黒中光「Under the Storm」


・黒中光「Under the Storm」

https://kakuyomu.jp/works/16818093078645422091


 貧困に耐えかねて、夜の海でのサザエの密猟を決行した青年の頼希。サザエを捕ること自体はうまくいったが、その直後の嵐が、彼の乗るゴムボートを襲い……。一人の青年の一夜を描いた、ワンシチュエーションの現代ファンタジー。

 作者の黒中さんは、五月の「いつまでも輝く母へ」以来の参加です。その時は、母と娘の関係を、不思議な現象を通して淡々と描く現代ファンタジーでした。


 本作も現代ファンタジーですが、読み味は前作と全く違います。前作が「不思議な日常」と呼ぶのなら、本作は「残酷な現実」という形でしょうか。主人公の対面する生活が、非常に生々しく、その苦しみも簡単に想像できてしまうほどです。

 ただ、彼のような人も、きっとこの世には多くいるんだろうなと考えてしまいます。「真面目に生きるのが馬鹿馬鹿しい」とか、「悪い奴ほどよく眠る」とか、そんな言葉を連想してしまうほど、なんだか悲しい時代になったなぁと思えます。


 あえて身も蓋もない言い方をすれば、読み終わって「蜘蛛の糸」を連想しました。自分の行動が全て見られている、罰もあれば救いもある、それは、現代人にとっては一つのよすがでもあるのでしょう。

 ジャンルとしては「現代ファンタジー」ではありますが、「ファンタジーじゃなかったらいいな」とも思ってしまえる読み味でした。



















 

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