3ー4

AM 0:00 すすきの


 第三グリーンビルの屋上から、ラフィラの上空を揺蕩う亡霊を眺めながら、交戦を開始する。

 かろうじて、歩ける足場があるが、いつ野次馬が集まるのかが分からない。

 だが、その前に決着をつけるまでの時間的な猶予はある。その前に、私がここから降りればそれで良いのだ。


「もう十分、気が済んだだろう? なら、ここで殺さなくちゃな!!」


 私は、眼鏡を外す。そして、魔具を展開する。


「呪え!『ダーインスレイヴ』!!」


 私の声と共に、眼鏡が姿を変え、ダーインスレイヴが展開される。そして、私が鞘を抜くと、禍々しい目が開眼される。

 目を閉じる。目を開けると、霊たちに霊体からだから、魔力を視認される。


「やはりそうか。あの霊体は、魔力が混じっていたか」


 私は、疑念が確信に変わると、迷わす霊に向けて攻撃を仕掛ける。奴は笑みを浮かべて他の霊達に攻撃するように命じる。だが、それが命運を分けることも知らずに。

 襲ってくる霊に向けて、ダーインスレイヴで迎撃する。すると、少女の霊が斬れ、彼女を形成していた魔力もダーインスレイヴに食われる。


『――――――――――!!』


 亡霊が、呻き出す。どうやら、これらの霊達は奴と同位体のようだ。だが、私は手を緩めることなく次々と、少女の霊を斬る。

 奴もそうさせまいと、念力で私を妨害する。私はすぐにそれを避け、電光看板の上に着地する。

 今の私の目には、奴の念力でさえ、攻撃の軌道が見える。彼女達の霊もそうだ。彼女達の魂を縛る魔力の核を視認することで、彼女達を斬ることが可能になる。


『――――ろす! 殺す! 殺す殺す殺す!!』


「ほう? 仲間を斬られて、同時に自分のダメージを受けてることに怒りが隠せんか? なら、さらに苦痛を与えてやる!!」


 私は、さらに少女の霊を斬る。彼女は、虚の目のまま、消滅していく。その度に、奴もダメージをくらい、呻き声を上げる。

 すると、奴は念力をさらに高めた攻撃を繰り出す。それを前に、私は術式を唱える。


「『グリモワル真書 第43節 『軌道干渉』【遮断】』!!」


 奴から放出された念力が、私を直撃する前に消滅する。そう見えるが、その実は念力の軌道を私よりも前で遮断されるように、攻撃の軌道に干渉しただけだ。

 残る少女の霊は、5体。だが、グリーンビルとすすきのビルの間には、交番がある。私は、そこを飛び越える。だが、距離が若干足りないので、私は左手にグレイプニルを展開し、炎の鎖を照明に巻き付ける。

 そして、遠心力を用いて飛び、すすきのビルに着地する。

 亡霊もまた、迎撃を行う。だが、私は少女の霊は容赦なく斬り捨てる。その度に、奴はまた呻き声を上げる。


「これで残りは3つか。だが、残りはラフィラにいるわけか」


 私は、下を見下ろす。どうやら、今度はラフィラからすすきのビルは、結構な距離がある。おそらく、さっきのようなグレイプニルを使っての飛び移りは不可能だろう。

 ふと後ろを見る。ここから駆け抜ければ、魔術を用いれば行けるかもしれない。

 そうと決めた私は走りだし、ラフィラに向けて飛び込む。そして、それと同時に、魔術を唱えた。


「『グリモワル真書 第30節 瞬走跳躍』」


 術式を唱えたと同時に、跳躍をする。そして、勢いをそのままにラフィラの屋上に向けて進む。だが、屋上には強い障壁があり、今の速度では確実に衝突し、その反動で私の体は粉々に四散する。

