第2話 ステータスは重要です

「っ……んん?」


 光が弱まったのを感じて、目を開けた途端にちょっと違和感。さっきより、視点が低くなったような? 地面に書かれてるはずの魔方陣が近い。


 よく見たら、手が獣! もふもふしてる。ガチャの結果はスライムじゃないみたいだなー。

 いきなり姿が変わるとか、事前説明ほしかったよ! びっくりしたじゃん。


 今の僕は、スライムよりちょっと大きいくらい——人間の膝くらいの身長になってるっぽい。


「これ、どういう姿なの?」

〈鏡をどうぞ〉


 現れた鏡に映るのは、ピンクがかったベージュ色の毛並みのうさぎ? ほっぺたと胸元の白い毛がふわふわで可愛いね!

 あ、背中に白い羽がある! 飛ぶには小さすぎるかな。


「種族名を教えてー」

天兎アンジュラパです。おめでとうございます。間違いなく希少種ですよ!〉


 なんか祝福してくれてるけど、希少種ガチャで希少種が当たらない方が詐欺じゃん。スライムの割合、もう少し減らすべきだと思うよ?


「想像してたのより、すごく可愛いのきた……。いいんだけど、全然強くなさそう。っていうか、どう戦うのかわからん……」


 首を傾げたら、鏡の中でうさぎが頭を傾けてた。可愛い。絶対愛玩系。つまりペット枠。ぬいぐるみっぽい。


 例として出たままだったスライムが近づいてくる。


 そのぷにぷにボディ、クッション代わりにしてみていい? あ、いいんだ。ありがとう。


 なぜかわかんないけど、スライムと普通に意思疎通できたから、遠慮なく飛び込んでみる。

 ぽよーんとしてて、気持ちいい。ビーズクッションの進化系みたいな。


〈ステータスを確認しますか?〉

「お願いしまーす」


 ガチャし直す気はないので進めてください。

 寝っ転がったままでお行儀悪いとか言わないでね? 鏡に映る姿はすごくプリティーだから許して。


〈ステータス一覧を表示します〉


体力:19

魔力:31

物理攻撃力:8

魔力攻撃力:13

防御力:30

器用さ:9

精神力:14

素早さ:10

幸運値:17


「ほーう」


 数字出されてもよくわからん!


〈ちなみに人間の初期値はこちらです〉


体力:20

魔力:19

物理攻撃力:10

魔力攻撃力:10

防御力:7

器用さ:12

精神力:8

素早さ:10

幸運値:10


「えっ、人間の能力値、低くない!?」

天兎アンジュラパの能力値が高いんです。当たりですよ〉

運営そっち側が当たりとか言っちゃっていいんだ……」


 当たりは嬉しいけどね!

 体力と魔力の値を除いたら、10前後が初期能力の平均値ってことかな。そう考えると、天兎アンジュラパは魔力攻撃タイプで、防御力激高な種族だね。30は強すぎ。


 ……このふわふわな毛皮に、そんなに防御力があるのか。可愛いだけかと思ったら、意外とハイスペックだなぁ。

 幸運値高いのも地味に嬉しい。どう影響するかはわからないけど。


「精神力が高いとどうなるの?」

〈値が高いほど、デバフの影響が出にくくなります〉

「結構重要な能力だ……」


 シビアな戦いの場面だと、バフ・デバフの使い方が重要とか、どっかで聞いたことある。使いこなせる気はしないなぁ。


〈ステータスはギフトポイントで上げることができます。この選択は職業・スキルを決めた後にも行えます〉

「そっか。余ったギフトポイントはそうしようかな」


 すでに高めのステータスだし。スキルを優先した方が良さそう。


〈それでは職業選択に移ります。——職業は戦闘職と生産職をそれぞれ選択していただきます。生産職が自動的にサブ職業となります〉

「途中で職業を変えられるの?」

〈転職機能を解放すると可能です〉

「ゲーム内でなんか業績を達成する必要があるわけか……」


 とりあえず、簡単に転職できないと考えておいた方が良さそう。

 まぁ、どうするかはだいたい決まってるけど。


〈まずは、戦闘職をご選択ください。決定すると20P消費されます〉


 種族例の人間やエルフとかが消えて、今の僕そっくりの天兎アンジュラパが現れた。それぞれ装備が違う。

 っていうか、僕のクッション(スライム)までいなくなっちゃった……。悲しい……。


〈選択可能な職業は【剣士】【魔術士】【体術士】【治癒士】の四種類です。職業レベルが高くなると、上位職に進化可能です〉

「どういう上位職があるの?」

〈その質問にはお答えできません〉


 実際に体験してみろってことね。ゲーム内で情報があるのかなー。

 とりあえず、天兎アンジュラパは魔力攻撃タイプみたいだから、【魔術士】か【治癒士】の二択になるけど——。


「じゃあ【魔術士】で!」

〈【魔術士】が選択されました〉


 治癒士だと、ソロでの活動はしにくいかもしれないからね。友だちと待ち合わせしてるわけじゃないし、見た目も普通じゃないからパーティー組めないかも。ソロプレイしてくつもりでいないと。


