第7話 家で
「お兄ちゃーん? ご飯出来たよぉー」
「ん? もう出来たのか」
妹の声で目を覚ました俺はベッドから出る。まだ頭がボーッとするが冷めてしまったら嫌なので降りることにする。
下に降りると父と母、そして妹がいた。
「哲也、冷めちゃうから早く食べなさい」
「うーす」
俺は席についてそのままご飯を食べ進めていく。大変美味しいです。
「ふぅー。なんか眠くなってきたなぁ」
飯を食べ終え、風呂にも入り今の俺は大変お眠になっている。俺はベッドにダイブして一旦目を閉じる。
眠気を感じ始めて来た頃、不意にドアをノックする音が聞こえた。
「入って来ていいぞー」
「じゃあ、お邪魔します」
そこにはパジャマ姿の美代がいた。風呂から出たばかりなのだろう、髪が少ししっとりとしている。美代は俺の隣に座った。
「で、何があったの? お兄ちゃんあれだけ嬉しそうにしてたじゃん」
「いや、まぁ。実はな……」
俺は別れるまでの経緯を話した。美代はただ黙って真剣に聞いてくれた。
「そうだったんだ。それはしんどいね」
「まぁ、もう吹っ切れたから別に良いけどな。今は恋愛より友達と遊ぶ方が楽しいし」
しばらく恋愛はしなくても良いな。俺はそう思いながらベッドに体を預けると、美代が俺の頭を撫でてきた。
「なにやってるんだ?」
「お兄ちゃんが早く寝れるようにと思って。このまま寝ても良いよ」
「……じゃあ、このまま寝るか」
俺は目を閉じる。昼寝をしたので寝れないかもと思ったがすぐに眠気がやってきた。俺はそのまま眠った。
▲▲
「ただいま……」
「おかえりなさいませ」
瑞波がドアを開けるとタキシードを来た老人がいた。その老人は瑞波の顔を見ると少しだけ首をかしげる。
「おや、今日はあまり元気がありませんな」
「うん、まぁちょっとね」
瑞波はそう言いながら自分の部屋に戻った。そのまま制服を脱いで、サラシをほどく。すると男ならば本来ありえない胸の膨らみが現れる。
「ふぅ、やっぱりサラシ巻いてるとしんどいな」
瑞波はベッドに座って体を休ませながらスマホを触る。そこでお気に入りに登録している一枚の写真を見る。
「ふふっ。なんて顔して歌ってるんだよ」
それは哲也が必死に歌っている写真だった。その写真を見ていると落ち込んだ気分もすぐに消えていった。それを見ていると楽しい気分と同時に焦りも出てくる。
「……何かアピールとかした方が良いのかな?」
哲也は今は彼女はいらないと言っていたが、それがいつまで続くか分からない。また、あんな苦しい想いをするのは嫌なのだ。
「でも、もし女だってバレたら絶対にみんな遠慮するよな」
自分の胸に触れる。それは葛藤だ。女だと気づいてほしいと言う気持ちとみんなでまだ遊びたいと言う気持ち。どちらしか選べないからこそ、苦しいのだ。
「いや、これからまだチャンスはいっぱいあるんだ。今は友達としてたくさん遊んで、それからたくさんアピールすれば良いんだ」
瑞波は自分の中で答えを出した。そのまま着替えて部屋を出て行った。
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