勢いよくボールが落ちる。

衝撃が地に響き、ボールがそのまま転がる。

途中で勢いが増し、10ピンのうち9ピンを倒す。


「また9ピンかよ!!」


「もう1投で倒せばいいじゃない」


「それが出来たら叫んでねぇんだよなぁ……」


そう、俺らはボーリングに来ていた。

涼しいけど体を動かしたい。

だけど、汗は掻きたくないという俺が駄々をこねたせいだ。


最初は渋々という感じだった秋保も今ではどっぷりハマっている。

1ゲーム目の5回目だが、秋保が少しじつ上達きていっている。


「そろそろコツが掴める頃なんだけど……」


「ふっ!」


端に残っている1ピンを倒すべく1球を投じた。

しかし、4回連続ガーターだったので、5回目もキレイにガーターになった。


「おかしい……。1投目はまっすぐ投げられるのに1ピンだけになると真っすぐいかねぇ……」


「もうちょっとフォームをキレイにしたほうがいいのかしら……?」


「秋保さーん?動画見るほどですか~?」


「やるからにはストライク取りたいじゃない」


俺が戻るとスマホでボーリングの上達する方法を調べていた。

最初は俺の見様見真似だったのに、いつの間にか研究を始めていた。


自分のボールを持って、放る。

女子の投げる球だ、勢いが少し弱い。

真っすぐ投げられているが、中央よりズレ、6ピンが倒れた。


「上手くいかないわ……」


「アドバイスになるかわかんないけど、フォーム?を気にしすぎて勢いが弱くなってるからもうちょっと力んで投げた方がいいんじゃない?」


「なるほど、勢いがないというわけね……」


バラけているピンの集まっている2ピンを確実に倒すした。

ピンがセットされるのを待って投げる準備をする。


「富樫君ってボーリング何回か来たことあるの?」


「たまにね。あー、ナンパした時に一緒に居たやつらと来たりしているからな」


達樹がボーリング好きだからな。

彰人は完全に付き添いって感じ。


お陰で俺も安定したスコアをとれるようになった。

まぁそれでもストライクが安定しているわけじゃないけど……。


「羨ましいわ……」


「どうしてだ?」


「女子で集まっても基本はショッピング。たまに映画で、後は映えるカフェで写真撮ったりだもの。少し退屈なのよ」


運動部の少ないグループなのよね、と小言で漏らした。

秋保の通っている高校は有名な進学校だからな。

部活より勉強が優先されるし、強制でもないっぽいし。


「富樫君ってどれくらいスポーツできるの?」


「うーん、人並みに出来ると思うけど。あいつらのせいでほとんどのスポーツはやったことあるし、足を引っ張らない程度には努力したからな」


「そうなのね、陰キャっぽいのに運動はするのね?」


「陰キャっぽいって……。間違ってはないけど……。まぁ、中学はあんまり動かなかったけど、高校であいつらと知り合ってからだな」


「良い友達と出会ったのね?」


ボーリングの球って重いんだよなぁ……。

もう投げていいかな?


とりあえず、勢い重視で投げる。

真っすぐ投げれなかったが、また9ピン倒れた。


「芯を捉えなくてもパワーが解決してくれるからな」


「9ピン……」


「うっさい!気にしてるんだから言わないで!」


そして2投目はガーター。

はい、しってました……。


「富樫君見ていると私が考えているのがバカみたいね」


「なんか心に大きな傷がついたんだけど……?」


「見てなさい!」


ピンがセットされて、秋保の番。

フォームが少し崩れているが、彼女なりの全力で投げたのだろうか。


えいっ!と可愛い声が聞こえる。

徐々にボールの勢いが増し、真ん中のピンを捉えた。

1ピンから4ピンと徐々に倒れ、結果的にすべて倒れる。


「やった!」


「うっそだろぉぉ……」


俺よりも先に倒しちゃったよ……。


「ナイスストライク!」


「ありがと!」


戻ってきた秋保に両手を挙げた。

察してくれたのか、両手でハイタッチしてくれた。


初のボーリングでストライクを出せたとか普通にすごい気がするわ。


「頑張って!」


「見とけ!」


俺の番が回ってきた。

1投を決める。


ガタガタを倒れたピンを見て、再び叫ぶ。


「また9ピンかよぉぉ……!!」


「ぷぷ……」


「笑うなぁぁ!!」






◇◆◇◆◇◆◇





「しくしく……」


「気にすることではないと思うわよ?」


結果的に俺は最後まで9ピンしか倒せなかった。

秋保はコツを掴んだのか、あのあと3回連続でストライクを取った。

スコアでも負けたし、ストライクは取れないし……。


「散々なボーリングだったわ……」


「でも、私は楽しかったわ」


「それはよかった」


満足してくれたならよかった。

今はお昼ということでラーメン屋に来ていた。


俺がお腹が空いたと言うと秋保がガッツリ食べたいとご所望だったので、適当にラーメンでもどうかと提案したらかなり興味を示した。

てことで、よく来るラーメン屋へ。


食券を買い、店員に渡して今は届くのを待っているところ。


「初めて男の子と出かけているけど、世のカップルは毎回これくらい楽しいのかしら?」


「知らん。俺も女の子と遊ぶなんて小学生以来ないからな。まぁ偏見だが、カップルでもそんなにボーリングとか運動系は行かないんじゃないか?」


「私は付き合ったら運動したいわ。ダイエットにもなるし、一緒に楽しめるしね!」


「秋保と一緒に運動できるやつは羨ましいな」


「富樫君さ……、いえ、なんでもないわ」


「?」


「ラーメンおまち~!」


「あ、そっち俺です」


秋保がなにか言いたげだが、ラーメンが届いたので一旦中断。

俺が頼んだのは濃厚醤油とんこつの大盛。

味噌のような濃厚な豚骨が上手いのだ。


秋保も同じやつの並み。

本当だったらにんにくをぶち込みたいが……。


「にんにく……」


「わかる、入れたいよな」


おいしい食べ方を見て秋保が悩んでいる。

にんにくを入れると美味しくなると書いてあるからな。


何度も来ている俺が断言しよう。

かなり美味いと!


「……デートじゃなければ入れたいのだけど」


「デート?まぁ俺は気にしないからいれたらいいんじゃないか?」


俺は遠慮して普通に食べるが。

ラー油だけ入れて、味を濃くする。

ラー油だけでも美味いが、やっぱりにんにくが欲しいところである。


「よし……、えいっ!」


「いったぁぁぁ!」


「うっさい!!」


「すいません……」


覚悟を決めてにんにくを投入した秋保。

ラー油も俺の真似して少しだけ入れた。


「あ、おいしい……」


「だろ?にんにくのパンチが良い感じに効いてな」


「入れてよかったわ」


それから、二人は黙って食べ続けた。

俺のほうが先に食べ終わったので、失礼にならない程度で食べる秋保を見る。


少しずつ麺を啜る姿は小動物のようだ。

髪を耳に掛けながら邪魔にならないように食べている姿に少しだけ見惚れてしまった。




~~~~~~~~~~~~~~




文字だけだと面白味のないデート回な気がする……。

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