第四十話 秩序の終焉
サイコロステーキが如く細切れになる俺。だが、次の瞬間。
ビシビシビシ――と、瞬き1つの間に切断部位が接合され、復活するのであった。
「「「はあっ!?」」」
思わず声を上げるエンデ……と、後ろで拘束されている方々。
すると、エンデが更に困惑したように声を上げる。
「ま、待って待って。流石に今のはなんだ!? 流石に幻術じゃ……ない?」
なんかすっごい困惑している。
だが、今がチャンス!
「【魔力よ。我が身に纏え。強化せよ】【血よ、吹き荒れろ】!」
俺は《
「お得意の糸も、それでは満足に――」
地面を蹴り――
「使えないだろ!」
一瞬で距離を詰めて肉薄し、剣を振った。
「【闇よ。守れ】!」
それに対し、エンデは咄嗟に闇の防壁を展開して、俺の剣を防ぐ――のでは無く、受け流した。
「死ね!」
そして、すかさず腰の剣を引き抜くと、俺の首目掛けて振り下ろした。
”
だが、ここで退いたらさっきの繰り返しになりそうだし、何より対応されてしまう。
刹那の内に、ゾーンに入っている俺はそう判断すると、奴の剣で――
ザン!
首を落とされてやった。
しかも今回は即座に再生するのでは無く、あえて地面まで頭を転がす形で。
視界の端で、エンデの”殺した”と判断するような顔が見える中。
俺は身体を前へと倒して、ばったりと倒れ込むような仕草を見せながら、エンデとの距離を完全に詰めると、剣を勢いよく振り上げた。
ザン!
「がはっ!」
その表情を驚愕で彩りながら、腹を深く斬り裂かれて血を噴き出させるエンデ。
俺は即座に追撃を仕掛けようと、首を斬られたままの状態で更に追撃の一閃を向けた。
「ぐううっ!」
だが、それは糸を引き、後方へと退かれてしまったせいで、回避されてしまった。
剣に意識を向けてて、気づかぬ内に血嵐の制御が甘くなってた……か。
俺はそう思いながら、血を操作して、転がっていた自らの頭を持ち上げると、元あった場所にくっつける。
「【魔力よ。氷の礫となりて彼方へ飛べ。穿て穿て】!」
その最中、機会を伺っていたシャリアが、無数の氷の礫をエンデ目掛けて射出したのだ。
「うぐぅっ【闇よ。守れ】!」
「ぐがっ」
防げなかった。
いや、大半は防いだ。だが、いくら実力差があるとは言え、怪我の最中急いで展開した魔法で、完全な状態で放たれた魔法を防ぎきるのは無茶だったのだ。
そのせいで、エンデの治療が若干遅れる。
「【血よ、貫け】!」
その隙に俺は詠唱をすると。
無数の血槍をエンデ目掛けて放出した。
これで勝てる――そう思った瞬間。
「くっ――【禁忌の扉を開け。命を削れ。我が意に応えよ。闇へ誘え、全ての終わり】!」
直後、エンデを中心に円形の黒い領域が形成された。
何だあれは――そう思う中。
その領域は一気に縮小し、中から全身を黒い軽鎧で覆ったエンデが、漆黒の大剣を携えて、姿を現したのだ。
なんだか、凄まじい風格を感じる。
「《
だが、その風格は直ぐに霧散し、エンデはちょっと引き気味にそんな事を聞いてきた。
なんか背後では、シャリアがこくこくと頷いているような感じがするし……向こうで拘束されている方々も似た雰囲気。
……これは文句を言っても許されるのではないだろうか?
いや、今はそんな事している場合じゃない!
「人間だよ、人間!……ったく。【血よ、吹き荒れろ】!」
そう叫ぶと、俺は血嵐を再び起こし、エンデを巻き込む――が。
「無駄だよ!」
なんと、漆黒の大剣を構えながら、それを正面から突撃する事で平然と破って見せたのだ。一応あの血はまだ、俺の一部という事になっている都合上、結構頑丈な筈なんだけどね。
「はああああっ!」
だが、こうなればもう迎撃するのみ。
俺は剣を構えると、エンデと真っ向から打ち合った。先ほどまでの感触から、身体能力は互角の――
ザン!
「なっ!?」
筈だった。
今、エンデの攻撃に反応出来ないまでは。
「くっ はあっ!」
俺は斬られた腹を即再生させながら、剣で斬りかかる。
ちっ……あの《
俺は心の中でそう悪態を吐きながら、今度こそエンデの身体を捉える。
「【終わりだ】」
だが次の瞬間、エンデの全身から溢れ出た漆黒のオーラが、俺を飲み込んだ。
「これはっ……!」
まるで、身体が内側から壊されるような感覚。
純然たる”終わり”の想い――いや、執念と狂気が感じられる魔力。
だが――
「俺には効かない!」
「なっ!?」
そう言って平然と踏み込み、剣を振るう俺を前に、エンデは同様の声を上げた。
だが、次の瞬間俺の首に糸を巻き付け、斬り落としてくる。
「それも効かない!」
斬られた瞬間に首を再生しながら、俺は横なぎに剣を振るった。
更に、別方向から血槍も殺到させる。
「【終われ終われ終われ】ええええええ!!!!」
少し焦ったような表情を浮かべながら、エンデは更に漆黒のオーラを放つ。
そのせいで、血槍がボロボロと崩れてしまった。あっちは俺の本体じゃないせいで、《
だが、肝心の俺本体にはノーダメージだ。
「はあああああっ!!!」
「はああああっ!!!!」
その後、俺とエンデは激しい斬り合いになる。
俺はただひたすらに、エンデに隙さえ生まれれば、例えそれで自らが斬り刻まれようとも剣を振るった。そして、対するエンデは漆黒の軽鎧で俺の攻撃を必死に防ぎながら、とにかくひたすらに俺を斬り続けていた。
おいおい。このままじゃじり貧だぞ?
もしかして、何か狙っているのだろうか……?
そう疑問に思っていると、エンデが声を上げる。
「これだけ斬り刻んでいると言うのに、何故限界が来ない!」
「……ああ」
なるほど。確かに世間一般の回復術師がやれば、確かに今頃限界が来てるな。
かく言う俺も、流石にこのレベルの再生を最初から普通の回復魔法でやり続けていれば、あと30分ほど戦った所で魔力が枯渇してしまうだろう。
だが、《
このレベルの再生でも、1か月は持つのだ。
「残念だが、これじゃあ何日経っても――終わらないぞ!」
無限に身体を再生しながら、剣を振るい続ける、血の鎧を纏う俺に。
ひたすらに剣を振るい続ける、漆黒の軽鎧を纏うエンデは――初めて絶望の表情を見せてくれた。
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