森陰五十鈴「いつまでも輝く母へ」
・森陰五十鈴「いつまでも輝く母へ」
→https://kakuyomu.jp/works/16818093077285297567
養護施設で育った少女・ダリアは、現在妊娠中の新婚。実は生きていると知らされた実の母に、彼女は一人で会いに行ったのだが……。これから母親になる少女と、実の母親とのやりとりから親子の複雑さが見えてくるショートショート。
先月の「真新しい靴がステップ」に引き続いて、森陰さんのご参加です。「真新しい靴がステップ」は、デビュタントを迎えた貴族の娘が主人公でしたが、今回は、異国の昔が舞台の、一人の少女の物語です。
本作も、女性、というよりも、女の子、と言えるような歳の子の心理描写が抜群です。「十七歳の妊婦」(作中世界の常識では問題ないそうです)という、子供だけど大人、という絶妙な揺らぎが、ビシバシ伝わってきます。
作中世界の成人年齢は不明ですが、まだダリアは子供のようにも感じられます。母の態度や言葉に凄く動揺していますが、もう少し年齢を重ねていたら、すっぱり割り切れていたかもしれません。ですから、私の主観ですが、まだ幼さを残しているという印象でした。
救いとなる点は、夫のジェドがとても優しいという所ですね。的外れな部分もありますが、彼女のことを思い、そっと寄り添ってあります。まあ、周囲がどれだけ優しくて温かくても、「実の母の言葉」は、とても深く心の傷として残りそうな気もしますが……。
だから、ダリアが自分で自分を救うためには、母を乗り越える事なんだと思います。それはラストの数行にも集約されています。「いつまでも輝く母へ」というタイトル回収もこういう形なのかと、納得感もある終わり方でした。
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