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「あ」
雨は水瀬くんの姿を見た瞬間に、その姿をふすまの後ろにすぐに隠した。
それは、あまりにも気を抜いた普段通りの格好を(ペンギンの柄の入ったセーターにジーンズ)雨がしていたからだった。
でも、神社の中にいた三人は、もちろん、雨のことに気がついた。水瀬くんとも、目と目がばっちりとあってしまった。
「雨。どうかしたの?」
ふすまの向こうからお父さんの声が聞こえる。
「なんでもない」
雨は言う。
それから雨は(大変、失礼だとは思ったのだけど)顔だけを出して、「こんにちは」と水瀬くんと水瀬くんの隣にいる大人の男の人に挨拶をした。
その大人の男の人は、どうやら水瀬くんのお父さんのようだった。
「こんにちは」と水瀬くんのお父さんは言った。
水瀬くんは小さく頭を雨に下げただけだった。
それから雨のお父さんが「確か、守くんと雨は同じクラスだったよね?」と水瀬くんに言った。「そうです」と水瀬くんは端的に答える。
すると、水瀬くんのお父さんが「守。ここはいいから、遠野さんのお嬢さんと一緒に、少し散歩でもしてくればいい。あとの話は私が遠野さんとしておくから」と言って、それからにっこりと笑って、雨を見た。
「え!? いや、……でも」
その水瀬くんのお父さんの提案自体はとても嬉しかったのだけど、あまりに突然のことで、雨はなんだか自分がどうしていいのか、よくわからなくなった。
「わかった」
水瀬くんは水瀬くんのお父さんにそう言うと、雨のお父さんに頭を下げてから、移動をして、雨のすぐ目の前までやってきた。
雨は水瀬くんから、今の服装をまだ隠したいと思っていたのだけど、それはさすがに無理だった。
水瀬くんは神社の外に出ると、ゆっくりとふすまを閉めた。
それから雨のことを見た。
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