第13話 繋がりは大切にしよう

 スキルの確認が終わったら、ステータス操作の時間だよ。

 今のステータスはこうだ。


——————


【ステータス】

体力:27

魔力:47

物理攻撃力:10

魔力攻撃力:14

防御力:30

器用さ:13

精神力:14

素早さ:15

幸運値:17


SP:6


——————


 ここからどう変えるか……。


「んー、草原狼プレアリーウルフ戦では攻撃力が足りなかったんだよなぁ」


 ダメージはほとんどくらわなかったけど、倒すのがなかなか大変だったのは苦い記憶。何発魔術を放ったかなぁ。


 草原狼プレアリーウルフと戦うとなると、仲間を呼ばれるよりも早く倒しきるのが重要だと思うんだよね。

 そのためには攻撃力を上げるべきなんだろうな。


「——よし。攻撃力に全振りしちゃおう!」


 草原狼プレアリーウルフを倒せるようになったら、効率的にレベリングできそうだからね。

 目指せ、ソロで草原狼プレアリーウルフに完勝!


 というわけで、操作後のステータスはこうなりました。


——————


モモ

種族:天兎アンジュラパ(7)

職業:魔術師(3)、錬金術士(1)


【ステータス】

体力:27

魔力:47

物理攻撃力:10

魔力攻撃力:20(6up)

防御力:30

器用さ:13

精神力:14

素早さ:15

幸運値:17


SP:0


——————


 ふはは、たぶん強くなったぞー!

 こうなると、バトルして確かめたくなるなぁ。ゲーム始める前は、あんまりバトルに乗り気じゃなかったのに。


 また【東の草原】に行っちゃう? でも、プレイヤー多そうだよなぁ。モンスターの取り合いになっちゃうかも。


 それだけならまだいいけど、僕が敵に間違えられたら面倒くさいな。冒険者ギルドで蹴られてわかったけど、PvP要素がないからプレイヤーからのダメージを負わなくても、衝撃はあるっぽいから。


「あ、薬草納品しないと……」


 とりあえず冒険者ギルドから出されてる依頼を確認ついでにミッションも見てたら、チェーンミッションの存在を思い出した。


 ランドさんに薬草の納品をするだけ。アイテムボックスには百以上の薬草がある。これは早めに渡すべきでは? そうしたら、ランドさんも回復薬の販売を再開できるもんね。

 それに、チェーンミッションがどうなるかも気になるし。


「——うん。行こう」


 さっき別れたばっかりじゃん、って言われるかな。どんな反応されるか楽しみ!


 受付にいたジルに、「アリスちゃんのお店に出かけてくるよー」って言ったら、不思議そうな顔をされてしまった。


「今日の薬屋さんは、もう閉まっているみたいだよ? アリスと遊ぶために行くの?」

「ううん。ランドさんに頼まれてたことがあったから、その報告に行くんだ。薬草の納品!」

「ああ……モモは冒険者だったね」


 忘れられてた疑惑。さっき教えたばっかりなのにぃ。僕の見た目が可愛いから冒険者っぽくないのかな。……それなら忘れてても許そう。可愛いは正義だもん!


「——冒険者さんに、私からもお願いしていい?」

「え、なんの?」


 もしかして、ミッション発生かな?


「宿の隣で父が酒場をしてるんだけど、お肉が足りないらしいの。何かお肉を納品してあげてくれない?」

「酒場さんやってるのかー。お肉はたくさんあるからいいよ!」

「本当に!? ありがとう。父に言っておくから、直接納品してあげて。普段より高値で買い取ってくれるはずよ」


 ジルがにこにこ笑う。僕もにこにこ。

 ジルパパは必要なお肉を手に入れられて、僕は相場より高値で売れる。これぞWin−Winですな!


