勇者が魔王を倒したハッピーエンドのやり直し。やっぱ初見の方がうまく行く?
綿木絹
最神話 昔話
むかーしむかし。あるところに。
真っ白な髪の女の子と、真っ黒な髪の女の子がいました。
ただの女の子ではありません。
二人は創造と破壊を司る神様です。
「おねえちゃんおねえちゃん。新しい世界が出来たよ」
「いもうと、いもうと。その世界を壊したよ」
二人で一人。でも、他に家族はいない。
亜空を彷徨っては、空き地に世界を作り、世界を壊す。
組み立てては壊す。それを繰り返すのは、まるで子供のよう
二人はとても飽きっぽくて、あるとき、こう言いました
「ね、あっちに行ってみよ」
「うん。あっちの方が広そう」
後に野良の神様と呼ばれる二人の物語はこれでおしまい。
ぐしゃぐしゃで中途半端で、作りかけのものもそのまま。
まさに混沌とした世界ですが、混沌が故に神がいなくなった後も続きます。
白と黒、天と地下、陸と海、月と太陽。そして煌めく星々。
混沌が持つ可能性が世界を勝手に育てました。
勿論、人間も。悪魔も。妖精も。なんて言ったって子供の女神が作った遊び場。
ファンタジーな力もてんこもりです。
文明が生まれ、人々は社会を形成していました。
「クソ。神は見ておられないのか‼」
だけど、神様はここにいない。あるとあらゆる力は存在するのに、何故か神はいない。
「我らの王こそが神ぃぃぃぃぃいいいいい。ひれ伏せ、人間‼」
人間と悪魔、彼らはそう呼びますが、実は明確に分かれたのはもっとあと。
全てが混沌、全てが混ざりもの、混ざりものが故に生み出す力は絶大でした。
「もう…、私たちは滅びるしかないのね…」
悲嘆したモノもいたでしょう。ですが、混沌とした世界は弱肉強食。もしくは自然淘汰。
「いや。そんなことにはさせない。俺が…、アイツらの王の首をとってくる」
そこで一人の人間が立ち上がりました。人間と魔族の血が流れ、それ以外の血もたくさん流れる、今の人間とは違うけど、この時は人間と呼ばれています。
男は人間とは思えないほどの力を持っていました。だけど、魔族の血が濃い悪魔たちは強敵です。
それでも頑張り、頑張って、強くなりました。
そして、一人の女と出会いました。
「え?私…?貴方は…誰?」
名前を聞かれましたが男は答えません。
「あ、あの…」
どうしたんでしょうか。
「俺、決めました。俺、君と結婚します」
「ふぇぇぇ…え⁉け、結婚?」
女はとても美しいエルフでした。
銀髪、美しい顔立ち、美しく白い肌、美しく長い耳、美しい赤色の瞳、全てが美しかったから、出会った瞬間にプロポーズしました。
そういう文化が当時の人間にはあったのです。
「え…えと。私は…」
「俺、強いです。俺なら君を…」
混沌とした世界は弱肉強食。もしくは自然淘汰。だから、人間も強い者には特権がありました。
だけど、少女は言います。
「無理です。私はあなたのことを何も知りません‼‼」
「俺は——」
一日、二日、一週間、一か月、一年、十年、百年。当時の人間は今の人間ではありません。
とんでもなく長い寿命を持っていました。
そして男は毎日プロポーズに来ました。
流石に困ってしまったエルフの女は、ある条件を出しました。
「あれとそれとこれと、…あと世界で一番深い場所から湧き出る水。これを用意出来たら考えます」
それらはあるかもしれない、と女が考えていた程度のもの。
混沌だから存在するかもしれないし、存在しないかもしれないもの。
「分かった。それをとってきてやる。直ぐに持ってくるから、俺と結婚しよう」
不可能なものを持って来させる。
女は心を痛めました。
「え。毎日来るとか意味が分からないんだけど」
そうでもありませんでした。
そもそも、人間を救うための旅はどうなったのか。
けれど、女のこのお遣いこそが世界を救うきっかけになったことは間違いありません。
流石は聡明な魔法使い…
「そういうつもりもないんだけど」
ではありましたが、彼女の意志でもありませんでした。
男は海を越えて山を越えて、天に昇って、地下に降りて。
そこに居つくカオスの子たちを殺して回りました。
そして、ついに
「アシュリー‼持ってきたぞ‼」
「…え?ほん…とう。凄い。全部あったんだ」
無理難題は吹っかけましたが、女が欲しかったものには違いありません。
だから、彼女は
「結婚しよう」
「うん。オズワルド。貴方、本当に強いのね」
男と結婚することにしました。
だって、この男は自分が求めるものを持ってくる力がある。
錬金術が大好きな女にとって、これほど素晴らしい男はいません。
そして…、この世界に理が生まれました。
「
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