第12話 成長特典はうまうま
アナウンスはまだ終わってなかった。
〈種族レベルが上がったため、種族固有スキル【
ほえ? 種族固有スキルってなに?
〈戦闘中の行動により、スキル【決死の覚悟】【見切り】を獲得しました〉
次々くる! それだけ
初心者の最初の難関なのかも。僕はカミラにほぼおんぶに抱っこだったもんな。
〈火魔術がレベル2になりました。
使える魔術が増えた! でも、火魔術だけ? 確かにわかりやすく効果が見えて強そうに感じるから、
〈
じ、地味な変化……。ありがたいけどね。効果がきれそうになる度に、一回着地してかけ直すの大変だし。
アナウンスはこれで終わったみたい。
内容を確認したいけど、ここは
「モモ。戦闘指南は終わりでいい?」
「うん、ありがとう。すごく助かりました」
ペコリ、と頭を下げる。
本当にお世話になりました。できたらこれからも仲良くしてほしいなー?
ちょっと窺う感じでカミラを見る。苦笑された。
「聞きたいことがあったら声をかけて。しばらくはあの街を拠点にしてる」
フレンドにはなれないみたい。まだ交流が足りないのかなー。残念だけど、今後の楽しみにしよ。
「わかったよ。また会えるの楽しみにしてる」
そう答えたところで、目の前がグワッと歪む感覚がした。
〈チュートリアルを終了します。冒険者ギルドに転移します〉
気づいたら冒険者ギルドの中。たくさんの人がいてうるさい。カミラは……いないな。
しょんぼり。もっとちゃんとお別れしたかった。
「終わりが唐突すぎる……」
ぽつん、と突っ立っていたら、誰かに蹴られた。痛くないけど、衝撃で前に転がっちゃう。
「あ? 今、なんか……?」
「こんにゃろー! 蹴りやがったなー!」
首を傾げて歩き去っていくプレイヤーの後ろ姿に向かって叫ぶ。その声すら周囲の音にかき消されちゃったみたいだけど。
……ここ、フィールドより危険。
そろそろ宿探しに行くかー。ステータス確認したらログアウトして休憩しよ。
混雑した中をなんとか潜り抜け、冒険者ギルドの外に出る。ここも人が多いから即退散。
みんなパーティー募集を張り切ってるみたいだなー。僕もいつかはパーティーを組みたいけど、今は自分の能力把握が優先だよね。
一人でトテトテ歩く。
マップにあった宿を探してるんだ。これ、アリスちゃんがくれた地図に載ってたやつだから、穴場なんじゃないかなー。普通の宿はもうほとんど埋まってそうだもん。
「あった! 可愛い宿だなー」
大通りから外れたとこにあった宿は、屋根の形とかが丸っこくて可愛らしい。
中で受付にいたのは、十代の女の子っぽい。高いところで結んだポニーテールが、溌剌とした印象でいいね。
「こんにちはー」
「え、もしかして旅人さん?」
「さっき冒険者になったよ」
「まさかここに来るなんてびっくり。人じゃないお客様なんて迎えたことないんだけど」
まじまじとみつめられる。驚くのは無理もない。モンスターの見た目だし。ここ、基本的にはプレイヤーが入れないエリアみたいだし。
「誰に聞いてきたの?」
「薬屋さんとこのアリスちゃん」
「ああ、そうなんだ!」
ちょっと表情が緩んだっぽい。知り合いかな?
「——あたし、ジルよ。母がここの女将をしてるの。今日はたまたま店番になったのよ。アリスは従姉妹なの」
「そうなんだ! 言われてみたら似てるかも……? 僕はモモだよ。部屋は空いてる?」
「ええ。部屋の大きさは……一番狭いとこにする?」
「お安い?」
「街一番の安さよ」
こっちから要求しなくても提案してくれるとは、良心的! 僕のサイズだったら、大きな部屋は無駄だもんね。
「おいくらですか?」
「一泊食事なしで百リョウよ。長く滞在する時は事前にまとめてお金を払ってね。事情があれば後払いもオッケーよ」
「はーい。とりあえず、一泊」
百リョウを渡す。代わりにカギをもらった。
「部屋は二階に上がって一番奥よ」
「ありがとー」
そのまま階段に向かおうと思ったけど、ジルの目がキラキラしてることに気づいて立ち止まった。どうしたのかな?
