第十二話 初依頼達成

 パライズ花の葉を3枚回収しつつ、街へと向かって歩く事、十数分。

 道中、森の中では相当浅い部分だった事もあってか、特に魔物と遭遇する事は無く、無事にテレンザへと帰って来る事が出来た。

 テレンザへと帰還した俺たちは、前回よりも簡易的な検査を受けて、街の中へと入る。


「よし。それじゃ、さっさと冒険者ギルドに行くか」


「そうですね。行きましょう」


 テレンザの中に入った俺たちは、依頼の完了を伝えるべく、真っ先に冒険者ギルドへと向かって歩き出した。

 やがて冒険者ギルドに着き、中に入った俺たちは、受付前に出来た長い列に並ぶ。


「んー結構混んでるなぁ」


「まあ、ちょうど昼ですからね。私たちのように朝受けた依頼を終えて、昼飯を食べる為に返ってくる人は、多いですよ」


「まあ、そうだよな~」


 列に並ぶ俺たちは、この混み具合に関するどうでもいい雑談をしながら、列が消化されていくのを待ち続けた。

 そうして待っていると、順番が回って来る。


「じゃあ、まずは俺の分を終わらせて来る」


「分かりました」


 パーティを組んだ後の依頼であれば、一緒に出してもいいのだが、今回のはまだ個々で達成した依頼。故に、パーティとして出すのは俺……ではなく、シャリアが躊躇ったのだ。


「こんにちは。ご用件は何でしょうか?」


「依頼完了の報告に来ました」


 笑みを振りまく受付嬢の問いに、俺はそう答えると、魔石が入った革袋とパライズ花の葉が入った革袋を、依頼書と共にそれぞれ受付の上に置いた。


「はい。では、確認しますので、少々お待ちください」


 受付嬢はそう言うと、革袋の中身を丁寧に取り出して、確認し始めた。

 やがて確認が終わり、ずっと黙っていた受付嬢が口を開く。


「はい。確認が終わりました。まず、パライズ花の葉50枚の採取依頼は達成です。次に常設依頼の魔物討伐についてですが、ゴブリン3匹オーク4匹になります。よって、報酬金は2万2200セルです。それでは、冒険者カードの提示をお願いします」


「……分かりました」


 受付嬢の言葉に間違いが無い事を確認してから、俺は冒険者カードを取り出すと、受付嬢に差し出した。その後、冒険者カードを受け取った受付嬢は、色々と記録した後、口を開く。


「リヒトさんはFランクなのですね。でしたら、オークを倒した事ですし、Eランクにランクアップしますね」


「おお……分かりました」


 驚いた。いくらDランクの魔物であるオークを複数体倒したとて、登録した次の日にランクアップが出来るとは、思いもしなかったよ。

 なら、この調子でいけば直ぐにSランクに……と、一瞬思ってしまったが、流石にそんなに甘くは無いと、俺は首を振ってそんな雑念を振り払う。


「リヒトさん。ランクアップの手続きが完了しました」


 変な事を考えている間に手続きが終わったようで、受付嬢はそう言って、俺に冒険者カードを差し出してくれた。

 銅色に光るそのカードには、先ほどまで”Fランク”と記載されていた部分が、”Eランク”に変わっていた。

 ああ、本当にランクアップしたんだなぁと、達成感に包まれながら、俺は新たな冒険者カードをポケットにしまう。


「そして、こちらが報酬金2万2200セルになります。お疲れ様でした」


「ありがとうございます」


 そして、報酬金として銀貨2枚小銀貨2枚銅貨2枚をそれぞれ受け取ると、2つの革袋を片手に、俺は受付を去って行った。


「いや~……いいね」


 俺は冒険者として稼いだ初めての金に、思わず頬を緩めると、それらを全てリュックサックの中にしまう。

 そうしていると、シャリアも終わったようで、受付からこちらへ歩いてきた。


「リヒトさん。私の方も、終わりました」


「そうか。それじゃ、俺は昼食でも食べに行くか。シャリアは?」


 パーティは、冒険者として活動する時のみ共にいるビジネスタイプと、割と共にいる仲間タイプの2種類がある。俺はぶっちゃけどっちでもいいから、ここはシャリアに任せるつもりだ。

 すると、シャリアは暫し腕を組んで悩んだ後、口を開く。


「そうですね。なら、一緒にしましょう。私の場合、1人でいると厄介ごとに巻き込まれる可能性が高いんですよね……昨日のように」


「ああ……なるほど」


 どこか遠い目をするシャリアに、俺は頷く事しか出来なかった。

 確かに容姿端麗なシャリアなら、そっち系で近づいてくる人も多いだろうからね……


「分かった。それで昼食だが、少し遅かったせいでどこも混んでるし、適当に屋台で済ませるつもりだったのだが……シャリアはどうしたい?」


「私も、元よりそのつもりでしたので、構いません」


 こうして昼食を決めた俺たちは、早速食べるべく、冒険者ギルドの外へ出た。

 そして、近くから漂ってくる匂いに釣られるような形で、屋台へと向かう。


「……お、あれにするか」


「そうですね。いい匂いがします」


 やがて見つけた串焼きの屋台に近づくと、俺たちは屋台のおじさんに串焼きをそれぞれ頼んだ。


「おう。毎度あり」


 すると、おじさんは元気よくそう言って、焼いていた串焼きをたれが入ったツボに突っ込んだ。そして軽くかき混ぜ、しっかりと肉にたれがしみ込んだ所で取り出すと、俺たちに手渡してくれる。


「はい、どうぞ~」


「「ありがとうございます……あ」」


 何気にハモって、2人で苦笑いしつつ、昼食の串焼きを受け取った俺たちは、適当な場所で食べ始める。


「んー……美味しいなぁ」


 串焼きって、シンプルで安いながら、めちゃくちゃ美味い。

 個人的には、コスパ最強だと思っている。


「最初は、今までの生活もあってか普通の食堂などを使っていたのですが、最近は大体屋台これですね。まあ、金欠ですので……」


「そうか……まー少なくとも俺と組んでいる間は、金欠にはさせないよ……なるべく」


「そこは、確約して欲しい所ですね」


「……だね」


 それとない雑談をしながら。

 俺たちはのんびりと食事を続けるのであった。

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