序章 勇者パーティに入るには
第1話 世界が救われた戦い
俺たちは今、魔王の前に立っている
何も問題ない。俺には大切な仲間が、そして勇者アークがいる
勇者アークだけが凄いんじゃあない。
勇者アークの仲間が、めちゃくちゃ頼りになる奴らで
こんな俺でも立派に世界を救う一歩手前まで来れた
俺の大親友、勇者アークは色んな仲間に出会った。
彼は生まれ育った村で、シスター・マリアと出会った。
可愛くて奇麗で優しくて、アークのお姉さんのような存在。
んで、次。
アークは闘技場で勇者としてのアピールをすることになるんだけど、そこで戦った戦士が、実はウラヌ王国の王子だった。
彼の名前は、ギルガメット。ギルガメット・ウラヌスが正式名称だっけ。王族のことは良く知らない。
熱いくらいに国を愛する男、ギルガメットは俺とそれなりの友達だ。
その直後、確かサラド大地でウェストプロアリス大陸の魔王軍の幹部と戦うことになったんだけど、そこで乱入してきた美少女が居た。
で、その女の子の正体は、兄を追ってきた妹、美姫・フレデリカ。
それからモルリア諸侯連合で出会った、女大好き修行僧ダーマン。
寡黙で固い頭のお坊さん、のように見えて煩悩の塊。
途中までマリアを狙ってた。フレデリカも狙ってた。
流石の俺もこいつには頭を抱えていた。ってか、アークは知らないけど、こいつは港やら街やら村で女を漁ってた。
こいつ、平和になった後で、…いや、その話は良いか。
さて次。妖艶なる魔女、緑炎の魔女・イザベル
迷いの森の更に奥、黒い森で出会った年齢不詳の女魔法使い。
悪魔的な美しさ、悪魔的なスタイル。悪魔的な色香。
ダーマンなど、彼女を見た瞬間、卒倒してしまったくらいだ。
彼女のお陰でダーマンは大人しくなってくれたんだけど、大人しくというか虜と言うか…。彼女が何歳だったか、結局は聞けずじまいだったっけ。
そして親友であり、神に導かれし勇者・アーク。
女神アリスの加護を受けた装備を纏えるのはあいつだけ。
このゴッドアイテムを集める旅も本当に苦労した。
んで、俺。勇者アークに対して盗みを働いた男、盗賊レプト。
当時は本当に大変で、何処かから金目のもの、食べ物を盗まないと生きて行けなかった。
ま、お陰で盗賊スキルは身についてたんだけど…、こんな俺でも勇者アークは親友と呼んでくれた。
…以上の七人が、魔王を倒す勇者一行だけど、忘れてはいけない。ここに来てない仲間たちもいる。
エルフ、ドワーフ、ドラゴン、獣人。色んな人たちと旅の中で出会った。
俺は戦い慣れた六人を選んだけど、他の仲間も一緒に来てくれただろう。
絶対に誰も死なせたくなかったから、定石通りの戦いが出来る仲間だけを、勇者アークが選んだ。
エルフのノノは泣いてたっけな。
この後、アークと一緒に謝りに行く予定だ。
──でも
「全てはお前を倒した後だ。アングルブーザー‼」
「なーにーを戯けたことを……。この我が。邪神の洗礼を受けた我が……、——人間共に殺されるなど、あってはならぬぅぅぅぅぅぅぅ‼」
血走った目、怒りの咆哮が大きな岩をも吹き飛ばす。
だが、俺達は逃げたりしない。暴風の中でだって前に進める。
それが勇気を持つ者の証、英雄であり、ヒーローだ。
アークと頼りになる仲間がいるから、俺だってこの程度で怖気づいたりしない。
絶対にこいつを倒す。死んでいった仲間の為にも。
「アシュリー…。もうすぐ、君が望んだ未来がやってくるよ」
アシュリーだけじゃない。アイシャ、ガロ、ブレン、ズーズ、カミラ…
仲間を死なせてしまったのは、未熟だった俺たちのせいだ。
アークは頑張ったんだ。俺は…、どうだったっけ…