 杖を持った天兎アンジュラパが、なんか詠唱したかと思ったら、僕の手にも杖が現れた。同時に、例として出されてた天兎アンジュラパが全員消える。

 ……可愛さで癒やされてたのに。


〈初期装備の【見習い魔術士の杖】が贈られました。装備すると、魔術の攻撃力・詠唱速度が上がった気分になります〉

「気分……」

〈気分です〉


 堂々と言い切られた。笑っちゃう。

 それ、ほぼ意味ないってことだよね。確かに持ってるとザ・魔法使いって感じがしてテンション上がるけど。

 良い性能の杖なら効果あるのかな。作ってみたいなぁ。


〈次に生産職をご選択ください。決定すると15P消費されます〉


 また天兎アンジュラパが現れた。帽子かぶってたり、白衣着てたりして、可愛い! マスコットキャラクターって感じだね。


〈選択可能な職業は【薬士】【鍛冶士】【木工士】【裁縫士】【錬金術士】です〉


 あれ? 前情報より増えてる。確か、生産職は四種類だったはず。【錬金術士】は初耳。


「【錬金術士】ってどんなの?」

〈錬金術を用いて、オールマイティーに生産可能ですが、製作したアイテムの品質が専門職より劣ります。また、錬金術士だけが製作可能なアイテムもあります〉


 ソロプレイにはいいんでは?

 装備も回復薬の類も自分で用意できるってことだよね。品質がどれくらい落ちるかはわからないけど、自分で使う分には問題ないでしょ。高品質の使いたかったから買えばいいし。


「じゃあ、【錬金術士】にする!」

〈【錬金術士】が選択されました〉


 今度は、例として示されてた天兎アンジュラパが消えただけで、アイテム付与はなかった。錬金術士の格好をした天兎アンジュラパは綺麗な丸い石を持ってて、羨ましかったのに。


〈スキルの選択に移ります。現在の種族・職業で選択可能なスキルを表示します〉


 目の前にパッと半透明なブルーの画面が現れる。ゲームでよくある感じのやつ。ステータスも同じ感じで示されてたんだよね。


「おー。やっぱり僕が取得できるの、魔術系に片寄ってるなー」


 キック(1P)とかの低コスト体術系もあるけど、火魔術(2P)とかの魔術系が圧倒的に多い。剣術とかの物理攻撃系のほとんどは10P消費だよ? どんだけ僕に合ってないんだ。


「あ、残ってるギフトポイントはいくつだっけ?」

〈40Pです〉

「結構あった……」


 種族選択を25Pに抑えられたのは大きいね! 人間じゃないから、ステータスに割り振るギフトポイントも少なくて良さそうだし。


 スキルは攻撃系とオート発動型、収集系がほしいかなー。


「えっと……オートスキルは【魔力攻撃力強化(5P)】【魔術詠唱速度向上(5P)】【魔力自動回復(5P)】【体力自動回復(5P)】かな」

〈残り20Pです〉


 魔術士に有用なスキルと、耐久力目当てで体力回復系も。防御力高くても、ダメージは受けるだろうし。


「攻撃は……【火魔術(2P)】【水魔術(2P)】【風魔術(2P)】【木魔術(2P)】【土魔術(2P)】で!」

〈残り10Pです〉


 完全に魔術士として戦うしかないスキル群。ふはは、運動苦手な僕に相応しいだろう!


「収集系で……【採集(1P)】【採掘(1P)】【釣り(1P)】と……【全鑑定(2P)】っていうのも」

〈残り5Pです。【全鑑定】は天兎アンジュラパの種族特性により、取得に必要なギフトポイントが最小限になっています〉

「えっ、めっちゃ良いじゃん!」


 おもしろさ重視でガチャしてみたけど、今のところ、見た目が愛玩動物っぽいこと以外、メリットしかないね。このぬいぐるみっぽいフォルムも気に入ってるし。全然強くなさそうに見えるけど。


「生産系は【錬金術基礎(1P)】だけでいいかな。後から覚えられそうだし」

〈残り4Pです〉


 微妙に残ったなー。もうほしいスキルないんだけど。


「うーん……体術系を取っても使いこなせる自信ないし、あとはステータスに割り振ろうかな」

〈それでは、スキル選択を終了します。——天兎アンジュラパの固有スキル【飛翔フライ】が追加されました。この追加に、ギフトポイントは消費されません〉

「ふぁっ!?」


 え? なんかすごいことを何気なく言われたよね?


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