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「私、水瀬くんに告白しようと思うんだ」

 雨は言った。

「え?」

 その言葉を聞いて、愛は、本当に珍しく、すごく驚いた顔をした。

「告白する。自分の思いをきちんと水瀬くんに伝える」

 雨は愛の目を見ながらそう言った。

 場所は土手の上の道をすぎて、いつものように二人が離れ離れになる場所である、田んぼの横にある分かれ道の上だった。 

「……そうなんだ」

 少し間を置いたあとで、下を向いて愛が言った。

「……うん。よかった。よかったじゃん」

 にっこりと笑って愛は言った。

「そうか、そうか。水瀬くんがこの田舎の街に引越しをしてきて、約一年。一目惚れの初恋から、ようやく雨も運命の王子様に告白をするつもりになったか。うん。うん。よかった、よかった」

 愛はそう言って、軽く雨の肩を二回、叩いた。

「おめでとう」

 と愛は言った。

「……告白、うまくいくといいね」

「……うん。ありがとう」

 ずっと黙っていた雨は、自分の目の前に立っている、小さいころからの幼馴染であり、自分のもっとも親しい友達であり、親友である浜辺愛にそう言った。

「それで、水瀬くんに告白はいつするの?」

 地面の上にある土と草を軽く蹴りながら、愛は言う。

「天体観測の日」

 雨はすぐにそう答える。

「わかった」

 愛は言う。

「雨の告白がうまくいくように、私は雨のことを全力で応援するよ」

 愛は笑う。

 雨は無言。

「じゃあ、そういうことで、今日はさよならだね」

 夕日を背にして、愛は雨にそう言った。

「うん。また明日」

 雨は言う。

 それから二人はいつものようにさよならをして、それぞれの家に帰って行った。

 その道の途中で、雨が後ろを振り向くと、赤い夕焼けに染まる世界の中で、田んぼの中の畦道を歩いて、一人家路に向かう愛の小さな後ろ姿が見えた。

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