独りぼっちの独白

通里 恭也

私という人間

 自分は何者にもなれない。どうしようもなく、日々をただなんとなく刹那的に生きている。1年後がどうだとか以前に、明日のことさえあまり考えていない。時間の浪費ろうひ、無駄。何ができるわけでもない。だから何者にもなれない。

 昔からこうだった訳ではない、幼い頃は夢に満ち溢れていた。未来に可能性を感じていた。好きなこと、得意な事から幾度となく夢を見てきた。でも夢は所詮夢。叶いはしない。叶わないから夢なのだ。

 私はいつも独りだった。他人との関わりと絶ってきたわけでもないのに、気づけば最後は独りきり。誰も、私に寄り添ってはくれない。誰も、私を理解してくれない。

 独りが好きな訳では無い。むしろ嫌いだ。それでも私は独りであることが非常に多かった。

 以前に1度だけ、高校の頃から10年以上友人関係が続いていた人と男女の関係になったことがある。しかし、その関係は半年と持たずに崩壊した。

「君の気持ちが理解できなかった。一緒に居て、しんどくなっちゃった。1人のほうが良かった」

 そう言われた。特に喧嘩したとか、そういったことも無く、ある日、突然。

 友人関係に戻ることもなく、彼女とはそれっきり連絡も取っていない。友人としてなら良かったのかもしれない。いや良かったのだろう。少なくとも10年以上友人付き合いができる程度には。そう思わなければやっていられない。ようやく理解してもらえる人が出来たのではないかと、舞い上がっていた。振られるまでの半年は私にとって最も幸せな時だった。今でもそう感じている。

 そんな長年の付き合いから急に出てきた拒絶。絶望を感じるにはあまりに易かった。けれどどんなに辛くても、胸を締め付けられても、不思議と心が折れたりはしなかった。

 ただ、心の何処かで「やっぱりか」と感じていた。

 学生時代に受けていたいじめ、傍若無人で自分本位を体現するような1人だけの。そんな環境で孤独を感じ育った。もはや孤独に親しみすら感じる。それでも慣れない。今でも淋しさは消えない。それどころか年々淋しさが増大しているようにさえ思える。

 そんな淋しさの紛らわしになればとマッチングアプリに手を出したこともある。数人と実際会うことも出来た。でも駄目だった。やっと会えたと思った人は金銭を対価に身体を売りたい人だったし、アプリ内で話をした人も「アプリで話せれば十分で会う気はない」なんて人が一定数居た。

 私は理解した。まともな人はマッチングアプリなんてやらないのだと。ならばと婚活パーティーに参加したりもした。とはいえ話すのが苦手というわけではないが口下手だし、そもそも目立つ行動が苦手、いわゆる陰キャと呼ばれるような部類であり、結局はあまり話が弾まず終わった。それでも何度かは参加したのだ。でも、カップルが成立するのは話し上手でよく目立つリーダー性のある人ばかり。

 めげずに参加し続ければいい出会いがあったかもしれないけれど、私は諦めてしまった。疎外感そがいかんに耐えられなかった。

 ならばいっそ、金で買ったらどうかと考えたこともある。そして得られたのは虚しさと更なる孤独感。自ら命を断つようなことも出来ずにただただ毎日を孤独に生きる。未来は考えない。考えたくもない。

 未来に絶望するくらいなら今だけを見て絶望している方がマシだと、本気出そう考えている。

 そんな私ではあるが、今の仕事では過分な評価を得られている。職場の人達との関係も悪くはない。どちらかといえば良い方だろう。義理堅く仕事に対して真摯に生きてきたお陰だろうか。最も、それで孤独感が減るわけでもないが。

 結局のところ、私は自分に酔っているのだろう。自分を勝手に不幸だと思い込み、孤独で哀れな存在で救われるべきなのだと。そんな人間に救いようなどないのに

 救われたいなら行動に起こすべきだということもわかっている。わかっているけれど、一度諦めてしまったものにもう一度希望を持つのは難しい。「どうせ駄目だ」「また傷つくだけだ」そう足踏みをしてしまう。

 裏切られたなんて自分勝手な言い方だけれど、付き合った彼女にしても、マッチングアプリで出会った人や婚活で話が弾んだ人にしてもどこかで期待してしまっていた。だから裏切られたなんて気持ちになるし、悲しくなってくる。だから他人ひとが怖い。また裏切られるのではないかとそう思ってしまうから。そうして自ら独りで居る節もある。そのくせ淋しくて仕方なくて、人肌が恋しくて。そんな自分勝手な考えが大嫌いな父親と重なって見えて自己嫌悪にもなって。

 感情と思考の袋小路。逃げ場なんて無い。頭がうまく働かない、考えが纏まらない。淋しい。

 どうせまた虚しくなるだけなのに、お金で人肌を得てしまいたくなることが幾度とある。思いながらもそうしないのは単に懐が淋しいから。もし有り余る財力があったら毎日のように求めていたかもしれない。

 こうして御託を並べたところで何も変わらない。明日も、明後日も、来年も、ずっと永遠に。

 私は何者にもならずに、独りで生きていくのだろう。いつか死ぬその時まで。

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