もふもふで始めるVRMMO生活 ~寄り道しながらマイペースに楽しみます~
ゆるり
はじまりの街
第1話 はじまりはキャラ作成から
ゲームをセットしてスタート。目の前に広がるのは真っ白な空間だった。
軽く体を動かしてみても違和感が一切ない。ここはVRMMO——脳内で接続したゲーム世界のはずなのに、まるで実際に肉体があるみたいに感じられる。
技術の発展ってすごいんだなぁ。どういう仕組みなのかまったくわからないや。
楽しめるなら、どうだっていいんだけど。
〈ようこそ。ここは異世界との狭間です〉
不意に声が響く。なんかさらにワクワクしてきた。
ようやくゲームを始められるんだ。発売が予告されてからずっと、僕はサービスが開始される日を待ってた。異世界を旅するってどんな感じなんだろう。
〈あなたはこれから異世界の国イノカンに旅立つことになります。その国は現在数多のモンスターによって侵略されており、緊急救助要請が出されているのです。あなたの使命は、多くの
なるほど。ありがちな設定だけど、わかりやすいね。
でも、戦うのはあんまり自信ないなぁ。これが初めてのVRMMOだし。確か、運動能力とかはある程度ゲーム世界にも反映されるんだよね? ゲーム補正もあるとはいえ、僕は運動が苦手なんだよ。
〈我々はあなたに、使命とは別に、異世界を楽しんでいただきたいとも思っています〉
あ、なんか僕の思いに答えたような言葉だ。声に出してないけど、もしかして伝わってる? ……この世界自体が脳内で繋がってるんだから、考えを読み取られるくらい普通なのかも。
というか、我々って、ゲーム運営側ってことでいいんだよね? ちょっとそのへんの設定の作り込みが甘くないかな。それとも説明が雑なだけ? ゲームをする上で支障がないなら別にいいけどさ。
〈まずはあなたのお名前を教えてください〉
「これって本名じゃなくて、ゲームでの名前ってことだよね?」
〈はい、その通りです〉
「普通に答えてくれるんだ……」
会話がきちんと成り立ってる!
AIの技術が生まれてから結構時間が経ってるけど、まだ日本語で違和感なく会話するのって難しいらしいんだよね。
このゲームは、そういうAI技術に力を入れてるっぽい。前評判通りだから、今後も期待しちゃうな。
「んー、じゃあ【モモ】で。僕、桃が大好きなんだ」
〈桃美味しいですよね。——
なんかすっごい普通に言われたけど、このAIさんは桃を食べたことあるの? もしかして中身人間とか?
〈それでは、これより異世界を旅する上で必要なギフトの授与を行います。種族・職業・ステータス・スキルを選択していただきますが、それぞれにギフトポイントを消費します。使えるギフトポイントは全部で100です〉
ほうほう……このギフトポイントをどう使うかが重要ってことだね。100かー。多い感じがするけど、実はすぐなくなっちゃうのかな?
〈まずは種族の選択を行います。選べる種族は五種類です。平均的な姿を表示します〉
不意に目の前に人の姿が現れた。それぞれプラカードを首からさげてる。なんか気が抜けちゃう格好だ。
プラカードには【人間(20P)】【獣人(50P)】【エルフ(50P)】【ドワーフ(50P)】【希少種(25P)】と書かれてる。
〈人間は異世界で最も多い種族です。平均的な能力値を持っています〉
くるりと人間が回る。
どこからどう見ても、現実世界で見る人の姿と変わらない。見た目は楽しめないけど、平均的な能力値なら初心者でもゲームをやりやすいのかな。尖った性能って、使いこなすのに工夫がいりそうだし。
〈消費するギフトポイントがプラカードに表示されています。人間を選択するには20P必要です〉
……そんなことだろうと思ってたよー。
ってことは、エルフとか獣人とかドワーフを選んだら、ギフトポイントの半分を消費しちゃうってこと? ひえー! そんだけ性能いいのかもしれないけど、ちょっともったいない気がするなぁ。
というわけで、高ポイント種族を選ぶ意欲が減ったので説明を聞き流して、最後の種族に注目。
ちなみに、獣人は物理攻撃の能力が高くて、エルフは魔術攻撃の能力が高いらしい。ドワーフは防御力高めで、生産能力も高いんだって。
〈最後は希少種です〉
ぽよん、とゲーム好きなら誰もが知ってるような姿が一歩前に出てくる。
これ、絶対スライムでしょ? モンスター側じゃなくて、プレイヤー側がなれるものなの? 決してスライムになりたいとは思ってないけど。希少種って表現が気になる。
〈希少種を選択するとガチャを一回引くことができます〉
「急にすごいゲーム感出してくるじゃん……」
ちょっと困惑。
種族選択を博打って、リスキーすぎない? 面白いけど、初っ端からゲームに躓く可能性あるよね?