いや、今は何も考えるな。…殺したのはこいつら魔族だ‼
「アーク‼大丈夫⁉」
「気持ちは分かるぜ、アーク。ぼーっとすんなよ。ってか魔王アングルブーザーはもう二回変形しているよな。こいつって、まだ変身するのか?」
「伝承ではここまでの筈よ。どっちかって言うと、これが魔王の真の姿なんじゃない?禍々しさが桁違いよ。」
常人なら、見ただけで死んでしまうかもしれない。
巨悪の元凶である魔王が、怒り狂って全身から体液を吹き出している。
「つまり、ここで今までは…」
「アーク‼魔王は追い込まれているわ。」
エルフの女王に聞いた話では、過去何度か魔王アングルブーザーはこの世界に現れている。
そして今までは、エルフとドワーフ、そして人間たちで封印している。
伝承では魔王の変身は二度まで、今回もそうかは分からないけど。
「すげぇ…な。こんなのやれんのか?」
全身から溶岩を吹き出す第三形態だ。
倒せる気がしない。今までだって倒すことは出来なかった。
でも、今回は…
「先人たちが残してくれた知恵。そして意地を我々が成就させるんだ。なぁ、アーク‼」
「あぁ、その通りだ。それにしても…。みんな、ここまでついて来てくれてありがとうな」
「何を今更。拙者はアーク殿に唆されただけですぞ」
「私もね。最初は秘薬の素材にしてやろうと思っていたんだけどねぇ」
「うわ…。あの時のイザベルさんならやりかねないですね」
溶岩の海、炎を纏った暴風の中、光の女神の加護を受けたアークたちは余裕の笑みを見せる。
「認めぬ…。断じて認めぬ…。我は世界を統べる魔王なり‼分かっているぞ。そのクリスタルで我を封印するのだろう?たかが二千年の封印など、我にとっては丁度良い睡眠でしかないわ。じゃがな。今はまだ…、眠気の一つも来とらんわ‼」
背中から生えた左右二本の腕は、それぞれ属性が違う。
二番目の形態とは違って、体の大きさはやや小さめであるが、それでも竜山の長老よりも遥かに大きい。
正に、世界の悪を統べる者の風格だ。
そのこの世の闇の頂点に君臨する化け物が、今から大技を繰り出さんとする。
おそらく、このタイミングで先人たちは封印の儀を行ったのだろう。
——でも、勇者達は
「みんな。クリスタルの下へ集まれ。俺達は真の平和を掴みとる為にここに来た」
俺を含めた六人の仲間が勇者の下に集まる。
すると、クリスタルから眩い光が溢れだした。
「ぬはははははははははは。愚かなり、人間‼それとも竜王が耄碌したか?今が封印のチャンスだったというのに、誠に愚かなりぃぃぃぃぃ」
全属性魔法と呼ぶべきか、魔王は体全てを使って邪悪な魔法を繰り出した。
この一撃をまともに喰らうことは出来ない。
「クリスタルよ‼僕達に力を‼」
「なん…だと?我の攻撃が弾かれ……、そうか。その力で我の力を封印しておったか。ならば受け取れ‼これが真の闇の力なり‼‼」
まだ、これほどの力が残っていたとは、正直ヒヤヒヤものだった。
でも、だからこそ…
ピシ…
「これこそ、女神が俺たちに託した力だ」
「真の平和の為にも、女神様がお創りになられた力だな」
「これで民は魔物の恐怖に怯えなくて済むんですね。」
「うむ。未来永劫にな」
「さぁ、行きなさい。アーク。ここで決めないとアシュリーに怒られるわよ?」
俺は女神アリスに託された。
永劫の平和をこの世界に齎せ、と。
「アーク‼私たちの力を使って!ほら、ガロも力を貸してくれるって」
「ここに来れなかった仲間の想いもお前に託した!!」
「だから、魔王なんてヤッつけちゃえ!!」
長い旅だった。喧嘩もしたけど、それも今は友情の証だ。
