——武器とか並んでないの?」


 首を傾げる。店内はガランとしてる。商品がないんだ。


「ここは客にあったものを見せるのがルールじゃ。量産品が欲しけりゃ、表通りの店に行きな」

「そういうことか。とりあえず見せてもらいたいなー。お金に限りがあるから、買えるかはわかんないんだけど」


 とりあえず店主がいるカウンターに近づく。

 ドワーフも低めの身長だから、普通より視線が合いやすくていいね。僕、高いところから見下ろされてばっかりなんだもん。


「……紹介状がねぇと、駄目だ」

「これでいい?」


 ランドさんに書いてもらった紹介状を渡す。それを確認した店主は静かに頷いた。


「おめぇ、ランドの知り合いか。それなら見せてやらんとな。——ワシはここの店主ドワッジだ。鍛冶をしてる。うちには木工士と裁縫士もいるから、武器・防具全般を見せられるぞ」

「やった! どっちも見たいな。ドワッジさん、よろしくー」


 ドワッジさんは無言で頷いて、僕を上から下まで眺めた後、店の奥に消えていった。

 なんか職人肌って感じ。期待できるなー。


 とりあえずカウンター傍の椅子に座って待つことしばらく。戻ってきたドワッジさんがカウンターに商品を並べ始める。


「おめぇ、魔術士のようだな。武器として杖を三種類持ってきた。人間用の防具は着れないだろうから、アクセサリーを防具に使うといい。これは四種類ある」


 やっぱり人間とは装備できるものが違うのか。初期装備の服をもらえてなかったから、なんとなくわかってたけど。これは、装備できるものを探すの苦労しそうだな。


 そんなことを考えながら、商品を観察。初めて全鑑定のスキルが役に立つね。

 ——これまで存在を忘れてたとか、そんなことはないんだよ。……嘘です。ど忘れしてました。


「杖は【火の杖】【水の杖】【天の杖】かー」


 それぞれ杖の先端に赤い石、青い石、無色透明の石がついてる。火魔石、水魔石、光魔石だって。魔石ってこういう感じに使えるのか。


【火の杖】:火魔術の効果増大。魔力攻撃力+4。

【水の杖】:水魔術の効果増大。魔力攻撃力+4。

【天の杖】:バフ・デバフ・回復系のスキルの効果が増大。魔力攻撃力+3、精神力+2。


 どれも便利そうだね。

 たぶん僕のスキルの中で、火魔術と水魔術の熟練度が高いんだろうな。あと、【天からの祝福アンジュブレス】スキルの影響で、天の杖が提示されたのかも。


「ちなみにおいくら?」

「火と水は三千リョウ、天は五千リョウじゃ」

「……高い」


 さすが武器。いいお値段がしますね! 薬草で稼げる値段だけども……まだ即決で払えるレベルじゃないなぁ。アクセサリーも欲しいし。


「これは20レベルまで使える武器じゃ。初心者の装備としては良いもんじゃぞ」


 長く使えるってことね。

 このゲーム、種族レベルで装備できるものが変わるらしいんだよ。初期装備は10レベルまでしか使えないんだって。


「——しかも、使い終えた後も、アイテムを積み増して作り変えたら、その先のレベルまで使える可能性があるんじゃ」

「それ、新しく買うよりお安くなるってこと?」

「必要な材料を持ち込んだら、相当安くなる。作り変えに失敗したら、追加の材料も含めてゴミになるがな」


 ……リスクはあるけど、お得な気がする。

 制限レベルまで武器を使ったら、後は売りに出すしかないもんな。しかも、その時には低レベル用の武器を使うプレイヤーが減ってて、安くしても売れない可能性あるし。


 高レベル用の武器は高値になりそうだから、自分で材料とってきて、元の武器をバージョンアップしてもらえたら最高だよね。


「……そうなると、長く使えそうな武器がいいな」


 魔術は特定の属性を特化させる予定はまだないし、珍しい感じの【天の杖】に一番惹かれる。でも、五千リョウかー。所持金の大半が吹っ飛んじゃうな。


「——先にアクセサリーを確認しとこ」

「おめぇは人間より装備できるアイテム数が多いようだから、組み合わせて選ぶといいぞ」

「そうなんだ?」


 ドワッジさんが言うには、低レベルの人系の種族が装備できるアクセサリーは一つだけらしい。

 それに対して僕は五つ。ヘッドドレスとイヤリング、ネックレス、ブレスレット、アンクレットだ。装備での帳尻をあわせてるんだろうな。


 提示されたアクセサリーは四つ。


【花冠】:ヘッドドレス。花で編まれた冠。木属性の攻撃で受けるダメージ量が減少する。防御力+3。


【爽風の耳飾り】:風魔石がついたイヤリング。風属性の攻撃で受けるダメージ量が減少する。素早さ+4。


【黄色のスカーフ】:地属性が付与された布で作られている。自由な結び方が可能。地属性の攻撃で受けるダメージ量が減少する。精神力+4。


【対衝撃用アンクレット】:無骨な黒鉄でつくられたアンクレット。物理攻撃で受けるダメージ量が減少する。攻撃を受けても後退しにくくなる。防御力+5。


「——めっちゃ、【対衝撃用アンクレット】に惹かれるなー」


 これがあれば、プレイヤーにぶつかられてもふっ飛ばされる確率減るんじゃない? 草原狼プレアリーウルフ戦では、飛ばされるのも役に立ったけどさぁ。


「ワシが作ったやつじゃな。二千リョウじゃぞ」

「うぅ……武器もアクセサリーも欲しい……」


 僕の現所持金は七千六百リョウだから、買えるんだよなー。ほぼなくなるけど!


 この後肉を納品してお金が入ることを考えたら、買っておいても良さそう?

 ……いつ買えなくなるかわかんないもんね。人生は一期一会。買いたいと思った時が買い時なんだ!


「——決めた。【天の杖】と【対衝撃用アンクレット】ちょうだい!」

「ほらよ。アンクレットの見た目を変更したかったら千リョウで請け負う。あまり大きな変更はできねぇがな。錬金術士なら自力でもできるようになるだろうが」


 お? 錬金術士って、そういうことも可能なのか。

 確かに無骨な見た目だし、気が向いたら変えてみようかな。


「わかった。今はお金もないし、このままでいいや。良い武器とアクセサリー、ありがとう」


 見習い魔術士の杖をしまって、買ったばかりの天の杖を装備。アクセサリーもつけて、なんか安定感が増したような気がする。気のせいかもだけど。

 ほかのアクセサリーは別の機会にしよう。


 着々と冒険者としてがんばってく準備が整っていくなー。次のバトルが楽しみ!



******


◯現在の装備

武器

【天の杖】

 バフ・デバフ・回復系のスキルの効果が増大。魔力攻撃力+3、精神力+2。


アクセサリー

・ブレスレット【防御力+1】

 防御力が1増える。


・アンクレット【対衝撃用アンクレット】

 無骨な黒鉄でつくられたアンクレット。物理攻撃で受けるダメージ量が減少する。攻撃を受けても後退しにくくなる。防御力+5。


******

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る