第二十五話 初めてのダンジョン探索終了
”聖杯の祭壇”で昼食及び休憩を済ませた俺たちは、今日中に帰還すべく、直ぐに元来た道を戻った。
行きとは違い、慣れた上での探索ということもあってか、行きの時よりも幾分か楽に進むことが出来た。
そうして、来た道を戻り続ける事、約3時間。
ようやく、ダンジョンの入り口が見えてきた。
「お、あれが入り口か。こうしてみると、長いようで結構短かったな」
「そうですね。もっとも、明日からはこうも行かなくなりますが」
「そりゃあね」
”聖杯の祭壇”よりも先へ行く―ダッシュ即ち、2日以上の探索に明日からはなるのだからと、俺たちは揃って思いながら、出入り口の門をくぐる。
こうして、ダンジョンの外へと出た俺たちは、一旦部屋の隅へと行くと、この後の事について、取りあえず考える事となった。
「取り合えず、まずはお疲れ様。初のダンジョン探索、無事完了だ」
「そうですね。リヒトさんも、お疲れ様です」
「ありがとう。それで、これからは取りあえず戦利品を売りに行く感じでいいかな?」
互いを労い合った後、俺はそんな言葉を口にした。
その言葉に、シャリアはこくりと頷く。
「そうですね。あと、回収した盗賊の所持品も換金しに行きましょう。その後で、夕食です」
「ああ……そうだな。それじゃ、行こうか。冒険者ギルドに」
「そうですね。行きましょう」
そうして、やる事を決めた俺たちは、螺旋階段を上って地上へと出た。
そして、もう沈みかけている夕日を背に、俺たちはそのまま近場にある冒険者ギルドへと向かう。
「おわぁ……めっちゃ混んでる」
時間が時間という事もあってか、冒険者ギルド内は人でごった返しており、俺が思わず変な声を漏らしてしまう程だった。
「中々、混んでいますね……」
これにはシャリアも、どこか嫌そうに言葉を零した。
だが、並ぶより他無い。
結構リュックサックの容量を圧迫しているからな……魔石。
時間がある時に、並んででも売っておかないとな。
後回しにしたら、こういう時って大体碌な事にならないんだ。
そう思いながら、俺たちは長い列に並ぶ。
そして、待つこと実に40分。
ようやく、俺たちの番が回って来た。
「常設依頼の、ダンジョン産魔石を取って来ました」
そう言って、俺たちは冒険者カードと一緒に、魔石が入った革袋を、ドサッと受付の上に置いた。
「承知しました。少々、お待ちください」
受付嬢はそう言うと、手慣れた動作で冒険者カードの確認及び、魔石の確認をしていく。
流石は王都の冒険者ギルドと言うべきか、滅茶苦茶仕事が早い。
まあ、こうでなくては仕事が回らないってことなのだろうけど。
「……はい。確認出来ました。では、魔石20個で報酬金は1万セルになります」
「ああ、ありがとう」
そう礼を言って、俺は冒険者カードと報酬金を受け取る。
テレンザで魔物を討伐した時よりも、報酬金はかなり渋いが――まあ、日帰りなら言うてこれでもいい方だ。
次はもっと深い場所まで潜るから、報酬金に関しては、明日以降に期待……だな。
そう思いながら、俺はシャリアと共に受付を後にする。
「ふー……やっと終わったな。それじゃ、次は物品の売却か」
「そうですね。では、買取店を巡って行きましょうか」
「そうだな」
そうして俺たちは、買取店を巡り、盗賊討伐の戦利品を、片っ端から売りさばいた。
全て売り切ることを重視し、なるべく利益はシャリアの巧みな交渉術によってだしながらも、売れ無さそうなものはセットで安く売る。
それをしまくったお陰で、30分経つ頃には、無事全ての戦利品を売りさばくことに成功したのだ。
それによる利益は、1万2500セル――案外、悪くない。
まあ、明日以降は魔石の事もあるから、余程売れる物じゃない限りは、手に入れても持ち帰らないだろうけど。
こうしてやる事を済ませた俺たちは、宿に戻った。
「承知しまいした。では、少々お待ちください」
そこで、宿の主人――エグニアさんに夕食を頼むと、俺たちは食堂の席に付いた。
そして、俺たちはいつものように話し合いを始める。
「一先ず、初めてのダンジョン探索は……まあ、トラブルはあったものの、いい感じに終わったな。それで、明日からは日数を掛けて、本格的にダンジョン探索をしていくつもりだ」
「そうですね。異論はありません。ですが、今回の探索を踏まえ、革袋の数は増やした方が良いでしょう。明日からは、宝もいくつか回収する事になるかもしれませんし」
「ああ、そうだな。そうしようか」
盗賊のせいで、持ってきた革袋をほぼ使ってしまった事を思い出しながら、俺はシャリアの言葉にそう頷いた。
そうそう。魔石や戦利品を傷つけて、価値を落とさないようにする為に、種類等で分散して革袋にそれらを入れていたんだ。
”魔の森”では考えもしなかった事で、実にダンジョンらしさが伺えたな。
「お待たせしました。日替わり定食、2人前です。お冷もどうぞ」
すると、エグニアさんが食事を持って来てくれた。
よし。それじゃ、話は一旦ここまでにして、食事にするか。
そう思うと、俺はシャリアと共に夕食にありつくのであった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます