おまけ2
おまけ 少女漫画のおまけ漫画のようなもの
※麦およびパンがほぼ出ないおまけです
こんばんは。私はエミリア・ベーカー。恋に恋する十四歳。見習い調術師です。長かった春の感謝祭はジャスくんからの謎の勧誘に終わり、無事にブレストフォード西調術所に帰着です。
「じゃ、エマっち、考えといて」
見送りを終えたジャスくんにまた恭しく右手の指輪にキスをされました。何考えてるか分からない人だと思っていたけれど、本当に何を考えているのか分からない。
「……はい」
最強のパンを作る、それは少しだけワクワクとする提案でした。
「あ、好きって言ったのも忘れな……いや忘れられるの興奮するな?」
「気づきを得ないでください?」
どこからどこまでが冗談なのやら。私の好み(聡明で落ち着いた優しい研究職お兄さん)とは正反対のタイプのお方ですが、不覚にも、時折見せる真剣な表情はたしかに格好いい気がします。
「まあゆっくり放置でも良いし、罵りながら断ってくれるのもアリだし。とりま次の休み激ヤバエリアに珍しい野生種の麦取りに行く?」
紛うことなき格好よさです。
これには私も参ってしまいます。
「はい! ああ、お見送りしてもらってそのまま帰すのもなんですからね! ほら上がって上がって!」
調術所に入ると、舞踏会サボり魔……好みのタイプの憧れの人アマリさんがにこにこと出迎えてくれました。
「おかえり。楽しかった?」
なんて素敵な光景。舞踏会サボり魔でありがとうございます。歓喜のままにぎゅうっとハグをすると甘い麦菓子のような良い匂いがする気がします。
「おわ!?」
何やらジャスくんが驚いています。
「なんでここ居んの!? あ、サボるって言ってた言ってた!! 有言実行!?」
「あ、うん……。そっか、ええと、お見送り偉いね。すみません」
「青春タイム中に上司的な人との気まずい遭遇ってご褒美じゃんね!?」
「なんかほんとごめんね」
「ありがとう!」
アマリさんは目を逸らします。枯れた麦のような弱々しい声です。日頃常識から全力で逸脱してる人に怒られる(?)って、結構なことですもんね。
「……ん? え? じゃっ、てことは?」
ジャスくんが何かを考え込み、そして閃いたようにポンと手を叩きます。何かろくでもないことを考えてそうな、ニヤリとした笑み。
「アマリ様ってば舞踏会サボってお師匠と遊んでたの? やるね?」
はて?
数秒後、何やら耳まで真っ赤になってアマリさんが固まりました。
「…………違うよ!? 調合したりエマのこと話してたりしただけだよ!?」
「その反応は好きなんじゃん? 鎌かけ成功!」
「なっ!? ななななんのことかな!?」
「図星八つ当たり怒られ期待! 罵りをどうぞ!」
「本っっ当にタチが悪いな君は!!」
「ありがとう!」
え? なに?
話が見えてきませんが、先生と私のことを話してたって、一体なんでしょう。
「遅かったな」
そして奥からいつもの無表情でお出迎えのジーン先生。でもちょっぴり心配されていたことは分かりますよ。
「今ちょっと来ないで!」
「ええと、とりあえず、爆烈パン作ります?」
「とりあえずで作るもんじゃないだろ」
本日はもう遅いからと、残りのパンを食べ終了。
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