第16話

やがて試合が始まり、相手のピッチャーを見て、目を見開いた。明らかに140キロ後半は出ている。しかもコントローラがよく、明らかに全国レベルのピッチャーだった。こりゃうちのチーム選手じゃ打てないな。かくいう俺も打てるきはしないが。そもそもバッティング練習をほとんどしてないしな。うちのエースがなんとか踏ん張っているが何本もヒットを打たれてるところから見て、バッティングもいいチームなんだろう。


「一条投球練習しといてくれ」


球数が多くなり投球練習をしてくれと監督にいわれた。思ったよりも早く出番が来そうだ。まぁ一イニングだから、全力で投げるか。


俺は分かりましたと言うと、ブルペンに向かった。もちろんキャッチャーは礼治である。この監督はこのピッチャーはこのキャッチャーと決めているから、練習試合だとキャッチャーの出番は多い。レギュラーのキャッチャーはエース以外も担当することが多いが。礼治は同学年っていうのもあるし、配球が上手いから、俺を担当している。


「優花ちゃんが来てるんだな。それじゃかっこいいところ見せないとな」


「そうだな、一点差で負けてるが、これ以上点はやらない」


俺はブルペンに着くと、登板する前の武者震いをした。やっぱり強豪校に投げると興奮するな。アドレナリンも大量に分泌されている。俺は強豪校を相手にすると余計に燃えるタイプなのだ。


軽くキャッチボールで何球か投げて、礼治を座らせた。そこでいろんな変化球を投げた。そして投げてくごとに集中力が増していく。そしてあっという間に肩が暖ったまった。

 


そしてノーアウト満塁の場面で感と毛から行くぞと言われ登板することになった。ふと優花と楓を見た。 


「頑張れぇー」


声援を送ってくれた。俺は後ろ向きに手を上入げて答えた。今の俺はゾーンに入っているかもしれない。そのくらい集中している。俺は礼治とセットで交代に入った。二番からか、今日はヒット一本打っているな。


まずはスライダーを要求してきたので、それを投げた。するとぐんと曲がり、インコースのボール球から、ストライクゾーンに入った。バッターめを見開いている。それから追い込みスプリットを投げた。すると簡単に三振をとれた。まずはワンアウト。


次の三番打者はストレートで詰まらせて、ファーストフライに打ち取った。次は四番か、たしかドラフト候補だったはずだ。この人を抑えられれば、ベンチ入りが見えてくるだろう。


「ふぅーここで終わらせる」


俺はカットボールを投げた。するとスライダーかと思ったのか、バッターは見逃した。そしてストライクコールが響く。そのあとのスライダーは見逃してきて、アウトコースに外れるボールになった。


バッターもプロのスカウトがいるからか、結構集中している。すごいプレッシャーを感じる。これがドラフト候補の圧力か。俺は額にかいた汗を拭う。望むところじゃねーか。俺は俄然やる気が出て、ニヤッとした。


「理先輩頑張ってくださーい」


ふっ楓に応援されてるんだ。打たれるわけにはいかないな。次はつーシムをアウトコースね。おらのつーシムは一般的な速球の早さで少し曲がるボールだ。


これをアウトコースボールゾーンから、ストライクゾーンにいくようにするんだろう。それが成功すれば追い込める。俺はストレート同じ振りで投げた。するとくっと曲がってストライクを取った。これで追い込んだ。最後はスプリットを低めか。俺は投げる瞬間にスナプをきかさずにストレートと同じ振りで投げるとバッターの目の前で落ちて空振りを取った。


「っしゃー!」


俺は雄叫びを上げた。ノーアウト満塁のピンチを抑えたんだ。叫びたくもなるよな。しかもドラフト候補まで抑えられたんだ。気分が高騰するのも無理ないだろ。楓を見ると笑顔で拍手をしていた。ふっ俺のかっこいいところを見せられたぜ。惚れたか?


そんな感じでどや顔をしながら、ベンチに戻ってくると、礼治にさすがだなと言われた。監督にはよく抑えてくれたと言われた。ほぼ確実にペン入りはこれでできるだろう。


だか試合は4対0で負けた。まぁ相手は甲子園連続で行っているチームだし仕方ないか。だがいづれ俺達もあのレベルにいく。


「理、柔軟運動はやったか?」


試合が終わり一人でいると、礼治にそう言われた。投手として、怪我をしないために柔軟運動は大切だ。だからやろうと思ってはいたが、整備などをしてたから、まだやっていない。


「やってないが」


「それじゃやるか。一人より二人の方がいいだろう」


「そうだな、やるか」


俺は座って、礼治に腕を伸ばしてもらって、肩の間接をグーと伸ばしたりした。それと股関節を胡座をかいた状態から、押してもらったりした。そして柔軟運動が終わり、俺は荷物のある場所まで来ると、楓達が来た。


「理先輩カッコよかったですよぉー。特に最後打者を三振取ったときのガッツポーズはキュンときました」


やっぱり楓は俺のこと好きだろ。じゃなきゃキュンとなんてこないはずだからな。俺も少しづつ楓に惹かれているのが分かる。もうほとんど桃井先輩のことは吹っ切れているだろう。相変わらず俺は惚れやすいのがあれだが。美少女にここまで思われたら、こうなるよな。
















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