〈八割の確率でスライムが選択されます〉
「ガチャ率崩壊してない? それ、ほぼスライムってことじゃん!」
〈スライムは人間の半分の初期能力値です〉
「激弱っ!?」
ツッコミを入れずにいられなかった。
希少種っていうんだから、ちょっとは強いのかなって期待しちゃったんだよ。見事に裏切られたけど。
「……スライムに利点はないの?」
〈固有スキル【分解・吸収】を取得可能です〉
「それって強い?」
〈相手の防御力が自身の攻撃力より高い場合、効果を示しません〉
「……ダメじゃん!」
人間の半分しかない能力値が通用する相手がどれだけいるんだよ。レベル上げて能力値を高めれば通用するとはいえ、それまでは地獄だろ。
「え、希少種を選ぶ利点なくない?」
〈二割以下の確率で本当の希少種が当たります〉
「本当のとか言っちゃってる。やっぱ、スライムは雑魚なんだ……」
なんかここまで言われるとスライムが可哀想になってきた。心なしか例として示されたスライムくん(さん?)がしょんぼりしてる気がする。……かわいい。
「どういうのが当たるの?」
〈当たってからのお楽しみです。人間に近い姿をしている種族はほぼいませんので、その点はご注意ください〉
つまり、希少種はどれもモンスターっぽい見た目ってことだね。
ゲーム中は常に頭上でプレイヤー名が表示されるとはいえ、フィールド内で敵に間違われる可能性ある? このゲーム、PvP要素ないからダメージは受けないけど、ちょっとしたトラブルは起きかねないよね。
「でも、おもしろそう……」
じっとスライムを見つめる。なんか目をキラキラさせてる気がした。僕が乗り気になってるのが嬉しいのかな。
〈え……リスキーですよ……?〉
「なんで
AIのくせに感情豊かだな。そんなに言われると、希少種選びたくなっちゃうじゃん!
〈モモ様は天邪鬼……学習しました〉
「変なこと覚えなくていいからぁ!」
っていうか、やっぱり思考読んでるな、こいつ。
〈申し遅れましたが、私はナビゲーターの【ナビ】です。よろしくお願いいたします〉
「こいつ扱いが嫌だったんだね。了解、ナビ。よろしく」
安直な名前だなぁ。
言葉にしなかったこの感想も、きっとナビには伝わってるんだろうけど、気にしなーい。
〈種族はお決まりになりましたか?〉
「うーん……人間か希少種で悩んでたけど、やっぱおもしろみをとって、希少種ガチャでお願いします!」
にこにこ。ゲームは楽しいのがいいよね。弱くても、街でのんびり過ごしたり、ちょっとずつ強くなれるようがんばったりするのもいいと思うし。
〈……はい〉
すっごくなにか言いたげだけどスルー。選ぶのは僕なんだから、文句は言わせない!
〈ではガチャを行うため、25Pを消費します。引き直すためには、再度25Pを消費することになります。目の前の魔方陣に入ってください〉
白い空間に五芒星を内包した円が現れた。これぞ魔方陣って感じでオーソドックスだね。戸惑わなくていいけど、もっとオリジナリティ出してみたら?
「良いのが来ますようにー」
スライムでもいいよ。でも、もっと楽しそうなのがあればそれがいいな。
魔方陣に入った瞬間、体からなにかがこぼれ落ちていくような感じがした。
なんだろう? って思った瞬間に、魔方陣が白い光を放つ。
咄嗟に目を瞑った。
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