「あの……失礼を承知で聞くんだけど……撫でてもいい?」
「あ、なるほど」
ジルはもふもふ好き、いわゆるモフラーでしたか。僕、魅力的なもふもふだもんね!
「ダメならそう言って!」
「ううん、いいよー」
答えた途端、ジルは「きゃー」と歓声を上げて僕に抱きついてきた。
あの……撫でるんじゃなかった? これ、セクハラにならない? どっちがどっちを、っていうのはあえて言わぬ!
ジルが心ゆくまでもふもふされて、解放されました。部屋で休むぞ……!
ちょっぴりヘトヘトな感じで部屋に到着。確かに狭い。小さめのベッドとテーブルで部屋がいっぱいになってる。でも僕にはちょうどいいね。
「よいしょ、と」
ベッドに乗ってゴロゴロ。なかなか良い寝心地です。このままログアウト——の前にステータスを確認しないと。
「ステータスかもーん」
言わなくてもいいんだけど、気分です。
——————
モモ
種族:
職業:魔術師(3)、錬金術士(1)
【ステータス】
体力:27
魔力:47
物理攻撃力:10
魔力攻撃力:14
防御力:30
器用さ:13
精神力:14
素早さ:15
幸運値:17
SP:6
〈スキル〉
◯オート系
魔力攻撃力強化、魔術詠唱速度向上、魔力自動回復、体力自動回復、気配察知、決死の覚悟〈NEW〉
◯戦闘系
火魔術(2)、水魔術(1)、風魔術(1)、木魔術(1)、土魔術(1)、
◯回復系
◯収集系
採集(2)、採掘(1)、釣り(1)、全鑑定(1)
◯生産系
錬金術基礎
——————
まずは新しいスキルの確認をする。
新しいのは【
えっと。
ヘルプ見たら、種族固有スキルっていうのは、種族レベルが上がることで覚えられるスキルみたい。種族毎に決まってるんだね。
僕はレベル6か7で覚えたってことだ。
【
……めちゃくちゃ良いスキルだよね!?
パーティーメンバーいないのが悲しいけど、いつか誰かと組んだ時には、絶対役に立つはず。僕一人でも使えるしね。
なんかルンルンしちゃうなー。
「次は、と——」
スキル【決死の覚悟】ってなんぞや? オートスキルらしいけど。
説明文には【即死攻撃を受けても体力が1残る】と書いてあった。
……即死攻撃なんてあるんだ?! 怖いね。体力が1残ったところでどうにかなるもの? でも、あって損はないか。
それにしても、なんでこのスキルをもらえたんだろう。
んー……あれかな?
「
というかそれしかないよね。
どうしようもなくて覚悟決めたけど、スキルもらえてお得だったな。
「最後は【見切り】」
説明にあったのは——【攻撃を見切って回避しやすくなる】だった。
「地味にありがたい! これから回避とか鍛えようと思ってたもんなー」
嬉しい。体術も含めてがんばってみようかな。
******
◯NEWシステム
【種族固有スキル】
種族レベルが上がることで覚えられるスキル。種族毎に覚えられるスキルが異なる。
◯NEWスキル
【
パーティーメンバー全員の体力を微回復する。この効果は五分間続く。
【決死の覚悟】
即死攻撃を受けても体力が1残る。
【見切り】
攻撃を見切って回避しやすくなる。
◯スキル変化
【火魔術】レベル2
【
空を飛べる。滞空可能時間は十五秒。
◯NEW
【宿屋の看板娘ジル】
はじまりの街の宿屋の看板娘。溌剌とした印象の健康的な美少女。もふもふ好き。薬屋の娘アリスと従姉妹。
******
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