第2話 主
このやり取りを何度繰り返したのだろう。
朝食から夕餉まで彼女は毎日私の元を訪ねては、おやすみなさいと言葉を残して去っていく。食事だけではなく、着替えから洗身とかつて私が無くなる前からの業務を続けている。
もう、2年の月日が流れた。けれども、清潔に保たえた私の肉体には蛆の一つもついていない。本来ならば腐り果てて見るに耐えない姿をしていてもおかしくはない。
彼女は、真実に気がついているはずなのに目を向けない。
私は、彼女に自由になってほしいと何度も願うが声が届くことは決してないのだろう。
俯瞰した自身の横たわる姿と疲弊していく彼女を眺めることしかできない自分に嫌気が指す。
これからも続くのだろう。彼女が私の部屋に訪れない日が来るまでは。
【短編】安らかな眠りを 浅野彼方 @sakana397
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