第8話 再試合


「ふぅー。今日は早く終わったなぁ」

「そうだなぁ、早く終わるのは良いけど家に帰ってもすることないな」


 今日は教師たちの会議があるとかで昼に学校が終わる。加えて俺はこのあと特に用事もない。家に帰っても特にやることがない。どうしよう。


「お前ら、何やってんだ?」

「おー、裕司。いやな? 今日は特にすることもないし何をしようか考えてたんだ。裕司はなんか予定とかあるのか?」

「いや、俺もないな」


 これでここにいる3人は暇人なのは確定した。せっかくだし、どこか遊びに行くか? またカラオケとか? それとも他の所に遊びに行くか? 俺がそうやって悩んでいると瑞波がカバンを持ってこちらへ来た。


「何やってんだよ。帰らないのか?」

「いや、帰ってもどうせ暇だからどこかに行こうか考えているところなんだよ」

「どうせ暇ならどっか行きたいよなぁ」


 俺たちがどこか良いところはないかと考えていると、瑞波が何やら言いたそうな顔で見てくる。


「どうしたんだ?」

「いや、その。どうせみんな暇ならさ、バスケとかどうだ? ほら、今ならちょうど体操着もあるし」


 バスケ、バスケか。そう言えば少し前にこいつバスケをやろうって言った時に喜んでたな。俺は全然バスケでも良いけど、2人に聞いておかないとな。


「2人もバスケで良いか?」

「おう、良いぜ」

「良し、じゃあ行くか!」


 こうして俺たちは近くのバスケが出来る公民館へ向かった。


▲▲




「しゃあ! かかってこいやぁ!」

「行くぞ裕司!」


 着替えが終わり、もう待ちきれない裕司と慶太はすでに始めてしまっている。俺はとりあえず瑞波が来るのを待っている。流石に3人で始めてたら入りづらくなったらいけないしな。


「悪い。着替えに手間取った」

「別に大丈夫だぞ。あいつらはもうすでに楽しそうだし」

「あいつら、もう始めてるのか」


 瑞波は2人を見てやれやれと言わんばかりの顔をする。しかし、その顔は早くバスケをやりたそうだった。


「おーい。俺と瑞波もやるぞー」

「お、もう来たのか。なら慶太、俺が決めたら勝ち、止められたら負けで良いな?」

「あぁ。それで良いよ」


 どうやらあれで一度終わるらしい。真剣な顔つきで睨み合う。そして裕司が仕掛けた。



結果は慶太の勝ちだった。



「くっそー! あともう少しだったのに!」



 祐二はとても悔しそうに唸る。裕司のシュートはあとほんの少しズレていたら入っていた。惜しかった分、悔しさも相当な物なんだろう。


 一応、フォローでも入れておくか。


「次は俺たちも入るからよ。その時に勝てればいいだろ?」

「そうだな。良し、なら慶太! 俺たちは敵でやろうぜ! リベンジだ!」

「まぁ、それでも良いけど」



 なら俺たちがどっちに行くかだよな。だが、どうやら悩む必要はなかったらしい。瑞波が俺を押して慶太の所へ追いやった。


「よし、やるか!」

「俺と慶太がチームってことか?」

「当たり前だろ? 俺はお前らに負けたんだからな! 裕司もさっき負けたし、同時にリベンジだ!」



 なるほどなぁ。そういうことなら受けてたとうじゃないか。俺は慶太の方を見る。すると慶太も俺の言いたいことは分かったらしい。慶太はフッと笑った。


「よし、ならやるか! 手加減はしねぇぜ!」

「あぁ、望むところだ!」


 そうして試合は始まった。俺もやるからには全力でやるつもりだ。



「はぁ、はぁ」

「や、やっぱり哲也は上手いな」

「そ、そりゃどーも」


 瑞波はドリブルしながら俺を褒める。だが、そんなことを言っても得点は同じだ。ばかすかスリーを撃つ瑞波とゴール下が異常に強い裕司のコンビは中々に凶悪だ。


 このゲームは得点性だ。そしてあと一回でも決めた方が勝つ。ここはなんとしても防がないと駄目だ。俺は改めて集中する。



「裕司!」

「よし来た!」


 瑞波は裕司にパスを出す。だが、まだ大丈夫。裕司の正面には慶太がいる。


「おっと。行かせないぞ」

「瑞波!」


 裕司はすぐに瑞波へパスを出した。これはまずい、瑞波は俺より瞬発力がある。瑞波は俺より前に出てパスを受け取った。


「貰った!!」

「くっ! させるか!!」


 瑞波のレイアップを俺はブロックする。なんとか間に合った。が、体はぶつかりファールになった。それにーー


「やっべ!」

「え、わわ!」



 俺は体勢を崩してしまった。そのまま倒れてしまった。


「イッテー。瑞波は大丈夫か?」


 なんとか怪我はさせないように庇ったと思う。その代わり、押し倒したような形になってしまった。男同志のこんな光景は一体誰が得をするのだろうか?


「あ、う、だ」

「?? おい、本当に大丈夫か?」


 瑞波は目をぐるぐると回している。もしかして頭でも打ったのか!? 俺は焦って2人を見る。


「おい! 瑞波が目を回してる! もしかしたらーー」

「何!?」

「それはまずいな」


 2人も心配するようにこちらへ駆け寄ってくる。とりあえず、意識がはっきりしているか確認が必要だ。


「おい、大丈夫か! ここがどこか分かるか!?」

「……ど」

「ど?」

「どけっ!!」

「ぶっ!?」


 瑞波から強烈なビンタを貰った。なんで!? 俺は心配しただけなのになんでビンタされるんだ? 俺が呆気に取られていると瑞波が立ち上がってボールを取りに行く。


「あ、おい。動いて大丈夫なのかよ」

「当たり前だろ。どこも打ってないんだから」

「え、じゃあなんであんなに目を回してたんだ?」

「っ! そ、それは……なんでもいいだろ!」


 えー? いや、まぁ無事なら良かったんだけどさ。それでも解せないことはある。俺は裕司と慶太を見る。


「なぁ、なんで俺はビンタされたんだ?」

「「……さぁ?」」


 2人は全く同時に首をかしげる。まぁ、わかるわけないよな。

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