「じゃあ、アリスちゃんのとこ行ってから酒場に寄るから」

「うん、お願いね!」


 では出発——と思ったら、アナウンスがあった。


〈シークレットミッション『酔いどれ酒場の危機を救え』が開始しました〉


 やっぱりミッションだった。それにしても、これもシークレット? ここが、普通なら立ち入れないエリアだからかな。


「……酔いどれ酒場、ものすごく惹かれる響き」


 ゲーム内での飲酒ってできるんだっけ? どんなお酒があるのかなー。おつまみも食べてみたいな。


「——夜ご飯は酒場飯で決定! というわけで、お金を稼ぐぞー」


 宿泊料でちょっと使っちゃったし、所持金増やさねば。





 というわけで、やって来ました、本日二度目のアリスちゃんちの薬店。正式な店名は【戦う薬屋】らしい。


 ……誰が戦うの? ランドさんが戦うって言われても信じちゃうよ。だってあの人、僕にダメージを与えられる人だもん。絶対強いでしょ。

 そうなると、自分で薬草採集に行けばいいってことになると思うんだけど。


 表の出入り口は相変わらず閉まっていたので、裏口から失礼しまーす。

 トントンってノックしたら、ランドさんが開けてくれた。


「お、来たのか」

「ども。薬草の納品に来たよ」

「早いな」


 驚かれた。早いけどたくさん採ってきたよ。

 中に招かれて、調薬室ってところに案内された。そこにある大きなテーブルに出してくれ、だってさ。


 アイテムボックスから取り出して渡す。

 品質は低・普通がほとんど。ちょっとだけ高品質もある。……もっと採ってきた方が良かったかな?


「随分とたくさん採ってきたな」

「こんなにいらなかった?」

「いや、すぐ使うからありがたい」


 ニヤッと笑うランドさんはご満悦そう。「最低品質が一つもない。採集が上手いんだな」と感心されたけど、すべてスキルのおかげです。


「——一束あたり、低品質が五十リョウ、普通品質が七十リョウ、高品質が百リョウでどうだ?」

「相場がわかんないんだけど、高くしてくれてるんだよね?」

「そうだな。一割増しくらいにしてるが……」


 なるほど。低品質は四十五リョウくらいが相場ってことね。微々たる割増であっても、塵も積もれば山となるで、結構利益大きそう。数はそれなりにあるから。


「うん、それでいいよ!」

「ありがとな! 低品質五十七個、普通品質四十五個、高品質七個で、締めて六千七百リョウだ」

「おお、大金だ!」


 初期の所持金が千リョウだったんだから、すごい大金持ちになった気分。

 宿の一泊の料金(百リョウ)を考えたら、薬草ってお高いよね。ゲームシステム的には順当なんだろうけど。

 これ、装備とかもお高い感じかな? 初期装備以外もほしいよー。


〈チェーンミッション3『ランドからの薬草採集の依頼』をクリアしました〉


 あ、ミッションがクリアになった。追加報酬はなしかー。そんなもんだよね。お金だけで十分です。


「——この辺でいい武器屋さんとか防具屋さんってある?」

「早速装備に使うのか。冒険者としてやってくなら、装備をケチったらダメだからな。いいところを教えてやろう。定住者以外は紹介状なしだと行けない場所なんだが——」


 ラッキーなことに、ランドさんがお店を教えてくれた。これも、普通は立ち入れないエリアにあるお店みたい。アリスちゃんの地図に情報がなかったのは、子どもが行くところじゃないからかな。


「ありがとう。行ってくるね」

「待て待て、そう焦るな」


 早速教えてもらったところに行こうと思ったら、引き止められてしまった。


「なぁに?」

「採集してきてくれた薬草の質が良かったし、これからも納品を継続してほしい。暫くは回復薬の需要が高そうだから、今回の値付けで買い取るぞ」


 めっちゃいい条件じゃん。それに、ここでランドさんとの親交を深められるのは、メリットがありそう。


「……うーん。調薬技術、教えてもらえる?」


 ちょっと渋ってる感じで交渉してみる。ダメならダメで、出直すけど。


「調薬か……。モモは薬士じゃないだろう?」

「うん。でも、錬金術士だから、オールマイティーに生産できるって聞いたよ」

「ああ、それはそうなんだが。たぶん錬金術のスキルを上げてからじゃないと、俺から調薬を学んでも身にならないと思う」


 最初に頼んだ時より、取得条件を詳しく教えてもらえた。

 そっか、まずは本職の技術を高めないといけないのか。それなら、生産施設で錬金術使ってみるかな。


 生産施設っていうのは、街中で誰でも使えるようになってる生産用の施設のことだよ。利用代金がいるらしいけど、生産用のアイテムを施設内で買うこともできるんだって。


「——モモにやる気があるなら、知り合いの錬金術士を紹介しようか? あいつ、紹介状なしには弟子をとらない主義だから、今もまだ暇だろ」

「え、ほんと!? すごくありがたいです! じゃあ、薬草納品依頼を受けるね」


 やったー! 飛び上がって喜んでたら、ランドさんも楽しそうにしてた。

 装備のお店と錬金術士さんへの紹介状を書いてもらう。錬金術士さんもシークレットエリアに住んでる人みたい。


〈チェーンミッション4『ランドへの薬草の継続納品』が開始しました〉


 用事が済んだらログアウトしようと思ってたけど、どんどんしたいこと増えていくね。やめ時がなくなるの、ゲームであるあるだよなぁ。


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