24

 頑張れ。人生に負けんなよ。


 ……次に雨が目を覚ますと、そこは朝見先生の運転する車(中型のワゴン車)の中だった。

 雨は後部座席に横になっていて、直ぐ近くには愛がいた。

 愛は目を覚ました雨に直ぐに気がついて、「大丈夫?」と、心配そうな顔から、すぐに、にっこりと笑うような笑顔になって、雨に言った。

 雨は愛の膝の上にいた。

 どうやら愛はずっと雨に膝枕をしてくれていたようだった。

「あ、雨気がついたんだ。どう、もう大丈夫なの?」

 心配そうな顔で、前の席に(どうやら雨のために席を移動してくれたらしい)座っていた瞳が後ろを振り向いて、雨に言った。

「……うん。もう大丈夫。まだ、少しだけくらくらするけど」

 小さく笑いながら、雨はそう言って、その体を起こした。

「遠野さん。本当に大丈夫?」

 ミラー越しに雨を見ながら、朝見先生が言う。

「はい。大丈夫です」

 雨は言う。

「心配をかけてすみませんでした」

 そう言って、それから雨は今の状況を確認する。

 車の助手席に森川くん。

 前の席に瞳と東山くんと、……それから水瀬くんがいる。

 一番後ろの席に雨と愛。

 今はどうやら朝見先生の車で山を降りているところのようだった。

 そんなことを確認しながら、雨はだんだんと現在の状況が把握できるようになってきた。

「急に気を失うからびっくりしたよ」

 森川くんがわざと明るく、冗談っぽい口調で言う。

「あの、天体観測は……?」

「それは中止。遠野さんが倒れてから、直ぐに車に乗って移動したんだよ」朝見先生が言う。

「え? でも、それじゃあ、せっかくの天体観測が……」

「そんなことより、雨の体のほうが大事だよ」

 言いかけた雨の言葉を遮って愛が言う。

 愛は、とても優しい顔をしている。

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