第十話 パーティ結成

 俺の打算と気遣いの2つの意味が込められた提案に。

 彼女は暫し固まった後――口を開いた。


「ど、どこの馬の骨とも分からぬ私ですよ? 危険……とは思わないのですか?」


「……ああ、そういう事ですか」


 彼女の問いに、俺は一瞬で彼女の言いたい事を理解すると、その答えを告げる。


「んー……自惚れていると思うかもしれませんが、俺って悪意にはそれなりに敏感なので、危険な人は判るんですよね。それに、本当に危険な人は、そこまで念を押さない」


 少年時代の俺は、スライム相手に逃げ出したとして嘲笑され続けた。

 回復魔法の成果を見せて、見返してやろうと思った事はあったが――認めてくれる人はほとんど居なかった。大抵の人は悔しそうにしながら、陰でより一層毒を吐き、一部は嫉妬から、逆に色々と酷くなった。

 結果、いつしか俺は彼らの前へ姿を現す事すらなくなり、より一層研究実験に勤しむようになったのは言うまでもない。

 ああ、勿論俺の事を応援してくれた人も、沢山居たよ。だから、ここまで頑張れたのかもしれない。

 ……で、何が言いたいのかと言うと、悪意を向けられまくって育ったから、悪意に敏感だって事!


「そう、ですか……」


 彼女は、その金の瞳で、俺の眼をじっと見つめた。まるで、何かを見通そうとしているかのような眼だ。

 研究実験に没頭しすぎたせいで、常人より恋愛感情には疎い俺だが……こんな風に見つめられると、流石に気恥ずかしさを覚えてくる。

 ややあって、彼女はすっと眼を閉じると、一拍した後、口を開いた。

 

「ありがとうございます。私としては、是非お受けしたいです……ですが、あなたと私では力量に差がありすぎると思います……才能も無いので、伸び代もありませんし……迷惑は、掛けたくないので――」


「……ん?」


 力量差……はまだ分かるが、才能が無い?

 待て待て。一体彼女は何を言っているんだ……?


「いや、結構いい魔力を持っていますよね? 見るに、これは水と氷属性に相当高い適正があるんじゃないですか?」


 俺は肉体改造によって得た特殊な右目――”解析右眼アナライズ”で、彼女の魔力を観察しながら、そんな問いを投げかける。

 すると、彼女は、


「え? 私は火属性に適正があると、8年前の適性検査で出ているのですが……」


 と、呆けた様子でそんな言葉を口にした。


「え……いや、流石にそれは……」


 いやいやいや。流石にそれはねーだろ。

 確かに近い属性で、誤認してしまう可能性は無くは無いが、火という水や氷とは正反対の属性は、流石にあり得ない。


「……いや、ごめん。ちょっと地面に向かって《火球ファイアボール》を改変とかせずに撃ってみて欲しい。杖無し。短縮詠唱や詠唱破棄も無しで」


「分かりました」


 彼女は、どこか納得したような顔持ちでそう言うと、地面に向かって手を向けた。

 そして、唱える。


「【魔力よ。火の球となり彼方へ飛べ】」


 そうして放たれた、ほどの大きさの火球は、地面に当たると、地面に落ちていた葉を燃やしながら、シュッと消滅した。


「マジか……っと。次は、《水球ウォーターボール》を木に向けて。詠唱は知ってますか?」


「はい。一応……」


 驚愕しつつも言う俺の言葉に、彼女はこくりと頷くと、今度は前方に手を掲げた。

 そして、唱える。


「【魔力よ。水の球となり彼方へ飛べ】」


 そうして次に放たれたのは、程の大きさの水球。

 水球は、それなりの勢いで木に衝突すると、びしゃっと音を上げて弾け飛んだ。

 あー……確定だ。


「多分、慣れてる分火属性の方が扱いやすかった筈だけど……」


「はい。ですが、同じ魔力を込めた筈なのに、威力が桁違いでした。恐らく、偽りの――いえ、適性検査にがあったのでしょう」


 すると、彼女は明らかに落ち込んだように視線を下に向けた。

 水属性に大きな適性があれば、使う事すら困難な筈の火属性魔法を、戦いに使えるまで修練したのだ。その苦労は、相当なものだっただろう。

 それが、ガラガラと足元から崩れるような感覚に陥っていると思えば……もう、不憫だとしか言いようがない。


「……大丈夫ですか?」


 思わず口にした気遣いの言葉に、彼女は顔を上げると、小さく頷いた。


「はい。大丈夫です。あと、教えていただき、本当にありがとうございます」


 彼女は笑みを浮かべてそう言うと、深く頭を下げた。

 確かに、若干落ち込みの感情も見て取れるが……それ以上に、冒険者としての道が開けた事に、喜んでいるのだろう。

 今は、やや無理やり気を強く持っている感が否めないが……この様子なら、大丈夫かな。


「それで、話が結構脱線してしまったが……もう一度聞きます。俺と、パーティを組みませんか?」


 1人で戦うのは、危険だという気遣いと。

 強い魔法師の卵をパーティに加えたいという打算の。

 2人の意味が込められた俺の言葉に。


「……はい。よろしくお願いします」


 彼女はそう言って、頷いてくれた。


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★★★やフォローをしていない方は、是非この機会に!

★は1つなら嬉しい。2つなら超嬉しい。3つなら超超嬉しいって感じですかね!(笑)


あと、ここで重要な話……この作品、ドラゴンノベルス小説コンテストに出しているのですが、今のペースで投稿すると、期日までに10万文字に届かないわけですよ。

てことで――


『次回より、1日2回更新になりました!』


やべぇ。俺の労力、やべぇ……。

てことでまあ、10万字達成の目途が付くまで(多分1週間程)は、朝と夜の2回更新となります!

作者すげぇ!?と、思ってくださった方は、是非是非この機会に★★★やフォローをお願いします(二回目)!

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