前の世界ではパッとしなかった俺も、ここでは世界を救う救世主だ。
「ありがとう‼みんなの力、確かに受け取った。魔王アングルブーザー‼俺達は退かない。僕達はお前を封印しない。」
「な、な、なんだと?今の攻撃を全て受け切ったというのか!?そしてその剣の光……、まさか……。……光の女神アリスの力…だと?」
「その通りだよぉ‼これで、お前は未来永劫の眠りに就く‼」
ドラゴンよりも大きな巨体、だかそれよりも高く飛べる勇者の力。
俺は遥か上空から、女神に賜りし光の剣を、仲間から託された力と共に魔王に振り下ろす。
「許さん‼許さんぞ、人間‼もう、魔族の世界も未来も要らぬ。この魂さえも要らぬ。神よ。我の全てを捧げる……」
アングルブーザーは胸に埋まった禍々しい魔石を引きちぎった。
巨大な体から邪気が失われていく。
ここまで旅をした勇者は、アングルブーザーの覚悟を知った。
「何をしようとしても無駄だ。この力は僕だけの力じゃない。ここまでの旅で出会った人たちの出会いの力。仲間たちの力。お前を滅ぼさんとする神の意志の力だ‼」
「滅ぼされても構わぬ。お前たちだけには…、お前だけには絶対に負けぬ‼我は……」
パキィ
禍々しいオーラを纏った結晶とアークが持つアリスの光剣がすり抜ける。
「なん……だ……と」
そして、女神が造りたもうた剣は、そのまま魔王アングルブーザーの胸を貫く。
つまり人間の勝利だ。
「アーク‼」
「分かってる。魔王核は壊さない。これからはみんなが手と手を握る、新しい世界なんだから」
その言葉にアングルブーザーの顔が歪んだ。
「がはっ…我の魔王核を傷つけずに…我を斬った…だと?」
封印するではなく、魔核だけを奪い取る。これが勇者アークと俺たちが辿り着いたハッピーエンド。
魔族の力で生きている生命も多くいる。
だから、魔王を完全消滅させることは出来ない。
魔王核を傷つけずに、魔王の心臓のみを貫く。
「嘘だ…。嘘だ嘘だ嘘だ。我はエリスの声を聞き、魔族を統べる至高の存在…。我のみが…消える…。嫌だぁぁぁああああああああああああぁぁぁぁ………」
真っ白な光、真っ白な空間。
その空間に立つ、一人の青年と仲間たち。
「魔王の断末魔…か。ちょっとかわいそうな気もするけど…」
「…仕方ないよ。僕たちだって多くの仲間を犠牲にしてしまったんだ」
「そうですね。…さぁ、勇者様。世界の皆様に平和が来たと伝えに行きましょう」
「うん、そうだね。マリアさん。皆もいい?」
「いいも何も。早く極夜地帯から出たいわね。日焼け止めハーブが要らないのはいいんだけれどね」
「いやいや。ここでは、イザベル殿の美しい体が見えぬ故…」
「あ?」
「な、なんでもないです。せ、拙者も信者たちに報告しなくては…」
辛いこともあった。失った人もたくさんいる。
だけど、これから世界は新時代を迎える。これから生まれる子供たちは怯えることもなくすくすく育つ。
いつか、この戦いだって歴史の中に消えていく。
もしかしたら、伽話、作り話になってしまうかもしれない。
「レプト、どうした?」
「…いや、なんでもない。ちょっと泣きそうになってただけだよ」
「そうだよね。…レプト、ありがとう」
「いやいや。俺は何もしてねぇよ」
「ううん。僕の心をいつも支えてくれてた。だから、一緒に帰ろ?」
心の底から俺を信用してくれる。最高の友。最高の勇者。
だから、俺は差し出された彼の手を取り、共にウェストプロアリス大陸へ帰還した。
──もう片方の手をポケットに突っ込んで
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