第三話

陽の家に住むことが決まってからは少し忙しかった。今まで住んでたアパートを解約して、陽の家にもっていく荷物と捨ててしまうものとで分け、陽の家には家具が一通りそろっているので私の家で使っていた椅子や机などは処分することにした。もちろん布団も捨てた。なのでもっていくものは衣服類が主になったがもともと陽の家にある程度の数の服はあるので陽と一緒にもっていけば一往復で済むくらいの荷物量になった。陽から部屋を一室もらったので春服や夏服をハンガーラックに掛けて冬服など当分着ないものはクローゼットに設置された収納にしまった。朝から引っ越しをしたので諸々終わったのがお昼過ぎになってしまったのでお昼ご飯を作ることにした。最近は編集作業や大学の課題などで買い物にも行けず、なかなか料理の時間を取ることができなかった。しかし陽の家の冷蔵庫には私が料理をする用に食材が保存されているので、レシピさえあればなんでも作れそうだ。冷蔵庫を物色しているとうなぎがあったのでお昼ご飯はうなぎにしようと思った。うなぎのかば焼きを卵でとじて、うなたま丼にして食べた。

「ほんとに料理上手だね。詩乃ちゃん。」

「昔からやらされてたからね...。」

私は幼いころから母に料理を教わっていたので、中学生の時には仕事で忙しい母の代わりに私が晩御飯を作っていた。高校からはお弁当も自分で作っていたため、ついでに陽の分も3年間作っていたのだ。なので陽の好みは知り尽くしている。陽はおいしいときはちゃんとおいしいと言ってくれるので、料理をするのがさらに楽しみになった。せっかくなので今日の夜ご飯は凝ろうと思ってスマホの料理アプリでいいのがないかスクロールして探す。午後は三時間くらい動画撮影をしてから動画編集をそのまますると言って陽が部屋にこもってしまったので、早めに晩御飯の準備をすることにした。晩御飯はオムライスにビーフシチューをかけたものに決めたのでまずはビーフシチューを作る。できれば一日置くのがベストだが時間がないので早めに作って熱が冷めたら冷蔵庫で2、3時間寝かすことにする。あとはケチャップライスと卵を焼くだけにして、自

分の部屋に戻って、久々の暇な時間を楽しんだ。

お腹が減ってきたので冷蔵庫からビーフシチューを取り出して、弱火でじっくり加熱する。ビーフシチューを温めている横でケチャップライスを作り、卵を焼く。テレビで見るような半月型のオムレツにはできないので卵は少し薄めになってしまった。付け合わせのサラダを用意しているとくたびれた様子の陽が部屋から出てきた。

「つがれたーーー、あとサムネイルだけやったら投稿できそう。」

「おつかれさま。ご飯できてるよ。」

「オムライスだ!ビーフシチューもかかってる!」

料理をテーブルに運んで私が座ると陽は勢いよく食べ始めた。陽はたくさん食べるので多めによそったつもりなのだがどんどん減っていく。私の二倍くらいの量なのに私より早く食べ終わった。

「おかわりいる?」

「いやちょうどいい量だったよ。おいしかった、ごちそうさま。じゃあサムネイル作ってくるね。」とお皿をシンクにおいて部屋へ戻っていった。洗い物は食洗器があるのでそれに任せて、テレビを見て時間をつぶそうかと思ったが番組表をみてもあまり惹かれるのがなかったため、陽の手伝いをしようかと、陽の部屋のドアをノックする。が反応がないのでドアを開けると、陽はヘッドフォンをしてモニターの前でサムネイルを作っていた。邪魔しては悪いので一度戻って、ジュースをコップに入れて陽の部屋に戻る。するとちょうどサムネイル作りが終わったようで、

こっちを振り返った。

「わっ!びっくりした。どうしたの?」

「集中してたからオレンジジュースでも持っていこうかなって」

「詩乃ちゃんありがと!」

私からコップを受け取ると一気に飲み干した。そのあとお風呂を沸かして私のお願い通り髪を洗ってもらうことにした。

「じゃあ、洗うね」

「よろしく~」

陽が優しく私の髪の毛を洗ってくれている。ちょうどいい強さで気持ちよくて眠くなってきた。

そのまま陽にされるがままにいると、陽がシャワーで髪の毛を流し始めた。終わってしまって残念だなと思ってしまった。そのあと体を洗ってからはまた一緒に湯舟に浸かり、今回は同じタイミングで出た。髪を拭こうとタオルを取ろうとすると、タオルを先に陽がとって私の髪をわしゃわしゃと拭いてくれた。そのあとのドライヤーもやってくれた。私の髪の毛は長いので大変なのに陽は楽しそうに乾かしていた。そのあと保湿とかいろいろやった後は今日は疲れてしまったし明日は大学なので寝ることにした。ちなみに長年連れ添ってきた抱き枕は中の綿がでできてしまったので引っ越すタイミングで捨ててしまった。完全に陽に頼らざるを得なくなってしまった。

おやすみとだけ言い陽に抱き着いて寝た。


-------------------------------------------------------------------------------------------------------------

次回は陽視点に行きます。(多分)




  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る