 そうなる前に私は、ダーインスレイヴで障壁を破る。

 そして、ダーインスレイヴが蓄積した魔力によって、奴が展開した障壁が破壊された。着地体制に入った私は、ラフィラに着地する。

 だが、勢いが強く、速度を抑えようと体を傾ける。ダーインスレイヴを刺し、私はなんとか速度を抑える。

 そして、顔をあげ、奴との戦闘を続行する。奴は、私の目を見ると、怯え出す。


『来るな!! 来るな来るな!!』


「どうした? 私を死に追いやった勢いはどうした!?」


 私は、足を進める。その度に奴は、使役している霊を使って妨害する。

 だが、その霊達は次々と斬られ、消滅していく。やがて、全ての少女達の霊が消えていき、残るは奴1人となった。


『――――!!』


「さて、残るは貴様1人だ。どうする? 大人しく祓われるか? それとも、まだ足掻くか?」


 私は、ダーインスレイヴを奴に向けて構える。すると、奴は抵抗するように、屋上にある廃材を利用して私に向けて放つ。

 だが、私はそれを避ける。そして、奴はさらに廃材を私に向けて放つ。


「どうした? その程度では、私を殺せなんてしないぞ?」


 私の挑発に、奴はさらに激昂をする。


『潰れろ!! 潰れろ潰れろ!! 潰れろ!!』


 奴の叫びによって、廃材が次々と私に向けて放たれる。だが、私はそれらを悉く迎撃する。

 それを見た亡霊は、怯えながらさらに念力を放つ。私の左腕を捻り出すが、それをダーインスレイヴで断ち切る。

 奴はさらに怯えだし、念力を四方に放つ。


「うざったいな」


 私は、四方に放たれた念力を全て斬り捨てる。そして、今度を私が魔術を用いて奴の首を苦しめる。


『あ、あが……あがが……』


「どうだ? 苦しいだろう? だが、お前が自殺させた子達は、さぞ無念であったろうな?」


『や、やめて!!』


「この後に及んで、命乞いか? だが、貴様はダメだ。貴様はそれをする権利などないんだよ」


 奴は、私の拘束を解き、さらには悪あがきと捉えてもいいような攻撃をする。


『死ね!! 死ね!! お前なんて、死んでしまえ!!!』


 奴は、さらに強い念力を四方に放つ。私はそれを避けるが、これ以上の戦闘は危険だろうと判断し、私は決着をつけることにする。

 そして、ダーインスレイヴを携え、亡霊の首に向けて斬りつける。


『あっ……』


「死ぬのはお前だ」


 首を斬られたことで、亡霊は消滅していく。私はそれを見届ける。

 煙草を口に加え、空を見上げながら一服をする。


『これで、あれの運命は決定付いた。お前は、本元を間接的に殺すことになるな』


 奴の声が聞こえる。どうやら、私と亡霊の戦いを見ていたようだ。


「それならそれでいいさ。後は本人次第だ。私ができることは、もうないよ」


『お前は甘いな。だが、それで良いなら好きにするが良い。お前が永劫、苦しむことになろうとも、後悔はするなよ』


「あぁ。後悔はしないよ。今まで何度もそれを見てきたんだ。もう慣れっこさ」


 私の答えに、『魔女やつ』は笑みを浮かべる。どうやら、その答えだけを聞きたいだけだったようだ

 

『フフフ……。好きにするがいい……。お前がそうしたいならな』


 奴の声が消えていく。私は、吸い終わった煙草を携帯灰皿にしまう。そして、私はラフィラから降りる。

 ラフィラから降りると、スマホから電話が来ている。私はそれを応答する。


「もしもし?」


『もしもし? 僕だよ? リリアンヌ議長だよ?』


 電話の相手は、最悪だった。意外にもリリィがかけてきたようだ。


「はいはい。なんのよう?」


『軽いなぁ〜。それで? どうなの? 例の事件は?』


「もう終わるよ。今、殺したよ」


『やっぱり、みにくいアヒルの子はみにくいアヒルの子のままだったか』


 リリィの言葉に、私は驚く。何かを知ってるみたいな感じがしたのだ。だが、もう答えを知ってる私はあえて乗る。

 

「そうだね。だが、彼女は白鳥にもなれただろう。でも、そうならなかったんだ」


『だから、彼女は死ぬしかなかったんだね。加害者の皮を被されたまま加害者になったのだから』


「あぁ。でも、これでよかったんだろう。己が過ちを理解してその後をどうするかってね」


『なら、僕らがすることはないね。わかったよそれじゃ』


 簡潔に返事をし、リリィは電話を切る。呆れながら突っ込む美羽の声が電話越しに聞こえてきた。

 さてっとと思い、私はコンビニによる。こうして、私はラスティア達のことを待つのだった。

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