黒中光「いつまでも輝く母へ」
・黒中光「いつまでも輝く母へ」
→https://kakuyomu.jp/works/16818093078042312747
「わたし」の六十歳になる母は、突然の脳出血で倒れて、そのまま還らぬ人となった。葬式も終わった頃、仏壇に置いていた母の骨壺が光り始めた。死者と生者の関わりを淡々と描いた、少しシュールな現代ファンタジー。
黒中さんは、初期の同題異話、同題異話SRにも積極的に参加してくださっている方です。十代二十代の若い男女の、奇麗なばかりじゃない部分を丁寧に描いた心理描写が印象的です。
本作は、私が読んだ黒中さんの作品の中では、主人公の年齢が高めだという印象を受けました。いや、実際に年齢を明言されていないのですが、母親の年齢から逆算した結果です。だからなのか、ありえない現象にも動じず、淡々としているように見えました。
とはいえ、彼女は彼女なりに心の整理をつけているのかもしれないので、そのあとの弟夫婦とのやり取りはハラハラします。ただ、現象が現象だけに、どこか間が抜けていますが。
亡くなった人が起こす怪奇現象はいろいろありますが、骨壺が光る、というのは非常に絶妙だと思います。怖くないし、迷惑でもない。だからこそ、これを起こしている「母親」との向き合い方にフォーカスしていきます。
「死こそが最大の理不尽である」と、誰かが言っていたような気がしますが、「最愛の人の突然の詩」を乗り越えた今だからこそ、何気ない日常を大切にしたいという意志を強く感じます。たとえ、この日常も、永遠に続くものではないとしても……そう感じられて、少し切ない終わり方でした。
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