朝吹「Under the Storm」
・朝吹「Under the Storm」
→https://kakuyomu.jp/works/16818093078446332691
「わたし」の隣の家では、夕方五時になるとそこの少年・慧くんが、ヴァイオリンの練習する音色が聞こえる。彼は母親や周囲から、強く期待されるほどの天才だった。普段と変わらない日常の光景から、段々と天才少年の心の中へ入っていくような短編現代ドラマ。
朝吹さんは私が主催の同題異話で初めての参加ですが、その前の香鳴さんの同題異話SRではよく参加していたようです。また、こちらも別の自主企画『第55回「2000文字以内でお題に挑戦!」企画』の「夕方五時のリズム」がお題の時の参加作品です。
こちらは二千文字ぴったりですが、「わたし」という普通の女の子とヴァイオリンの天才少年・慧くんそれぞれの語りによる二部構成となっています。「わたし」の語りが等身大で伸びやかな分、慧くんの大人びて淡々としていてる語りが対比になっています。
干渉など挟まずに、スパンと語られる慧くんの過去がなかなか強烈です。私が同じ事を書こうとすれば、これでもかと装飾してしまいそうですが、そこの潔さが好きです。それでいて、彼が奏でる音色は、溜息が出るほど美しく描写されていました。
持つ人・持たない人、の対比も、非常に印象的です。ピアノを挫折した「わたし」とヴァイオリンを幼いころから続けている慧くんはもちろんですが、他のところでも対比が見え隠れしています。
「わたし」は慧くんにその無邪気さで近寄り、和ませることはできるのでしょうが、きっと、本当の意味で癒せるのとは違う気がしました。では、彼の本当の理解者は——と考えると、恐ろしいのか悲しいのか、はたまた喜ばしいのか、自分でも言葉にしづらい胸の痛みを覚えました。
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