6
「いきなり悪いな。迷惑だったか?」
『いえ、迷惑ではないけど……』
「(他の連中が)声が聞きたくてな」
『そ、そう……』
電話越しだと少し棘がないように感じる。
たぶん、照れてくれているんだろうか?
昨日話した感じそんな気がする。
『それだけかしら?』
「まぁそんだけだな……」
『そう……切るわよ?』
「あー……ちょっと待ってくれ……」
通話口を手で押さえて周囲に相談してみる。
「……おい、なに話せばいいと思う?!」
「……とりあえず朝食なに食べたか聞いてみろっ!」
「……今日の下着の色聞いてみろ!」
「……昨日は致したのか聞いてみろ!」
こいつらやべぇぞ……。
遠慮とかいうものがない……。
「いや~、えーっと下着の色教えてくれ」
あれ、朝食何食べたのか聞こうとしたのに、俺はなにを聞いているんだ?
『はぁ?』
かなり冷めきった声音だった。
背筋が凍る。
死を覚悟した。
「っ!冗談だ!男子のノリに付き合わせて悪いな!それじゃ!」
『あ……』
急いで通話を切った。
「お前らのせいで間違ったこと口走ったべ!」
『ナイス!』
「俺の好感度が地に落ちたぞ!」
『大丈夫だ、最初からないようなものだろう!』
「失礼だぞ、お前ら……!はぁ、朝から疲れるわ……」
近くにいた知らない2人に肩を組まれた。
俺はそれを振り切って高校への道のりに戻った。
こんなことしていたからな。
今日の遅刻人数はかなり多かったらしい。
「それで、今日は朝から騒がしかったんだな~」
「はぁ、疲れたわ……」
「おつかれ」
お昼、昨日同様空き教室で彰人と飯と食べていた。
達樹は今日はサボった。
「そういう彰人は昨日どうだったんだよ?」
「そうだよ、聞いてくれよ!」
「ん?」
いかにも聞いてくるのを待ってましたと言わんばかりに体を乗り出してきた。
「結衣ちゃん、可愛かったんだよ!」
「いいことじゃん?」
「違う、俺はもっとモブっぽい子が好きなんだ……。隠れ美少女とか求めてないんだよ……」
「贅沢な悩みだな……」
「しかも、ベッドの上では割と積極的ときた……。もっと恥ずかしがる女の子の方が好みなのに……」
お前も喰ったんかい。
結構ガード堅そうだったけどなぁ……。
弁当を食いながら、彰人の話を聞き続けた。
途中から彰人の性癖が駄々洩れだった。
変わり者だと思っていたけど、ここまでとは……。
昼休みの時間も終わりが近付いてきたので、弁当を片付ける。
すると、スマホが震えた。
どうせ、ゲームの告知とかだと思ったが、一応目を通した。
「秋保……?」
「どうしたんだ?」
「いや、メッセが届いてよ」
「ふーん。そっちはそっちで上手く行ってるんだね?」
「どうだろうな……」
今朝の件もあったし……。
謝りのメッセージは入れたけど、既読無視だったし。
さすがに嫌われたと思ってた。
「なになに……?」
チャット画面を開き、内容を確認する。
『土曜日空けといて』と表示されていた。
ゲームする予定しかないので、特に問題はないが、急にどうしたんだろうか。
しかし、下手に断って機嫌を悪くするのは悪手でしかない。
罵倒されようが、殴られようが行くしかない。
「行ってみなよ」
「勝手に覗くな……」
「嫌だったら隠してるでしょ?それに悪いことはないと思うよ?」
ほら、と彰人は自分のスマホを見せてきた。
表示されているのは結衣という名前の人とのチャット画面だった。
何やら幼馴染の様子がおかしい、どうやって相談乗ればいいのか?という相談の会話だった。
結衣ってたしか秋保の幼馴染だったんだっけ……?
「それって俺に見せてもいい感じ?」
「うーん、だぶんダメじゃないかな?」
「なんでそれを俺に見せた?」
「なんとなく?」
こいつ性格終わってんな……。
まぁこんなんでも女にモテるからな~。
やっぱ見てくれって大事なんだな~。
「彰人、相談があるんだが……」
「いいよ、今日でいいかな?」
「まだ何も言ってないんだが?」
「どうせ、着ていく服がないから買いに行くのに付き合ってほしいでしょ?」
「お前、怖いわ……」
「モテる男はつらいね!」
「うざっ……」
結局、秋保には了承の連絡を入れた。
詳細は追って連絡してくるらしい。
午後の授業も終え、彰人とモールへ。
課金用に取っておいた貯金を下ろしてファッションチェーンへ。
彰人のチョイスと俺の好みで2セットほどを購入。
お礼としてたこ焼きを奢った。
終始彰人はニヤニヤしていてうざかったとだけ伝えておこう。
◇◆◇◆◇◆◇
早くも土曜日。
10時が集合時間で、場所は俺らが知り合った場所。
7月半ばなのでかなり熱い。
直射日光が俺の体力を削る。
「ふぅ……」
現在時刻は9時半。
早く着き過ぎた。
待たせるのは嫌だったので、1時間早く来たけどさすがに早過ぎた。
ちらほらと人が増えていき、カップルらしき人たちがどんどん移動していく。
スマホでネット小説を読んで待つ。
電車の音が聞こえる度に視線を泳がせてしまう。
「あっつ~」
今回も居ないことを確認し、手で顔を扇ぐ。
かなりの微風だし、熱風だしで意味がないように思うが、今掻いているのが普通の汗なのか緊張からくる汗なのか。
足が若干震えている気がするし……。
それから2回ほど電車が行き来して、俺の視界にようやく目的の女の子が収まった。
「おまたせ」
「おぉ……」
白いオフショルブラウス、デニムのショートパンツ、底の高いブーツとワンポイントの帽子。
男子受けの良さそうな服装だった。
「めっちゃ似合うね」
「あ、ありがとう。そういう富樫君は普通ね」
「まぁ男子だからね」
俺はTシャツにジーンズだからね。
似合わないってわけではないと思う。
「それじゃ、いこっか」
「うん」
「その前に……」
「その前に?」
俺は視線を移動させる。
視線の先にはどこにでもあるお店だった。
「コンビニ寄っていい?」
「待たせちゃったものね……。いいわ、飲み物くらいなら買ってあげる」
「いいよ、勝手に早く来ただけだから!ちょっとまってて!」
俺は駆け足でコンビニへ向かった。
さすがに女の子に飲み物だけを買ってもらうのは抵抗があったからね。
仕方ないよね!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます