清瀬六朗「いつまでも輝く母へ」


・清瀬六朗「いつまでも輝く母へ」

https://kakuyomu.jp/works/16818093077161365935


 普通の会社員である「私」には、年齢も生活水準も全く違う友人・久美子がいる。あるカフェテリアにて、久美子から、「自分の母がモデルを引退する」という愚痴を受けた。三人の女性の不思議な関わりを描いた現代ドラマ。

 清瀬さんは『真新しい靴がステップ』に引き続いての参加です。三人称目線での女子高校生の物語だった『真新しい靴がステップ』でしたが、今回は社会人女性の一人称目線です。主人公などの変化だけでなく、その変化も楽しませていただきました。


 本作は「アキ」という短編の続編ですが、こちらを読んでいなくても大丈夫でした。ただ、主人公の名前が「アキ」ということは、把握していてもいいかもしれません。

 一番目を引くのはアキと久美子の関係です。年齢も違う、育った環境も違う、友達にしては、アキから何でも言えるわけでもなく、しかし、恋愛関係では決してない。この関係は中々言い表せないのですが、最終話のアキの独白で、何もかもがすとんと落ちた気がします。


 久美子の性格を「なまいき」と評されていましたが、それがぴったりです。無自覚に周りを振り回すけれど、なんだか愛嬌があって許してしまう。大変さのベクトルは違いますが、伊坂さんの『チルドレン』の陣内さんを思い出しました。

 そして、そんな娘の母親ですが、彼女もまた曲者。ものすごく長いスパンで物事を見ています。目標達成のためには労力を惜しまず、しかし、意外と柔軟……何か、彼女の中に芯があるのだろうと思える人物像でした。


 私はアパレルどころか、服の種類も全然分からないほどの門外漢でしたが、そこら辺の説明もちゃんとしていて、学びながら読み進めていきました。特に、蚕と絹について詳しく描かれていて、なんで着物がこんなに高いのかに納得できました。

 時間と労力をかける=良いものが出来る、とは限らないのですが、作ることに関するこだわりが、ストレートに完成品に繋がるのがアパレル界なのかもしれません。それがまた、人の心のにも影響しているのだと感じられました。




















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