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「ただいま」
そう言って雨は自分の家の玄関の扉を開けた。
「おかえり。今日は遅かったね」
家の中から、そんな雨の姉である遠野雪の声が聞こえてくる。雪はどうやら台所で夕食の支度をしてくれているようだった。
「……お父さんは?」
台所を覗くと、そこにはやっぱり雪がいた。
「今は仕事中」
雨のほうを振り返って、雪はにっこりと笑ってそう言った。
「そうなんだ」
雨はそれだけを言うと、それから自分の部屋に向かって移動をした。
雨の家は遠野神社という、この田舎の山奥にある街に代々伝わっている、それはそれは古い古い、とても伝統のある神社の家系の家だった。
現在の遠野神社の神主さんは雨と雪のお父さんで、二人は遠野神社の巫女さんとして、時間があるときは、お父さんの仕事を子供のころから手伝っていた。
雨と雪のお母さんは二人が小学生の低学年のころに病気で亡くなった。
遠野家では、おじいちゃんもおばあちゃんもすでに亡くなっていて、お父さんと雨と雪の、三人だけの家族だった。
雨は中学校の制服から普段着に着替えをすると、お父さんのところに行こうとして、家の隣にある遠野神社につっかけをはいて移動をした。
神社の中に入ると、お父さんはそこにいた。
祭壇の前に座って、お父さんはある二人の人物の話を聞いているようだった。
その二人のうちの一人の姿を見て、雨はすっごく驚いた。
なぜならそれは、雨が密かに恋をしている、あの水瀬守くんだったからだ。
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