3ー5

AM 1:00 すすきの


 ラフィラの工事現場の前で、ラスティアの連絡を待ちながら、缶コーヒーを飲みながら待つ。

 少し時間を置き、煙草を吸いながら一服もする。しばらく待ってると、少し奇抜な格好をした女性が近づいてきた。


「あの……。隣いいですか?」


「すまないが、他を当たってくれ。今は人を待ってるんだ」


 私が断ると、その女性は笑みを浮かべる。すると、聞き覚えのある声が聞こえる。


「フフフ……。やっぱり、すぐに断ると思ってたわ」


「まさか……、『仮面の魔女ジャンヌ』か!?」


「単純ね、アル。まぁ、ファッションに頓着なあなたじゃわからないでしょうね?」


 女性の正体は、『仮面の魔女ジャンヌ』だった。どうやら、普段とは見られない格好したようだ。


「なんだい? その格好は? 随分奇抜じゃないか?」


「巷じゃはやってるファッションよ。深夜の街の情報収集には、うってつけよ。ホストなんて、これでイチコロですもの」


「言ってることが、ろくでもない女にしか聞こえないんだけど? それより、何のよう?」

 

仮面の魔女ジャンヌ』は、私の質問に答える。不敵な笑みを浮かべながら、話し始める。


「先に、あれとの戦いを聞きたくてね。それで? ちゃんと助けころしたの?」


「あぁ、ラフィラに棲む亡霊とやらは殺したよ。後は、元の人物がどうするかだ」


「なるほど、後は当人に任せるってわけね。あなたも非情ね。いつもは、人を助けるためだけに過剰に動くお人好しなのにね」


「こればかりは私の手は不要さ。そこまでやってしまえば、エゴと変わらないよ」


仮面の魔女ジャンヌ』は、私の問いに笑みを浮かべる。そして、缶の酎ハイをストローで飲み出す。


「……いい飲み方じゃないわね。酒が直で喉に通っていく感じがして不快だわ」


「なら、しなきゃいいでしょうよ」


「そうね」


仮面の魔女ジャンヌ』は、嫌そうな顔をして酎ハイを飲む。私は、もう一本煙草を吸い始める。


「結局、彼女達はなぜ自殺をしたんだろうか?」


「さぁ? それは当人達しかわからないことよ。でも、今回に関してはそれすらわからないわね」


「そうだね。今回に関しては、奴に誘われ、彼女達は自殺した。でも、それは側から見てからの話さ。別の観点を見ると、この自殺は『他殺』になる。

 その内、誰かが彼女達の死を正当化しようするだろう。でも、それは無理な話さ。彼女達は、自分の意思とは反して自殺したのだから」


「なるほど。結局は理由のない自殺はしてしまった以上、誰も追及することができない。追及しても、所詮はエゴというわけね」


「あぁ。でも、人って生き物は、そうするだろう。それが初めから破綻したことになってもな。そうすることで、死という事実を忘れられるだから」


「人ってのは、そういう時に限って、動くものね。それが、彼女達の死を冒涜することになり得ないのにね」


「全くだ。気づいた時には遅いのにね」


 私と『仮面の魔女ジャンヌ』は、皮肉を混じるながら話し合う。どうなに正当化されようと、死んだという事実は変えれないのだから。

 煙草を吸い終えれると、『仮面の魔女ジャンヌ』はいつもの姿に戻る。そして、亜空間を開き、そのまま去ろうとする。


「それじゃね、アル。明日、待ってるから」


「あぁ。またね、『仮面の魔女ジャンヌ』」


 私は、『仮面の魔女ジャンヌ』を見届けながら、コーヒーを飲む。

 しばらくしていると、ラスティアの車が来たので、手を振る。こうして、私は家に帰るのだった。




 ――――――――――――――――――――――――


AM 0:45 とある病院


「――――――――!!」


 悪夢で目が覚める。息を荒げながら、自分の首を触る。確かに、自分の首をつながっている。だが、あの夢はまさに私の首を斬る夢だった。


「はぁ……。はぁ……」


 体から、すごく汗が垂れる。相当悪い夢でも見たに違いない。息を荒げながら、音がした方向に声をかける。


「誰?」


「誰って? 少なくとも君とは初対面さ」


「じゃあ、あなたは、魔術師なの?」


「そうだね。でも、あくまで個人でやってる人間さ」


「なら、あなたは敵ね? それとも味方?」


「さぁね。どちらかというと、敵でもなし、味方でもない。とある人物の頼みで、見舞いに来たってところかな?」


 私は、声の方向に向けて話す。どうやら、私の見舞いに来た見たいだ。でも、私はそれが見えない。そう、私は目が見えないのだ。

 こうして声の方向を聞き分けないと、誰かと会話ができない。それも、病のせいだ。私は重病によって目が見えない。もう何年も、こういう生活をしているので、なれている。


「話を聞かせてもらえないでしょうか? 『桐崎悠美』さん。あなたが、幽体離脱した経緯を」


 別の女性の人の声が聞こえ、声が聞こえた方角に振り向く。どうやら、彼女は私の近くに座っていたようだ。

 私は、彼女の方向を振り向き、頷く。声の主は、さっきとは違って、優しくて心地よい声だった。


「はい。私から知りたいことがあれば、何度でも」


 私は、彼女の声に従い、事の顛末を話し始める。何はともあれ、私がやったことは許されざる行為なのは変わらない。

 こうして私は、彼女に向かって話し始めるのだった。

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