清瀬六朗『Under the Storm スクーナー船パーシャンハウンド号の航海』
・清瀬六朗『Under the Storm スクーナー船パーシャンハウンド号の航海』
→https://kakuyomu.jp/works/16818093078517948718
嵐の接近と街で強盗が発生したことによって、船が出せない状況のセントローレンス港にて。スクーナー船の船長・コリンスは、次の公演のために、いち早く出発したいカルテットの頼みを受けて、嵐渦巻く沖合へと向かう――。十九世紀のアジアの港町を舞台にした歴史小説。
清瀬さんは四月号、五月号に引き続いての参加です。そのどちらの作品とも、現代日本の若い女性が主人公の物語でした。
『Under the Storm スクーナー船パーシャンハウンド号の航海』は、打って変わっての、十九世紀のアジアが舞台のお話です。しかも、登場人物のほとんどが男性で、これまでとは全く経路の違う物語に驚きました。
本編で描かれているのは……少々時代遅れな言葉ですが、「男の美学」です。自分の仕事、船、仲間たちに深い誇りと信頼を持っている男……しびれますね。ジョジョとかが好きな私にはぶっ刺さりました。
軽妙なやり取りと、そこに含まれる駆け引きにもドキドキしましたね。伏線が回収されていく後半の展開には、拍手喝采ものでした。そこで重要な役割を果たす、一番好きな登場人物を、ここで紹介できないのはとても惜しいです。
嵐を突き進むという激しいシーンが出てくる本作ですが、全体を通すと、意外とほのぼのしているようにも感じられます。皆さん、憎まれ口を叩き合いながらも、その間には親愛の情があることが、はっきりと見て取れるからかもしれません。
ですが、十九世紀から二十世紀にかけて、何が起こるのかを私たちは知っています。作中でも、「アヘン」というワードが当たり前のように出てきて、どきりとしました。それでも、ルーツが異なる人々が手を取り合い、一緒に笑い合っていた時代があったことを、心に刻みたいと思います。
それから、本作ですが、清瀬さんの「『荒磯の姫君』シリーズ」と繋がっているようです。 そちらの方を読んでいないので、詳しい繋がりは分からないのですが、こういうずっと追いかけてくれている方々へのサービスは、とてもいいなぁと素直に思いました。
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